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EX-71 IF「時間が巻き戻ってしまった(春香高校生パターン)」

EX-66とほぼ同じ流れです。二番煎じ限りなく。

「佐藤春香としての高校の入学式か…。まあ、何十年も巻き戻るとかよりはマシか」


 桜が咲き誇る季節の、高校の校門前。

 他の学年の春かな?とも思ったのだが。


「入学おめでとう、春香!」

「おめでとう!」


 ということだった。


「お父さん、お母さん、高校の入学式に保護者同伴なんて…」

「何を言う!周りを見ろ、ほとんどの親御さんが来てるじゃないか!」

「そうよ!それに、春香みたいなかわいい子が最初から一人なんて、心配だわ!」


 わからん。

 ああいや、過去?未来?とにかく元の時間軸の記憶を持つ身としては、かわいいがどうとかいうのはわかっている。ぬいぐるみか何かを抱くような…そういえば、肉体も小学生スタイルに戻っちまった。今度は、この時期から『現界』能力による無意識な成長停止を解除できるだろうから、卒業の頃にはきっとナイスなバディに…うふふふ。


「どうしたの、春香。顔が普通じゃないわよ?」

「ダメだぞ春香!彼氏なんてまだまだだぞ!!」


 しまった、両親の認識阻害もこの頃からあったんだ。なんという。



 最初のHR終了。

 さて、さっさと帰ろ。以前もそうだったよね。


「あたし、鈴木美里!これから3年間よろしくね!」


 うぇ!?美里がこんなに早く声をかけてきた!な、なんで!?


「さ、佐藤、春香、です。よろしく、お願いします、鈴木さん」

「『美里』でいいよ!ああ、でも春香って本当にかわいいわね!」


 いきなり下の名前で…は、美里のデフォか。

 それにしても、いきなり『かわいい』とか…不安しかないんだけど。


「おい、鈴木とかいう女子!何いきなり佐藤さんに声をかけてんだよ!」

「そうよそうよ!せっかく『不可侵条約』を結んでたのに!」


 あれ、この人達…。


「なに、あんた達?あたしが誰に声をかけようと関係ないでしょ?」

「そ、それは…」

「そう、だけど…」

「三橋くんに、七瀬さん?いきなり、どうしたの?」


 うん、同中の生徒だよ。


「…ええっ!?さ、さ、佐藤さん、俺達のこと、知ってるの!?」

「同じ、中学、だよね?3組の、三橋完治くんに、5組の、七瀬桃香さん」

「俺達の、フルネームを…!?」

「う、うそ…」


 え?だって、同じ学校だったし。


「ウチの学校、1学年に150人以上はいたよ!?」

「う、うん。だから、3学年で、450人、くらい?」

「全校生徒の名前を覚えてたの!?」


 そういうことになるかなあ。まあ、私が1年だった時の3年生の名前は…数人はあいまいかも。あははは、私の記憶力もたいしたことないなあ。


「…そ、そんな…なんで…?」

「なんで…って、それ、は、その…」

「春香?」

「だって、何かの、用件で、声をかける時、名前知らないのは、失礼かなって。あと、万が一、声をかけられたり、した時とかも…」


 だよね。リーネの時も、ずっとそうしていた。

 まあ…。


「…声をかけられる、ことは、ほとんど、なかったけど。あはは…」

「「…」」


 はあ…。今更ながらに、私の人付き合いの悪さが露呈してしまった。まあ、みんな私の責任だよね。『佐藤春香』のロールプレイってことで、積極的に声をかけなかったのは私なんだから。無意識だったとしても。高校では…どうしようかな。


「…あんた達。さっき、『不可侵条約』とかほざいてたわよね?」

「うっ…!」

「だ、だって、佐藤さんが、私達のことを、こんなに見てくれていたなんて、全然…」

「やかましい!」

「「ひぃ!?」」


 え、どしたの、美里。そんなに怒るなんて、健人くんが浮気でもしたの?あれ、でも今の段階では、まだ姉弟として接してたよね?健人くんもまだ中学生だし。


「あんた達…この後、体育館に同中の生徒を集めて。先輩も含めて」

「え、でも」

「『佐藤春香のこと』で周知すればすぐでしょ!さっさと動く!」

「「了解!!」」


 あれ、みんな、戦争VRのプレイヤーだったの?なんか、すごく似合ってたんだけど。


「春香、あたしに任せて。春香をずっとぼっちにさせた奴らを制裁するから」

「ぼ、ぼっち…」


 ああ、はっきり言われた。そうだよ、私はぼっちだったよ…。


「でも!明日からはそんなことないわ!安心なさい!」

「え、で、でも…」


 私が『佐藤春香』のロールプレイを続ける限り、無理じゃないかなあ。『リーネ・フェルンベル』の記憶を取り戻して、ようやく…ああ、それでもそんなに多くないか。

 いいもん、この時間軸でもなんとか誠くんと出会って、それで…あれ?ひーふーみー…誠くん、まだ小学生真っ盛りだよ!しばらく待つしかないか…ううう。


「じゃあ、またね、春香!ほら、あんた達はちゃっちゃと歩く!」

「「了解です、姉御!」」

「姉御とか呼ぶな!」


 え、『姉御』って、美里がFWOで呼ばれてた愛称だよね?えーと、ヘイト班だっけ?未だによくわからないけど、でも、FWOが稼働するのは再来年だよね?


 頭の中にたくさんの『???』を浮かべつつ、高校生活初日が終わった。なんか、前と全然違うなあ。なんでこうなったんだろ?



 そういえば、この頃には既に美樹と知り合いだったよね。ただの小娘と電器店店員ってだけだけど…。ああ、こんなこと前の美樹に聞かれたら『小娘とか…ぷっ』とか言われそう。そうだよ、中身は相変わらずアラフォーだよ。ん?今の年齢なら、まだギリギリアラサーか?いやいや、中身って言ってんだろ、私。


「ちょっと、ちょっとだけ、会いにいこう…かな」


 とぼとぼと、最寄りの電器店に向かう。


「いらっしゃいませ!…あら、お客様、高校生になったんですね!おめでとうございます!」

「あ、ありがとう、ございます、高橋さん」

「あら、私の名前、覚えてくれたの?嬉しいな、あなたみたいにかわいい子に、覚えてもらえるなんて!」


 かわいい…『美樹』と呼べるまでの道のりは遠そうだ。ぐっすん。


「…ねえ、あなたのこと、『春香ちゃん』って、呼んでいい?」

「ふぇ!?あ、も、もちろん!もちろん、いいです!」

「そう!じゃあ、これからもよろしくね、春香ちゃん!あなたとVR技術のこと話すの、楽しいから!」


 …うん、少しずつ、少しずつ、進めよう。だから、いつか『美樹』って呼ばせてね、高橋さん。



 翌日の学校。


「春香、おはよ!」

「み、美里…さん、おはよう」

「呼び捨てでいいわよ!ああでも、春香って本当に」

「ちょっと待ったあ!誰も、姉御に独占権を渡したわけじゃないぞ!」

「ねえねえ、佐藤さん、私は『春香ちゃん』って呼んでいい?」

「あ、抜けがけ禁止!」

「僕は『春香様』がいいなあ」

「旧ファンクラブ急進派は悔い改めろ!」


 わいわいがやがや


「あ、あの、私のことは、好きに呼んで、いいから」

「春香…優しい」

「おい、急進派、放課後に追加の花壇水やりな」

「姉御、御慈悲の指示を!」

「お前らに慈悲はない」

「「「ごふっ」」」


 えーと、なにがなんだか。


 あ、そうだ。


「か、花壇の水やりは、私が、やりたいんだけど」


 FWO稼働はまだまだ先だけど、今からケインのスローライフを再研究しておいてもいいよね。植物系のスキルが充実してなかったし。転移魔法陣がもてはやされるようになったのがまずかったなあ。


「よし、今日の放課後に全校集会ね。教職員も交えて、花壇水やりサポートチームを決めるわよ」

「でもそれだと、校長が特権を振りかざして、特別顧問とかぬかして関わろうとするんじゃ…」

「ちっ、あの古狸め、まさか中学との交流会で既に春香に目を付けていたとは…。じゃあ、生徒総会に切り替えて。職員室には近づかないようにね!」

「「「らじゃー!」」」


 わけわかめ。

 えっと、それで、私は水やりができるの?できないの?



「春香!今日は、あたしとこの3人でお昼を食べるわよ!学食に行きましょ!」

「え、で、でも美里、私、お弁当…」


 中学までは給食、大学では学食だったけど、高校ではずっとお弁当だったからね。学食は高くつくんだよ。ウチ、あんまりお金ないし。


「しまったあー!なぜかその可能性を考えていなかったあっ!ちょ、ちょっと待って、購買でパン買ってくるから!」

「おいおい姉御、あきらめが肝心じゃね?」

「ぐっ…!」

「次のローテーションを待ちましょ。ねえ、あ・ね・ご♪」

「あんたらあっ…!」


 なんか、美里が血涙を流しているし。あ、そうか、美里と健人くんって、使途目的を明確にしないとお小遣いもらえないんだよね。あのお爺様なら、買い食いできないようにするはずだ。最低限のお金しかないのだろうな。



「それでは、ここを…佐藤さん」

「はい。月の裏側にも資源が豊富であることから、暫定政府より権限が移譲され、各国関係企業が開発を進めています」

「パーフェクトです!すごいですね、佐藤さん!」

「春香、すっごーい。あたし、全然わかんなかった!」


 おいおい、『ソル・インダストリーズ』御令嬢様。まあ、月の裏側は『アサバ産業』の方が頑張ってるか。いやでも、把握しとけよ、御令嬢様。


「おい、あの先公、春香さんに媚び売ってねえか?」

「他の教師共もだよ…。姉御よお、あいつら、一度シメた方が良くねえか?」

「ヘイト班としても見過ごせないけど、暴力に訴えると、後々ね…。任せて、大人相手の対抗手段はあるから。お爺様に…」


 ん?お爺様?内緒なんじゃないの、美里?



 放課後。


「…♪」


 よかったよかった、水やりできたよ。

 あー、植物系っていうか、お花絡みが弱かったなあ、前の私(ケイン)。青年アバターとかって偏見持っちゃダメだよね。反省反省。


「でも、校庭に誰もいない…。校舎にも、人影が見えないような…」


 ま、いっか。部活はやる予定ないし。存在しない園芸部の部員ってことにしておこう。酷いな、私。



「さてと、FWOが稼働するまで、あらためて世界中のVRシステムをまわっておこうかな。『放浪者リーネ』とか呼ばれていたらしいから、それを踏まえて…」


 …ん?


「そ、そうか!今のうちに渡辺 凛をとっ捕まえて、再教育しとけばいいんだ!まだ犯罪者扱いされていないけど、この頃既に暗躍していたよね。【運営No.00】の権限はないけど、今の私は、アバター同時接続や『現界』能力をフルスペックで発動できるから…!」


 よーし、がんばっちゃうぞー!



 約2年半後。

 FWOの正式稼働日。


「すごいな…。リアル時間で半日も経ってないのに、もうエリアボスを倒すなんて…」

「ねえ、あなたが『セイ』くん?」

「え、なんで僕のアバター名を!?FWOは今日始まったばかりなのに…」


 ようやく、ようやく私は、彼に、伝えることができる。


「私は、リーネ。『リーネ・フェルンベル』」

「えっ、『フェルンベル』って…!それに、リーネってもしかして、さっきの全体メッセージの?」

「念のため言っておくけど、この名前、今の私の本名だよ。ゆっくり、教えてあげるよ。私が…」


 私が、あなたと共に歩みたい、その理由を。

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