EX-59 AF「先週リーネ様とお話をした地元プレイヤーの方に…」
EX-58の続きです。
うう、おいしいよー!
ほっぺたが落ちるって、まさにこのことだよ!実際には落ちないけど。
おいしい、おいしい。
大浴場から戻ってきたら、部屋に夕食が用意されていた。
彩り豊かな和食だったけど、特にエビ料理が最高!こないだのロスのロブスターとはまた違う味わいで。当たり前か。
はー、私だけ、こんなにおいしい料理食べていいのかなあ。
お父さんとお母さん、今晩は美樹の手料理かな?あ、リーネとしてのお父さんとお母さんはどうなんだろ。ああ、こんなことで両親(しかも、双方)を思い浮かべるなんて、私って変なところでお子様のままなんだよなあ…。
◇
「リーネ、今は休暇だそうだよ。ああ、『佐藤春香』の方のリーネだがな」
「そうみたいね。こうしてふたりして会うなら、声をかけた方が良かったかしら」
「実くんが言うには、ひとり旅だそうだよ。忙しい身だ、そっとしておくべきだろう」
「私達も、今日は時間があまりとれないからってフィッシュ&チップス、ですしね」
「まあ、明日は少し時間が取れるだろう。だから…」
◇
「はい、できましたよ!春香も大好物の、我が家特製の料理です!」
「私も手伝いましたよ。さあさあ、田中さん、高橋さん、どんどん食べて!」
「…これが、噂の『丸焼き』料理…」
「み、実さん、どうしよう…」
◇
「…(ずずずー)」
「…(ずずー)」
「…(もぐもぐ)」
「…あの、お爺様、なぜ今日はカップラーメンなんですか?」
「ん?たまにはいいではないか。執事達も今回は三連休をそのまま休暇としたからな」
「いや、これならコンビニ弁当の方が…」
◇
「お兄ちゃんって、相変わらず『佐藤春香情報』の番組、観ないんだ。なんで?」
「なんでって…。以前も言わなかったかな、なんか違うんだよ、実際の彼女と」
「違うって?」
「実績とか成果とかは事実だけど、それをどうこうって騒ぎ立てるのがさ」
「それって、ずっと門番として見ていたから?」
「…かもしれない。FWOで初討伐が全体メッセージで流れた時も、彼女は彼女だった」
「なるほど…こういうところに、惹かれたのかな」
「なんの話だ?」
「別にー」
◇
「凛、お前の元部下が会いたいと…」
「すぴー」
「…日本の三連休中、ずっと寝ているつもりだろうか…」
◇
はー、食べた食べた。
お茶を淹れて、ずずずっと飲む。ふー。
「…やることが、ないなあ」
HS-01ぷりーず。ダメか。旅館に無茶振りはすまい。
しかたがないから、部屋に備え付けのTVをつける。
全国チャンネルは嫌な予感しかしないから、地元のローカルチャンネルにする。
『本日のFWO情報コーナー!今回は、先週リーネ様と少しお話をしたという、地元プレイヤーの方にインタビューしてきました!早速』
そっ切。
◇
TVがまるであてにならないため、他に何かできないかと館内案内を見る。
あ、ゲームコーナーがあるんだ。あと、お土産屋。
お土産屋はチェックアウト前後に寄るとして、今晩はゲームコーナーに行ってみよう。
てくてく。
「あ、これ、昔見たことがある…」
ビデオゲーム数台に、卓球台。あとは、自動販売機。卓球台はある家族が使っている。
いやしかし、ビデオゲームは、これ、何十年前?リーネの時で既に古過ぎ感満載だったよ?
「お姉ちゃん!一緒に卓球やらない?」
「パパとママ、弱くてー!」
「こら!…ごめんね。でも、もしよければ…」
よーし、やっちゃうよー!
…
「お姉ちゃん、強すぎ」
「…ごめん」
うっかり『攻略』してしまった。変だなー、『佐藤春香』のロールプレイはやってないはずなんだけど。まあ、素の私も割と攻略厨だからこそ『リーネ』アバターが生まれたって話はあるな。
「おう、嬢ちゃん、対戦やらねえか?誰も相手いなくてよう」
「えっと、この手のゲームはあまりやったことないので、お相手が務まるかどうか…」
「やってりゃわかるって!金なら俺らが出すぜ!」
よーし、やっちゃうよー!
…
「嬢ちゃん、ホントに今日、このゲーム初めてだったのかよ?」
「そのはずなんですけど…。あ、お金は払います」
またやってしまった…。
まあ、いっか。楽しかったし。
◇
部屋に戻ったら、夕食の片付けが済んで、布団が敷かれていた。至れり尽くせりだな。旅館ってみんなこうだったっけ?ここだけかな。
少し早いけど、寝ることにする。頭も体も適度に動かしたし、よく眠れるだろう。
電気を消して、布団に入る。
遠くから、心地良い波の音が聞こえる。
おやすみなさい。