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EX-80 AF「遠き鐘の音を聞きながら共に働くための歌を」

タイトルがシリアスっぽいですが、なんと、EX-79の続きです。マジかよ。

 FWO第1エリア『リーネ総合オフィス』。


「先輩、エロい…くはっ」

「なによ健人!あたしがメイド服着た時、なんの反応もしなかったクセに!」


 ミリーの左アッパーがビリーくんの顔面に炸裂する。エロいとは失敬な。

 そういえば、パラレルワールドの美里をメイドにしたけど、健人くん、特にどうということはなかったな。まあ、どうでもいい。


 現実の肉体の成長に合わせて以前からやろうやろうと思っていた『佐藤春香』アバターの作り直しを兼ね、標準装備を高校の制服からメイド服にした。FWOでの対応がはかどるよ!


「春香ちゃん、エロ可愛くていいよ!全人類の半分を落としたも同然だね!」

「エロ可愛い言うな」


 渡辺 凛、アンタと一緒にすな。


「須藤くん、いや、セイくん!君から何か言ってくださいよ!」

「そうよ!このままじゃ、リーネのメイド姿が仮想世界でも現実世界でも晒されることになるのよ!?」

「ぼ、僕は…」

「「僕は!?」」

「り、リーネがどんな姿でも、リーネに変わりないから…」

「独占欲に訴えるのに失敗しましたか…」

「うがー!」


 美樹さんや、さっきからうるさいよ?そりゃあ、中身知ってる美樹からすれば、渡辺 凛がフリフリのメイド服を着ているようなものだろうけどさ。


「とてつもなく似合っているから、うるさく言ってるんじゃない!」


 なら、いいじゃんよ、これで。そんなんだから、実くんと…。


「…実さんも、私のメイド服には興味なくて…」


 まさかとは思うけど、それで私にいちゃもんつけてたとかないよね?どうなの?ん?


「この際だから、『ハルカ』アバターもメイド服にしようかなあ」

「勘弁して下さいお願いします」


 実くんが即座にお断りを入れてきた。そんなに巫女装束にこだわりがあるのか。


「あ、もちろん、ケインアバターにまでメイド服は着せないよ?」

「「「「「当たり前(よ|です|だ)!!!」」」」」


 むう、もちろんって言ってんじゃん。私の男性服飾センス、知ってるでしょ?


「もしかして、これまでの自身の服飾センスも影響しているのでしょうか…」

「ああ、なるほど…制服同様、何も考えなくていいもんね…」


 もー、美樹はさっきから本当に失礼だな!


「美樹、あなたの理解を得られないのは、残念だな」

「そ、それは…」

「私はね、美樹も気に入っているからこそ、安心して着られるんだよ?」

「り、リーネ…」

「それは、わかってほしいな。決して、美樹が困るようなことはしないよ!」

「わかったよ、リーネ!私、受け入れるよ!」

「美樹!」

「リーネ!」


 がばっ


 ちらっ


「美樹さんまで攻略されるとは…」

「これかあ、田中さんが言ってた茶番って」

「え、でも高橋さん、完全に言いくるめられていたわよ?」


 まあ、いいじゃないか。美樹との友情は永遠だよ!



 大学。


「春香くん…いや、確かに似合うがな…」

「ダメ、でしょうか、伊藤先生」

「い、いや、妻も子供たちもTVで見て、非常に喜んでいたよ」

「そうですか!良かったです!」

「あ、ああ…」


 民族資料研究会。


「春香ちゃん、すごいすごい!カッコいいよ!」

「カッコ…いい?」

「だって、春香ちゃんは仮想世界でも現実世界でも戦うんでしょ?戦うメイドさん!いいよいいよ!」


 なるほど、そういう見方もあるか。


 食堂。


「シチュー食べてるメイドの春香ちゃん、かわいい!」


 そうですか。


 という感じで、大学では概ね好評だった。え、講義中?別に服装とか関係ないでしょ。



「…うん、まあ、リーネ嬢本人が良ければ」

「だな。会食中に給仕姿の者がいても違和感はないし」

「給仕される方が給仕姿というのはあるがな」

「とはいえ我々がリーネ嬢に世話になりっぱなしなのは確かだしな…」


 各国首脳の方々からも反対は出なかった。だよねー。


「そういえば、SOEも声明を出していたな」

「『我々は、佐藤春香様のメイド姿を歓迎する』だったか?これで、少しは活動が軟化してくれればいいのだが…」

「その続きが『惜しむらくは、裏切者達にそそのかされ、地球をないがしろにする行為に加担させられていることだ!』だからな。無理ではないだろうか」


 わからん。さっぱりわからん。



 火星公社。


「シチューができました。どうぞ」

「ありがとう、リーネ。こうして、揃って食事するのは、何年ぶりかな」


 時間と転移門利用のタイミングがうまく合ったので、リーネの時の両親を火星のおじい様(フェルンベル総裁)に会わせるため、私が連れてきたのだ。


「あ、おじい様も春香ちゃんのこと、リーネって呼ぶことにしたんだ。それはともかく、シチューんまんま」

「渡辺 凛、もっとお行儀良く食べる。でないと、おかわりをあげない」

「春香ちゃんのいけずー!」

「彼女の言うことは良く聞きなさい。凛のためになるからな」

「そうよ。あなたもいい年なんだから、そろそろ落ち着かないと」

「むー、相変わらず口うるさいんだから!」


 肉体的には、この4人が3世代家族なのだが、そこに私が加わってカオスなことに…うん、まあ、こういう形もいいか。


「確かに、働き者のリーネには、その服飾は合っているかもしれないね。だけど、気をつけなさい。無理をして倒れたりしたら、あなたを好きな周りの人々が悲しむから」

「そうだな。あの伝承の村の人々も、奇跡を起こした人物が倒れた時、とっても悲しかったそうだ。『共に働けなかったのか』と」

「共に…働く…」


 世界は、みんなで作っていくもの。決して、特殊な能力をもつ誰かひとりが勝手に作り出すものではない。それは、わかっている。けれども、どうしても私は突っ走って(攻略して)しまう。みんなと楽しく(スローライフ)過ごしたい(を送りたい)、そのために…と。

 ただ、誠くんや他の仲間達に伝播している、あの『現界』能力。あれは、私と共に歩みたい、その想いから起きていることなのだろうか。そんなことを、考えるようになっている。


「えー、働くの、めんどー。『現界』能力でちゃちゃっと」

「渡辺 凛、これから私と歌おう。『遠き鐘の音(フェルンベル)を聞きながら共に働く(ワークス)』ための歌を」

「え、なんで突然!?」


 『フェルンベル・ワークス・オンラインSecond Stage』開発の士気を上げるためだよ!誰よりも『現界』能力が伝播しているアンタをこき使ってあげるからね!

話が綺麗にオチた…だと…?そして、リーネ(春香)のメイド服常備が確定しちまった。どうすんだよ、おい。

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