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EX-6 AF「日本で現地捜査、ですか?」(後編)※

※少し残酷描写があります。

[<捕まっちゃったね…>]

「そうだな…」


 俺とリンは、殺風景な部屋の中で、そうつぶやいた。

 ‎電車で一気に街中まで移動して油断してしまったのだろうか、助けてくれたお礼にとリンに何か奢ろうとして、タクシーを拾ったのが運の尽きだった。


「タクシーにまで扮するなんて、いったいどれだけの規模が潜入しているんだ…!」

「そりゃあ、成功報酬が凄まじいからな。ワシもやってきたというわけだ」

「!?お前までこの国に来ていただと…!?」


 携帯端末で資料を見るまでもない。パリ支局内では誰もが知る、マフィアのボス。そいつが、何人もの部下を引き連れて姿を現す。そこまでして…!


「さて、その携帯端末を渡してもらおうか?もちろん、パスコードもな」

「…そうか!俺に成りすますために…!」

「そういうことだ。拒否するなら…わかっているな?」

[ひっ…!?]


 リンの頭に拳銃を突きつける、部下のひとり。


「渡すし教える!だから、リンは開放しろ!」

「ほう?素直だな」

「何をしたところで俺を始末するんだろ!?それにこれだけの規模だ、俺がパスコードを教えなくとも時間をかけて解読しちまう!」

「ふん、まあ、数日はかかるな。時間は惜しい」

「なら、その子が助かるだけマシだ!」


 ‎くそっ…。

 ‎こんなにあっさり、あっさりと終わってしまうのか、俺の人生…!!


 くやしさのあまり、携帯端末を強く握りしめる。


 と、その時、携帯端末の画面が表示される。


<安心して、テオドール・クロイゼルさん>


 そう、文章だけ(・・)が浮かび上がる。

 ‎はっと、彼女の、リンの顔を見る。


「そして、ありがとう」


 そう、はっきりと口にしたリンの姿は、リンでは(・・・・)なかった(・・・・)

 ‎携帯端末の表示が更に続いて―――



 私は、リーネ・フリューゲル。

 この世の全ての魔を、攻略する。



 頭に突きつけられた拳銃を、つかむ。

 ‎このタイプの銃は、この場所を押さえつけると、引き金を引くことができない。

 男がたじろぐ。すかさず足を払って床に押さえつける。みぞおちに拳を一発。

 ‎まずは、ひとり。


「ば、バカな、お前は、お前が、なぜここに―――!?」


 何かを叫んでいる男は、とりあえず無視。

 ‎次は、あの獲物(・・・・)を持った男に近づく。それを抜く前に背中に回り込み、男の背中全体に衝撃を与える。ふたり。


「っ!?かまわん、撃て!撃て撃て撃て!」


 パンッ!

 ‎パンパンッ!パンッ!


 遅い。

 ‎何がって?弾丸が、だ。

 ‎現実とは、こんなに緩やかに時間が進むものなのか?


 キン、キンキン、カン!


「そんな、刀で…!?っ、撃て撃て!」


 ざしゅっ

 ‎しゅばっ


「ぎゃあああああ!痛ええええ!?」

「血が!?血がああああ!」


 そりゃあ、手や足を切ったら痛いだろう。血も出る。現実だから。

 ‎銃を突きつけ、引き金を引くほどだ、それくらい覚悟していたのでは?手首や指を、切り落としたわけでもあるまい。


「あ…ああ…」


 最後に残った男、口で指示を出していただけの、今は、壁を背にうろたえている男に。


 しゅっ


 ‎私は、刀を突き刺す。


「…」


 気絶した、か。

 ‎頭の上の壁に、突き刺しただけなのだが。


 これで、終わりか。


 ‎あの時も、そうだった。

 ‎現実は、いつもあっけない。

 あっけなく、傷つき、倒れる。


 ここ(現実)は、攻略しがいがない―――



 あっという間に終わった、マフィアとの戦い。圧倒的なまでの戦闘力をもつ彼女は、


佐藤(さとう)春香(はるか)。君が、あの…」


 今や、人類なら知らない者はいない、神にも等しい能力をもつとまで言われる、人知を超えた存在。

 ‎その片鱗を、この目で確かに垣間見た、俺は、


「ごめんなさい、だましていて」


 俺は、しかし、


「でも、もう一度言わせて下さい。ありがとう、ございました」


 しかし、そんな女の子に、謝罪されていた。少し、はにかんだような笑顔で。



「なるほどな。最初から、我々は利用されていたのか」

「ソル・インダストリーズのセキュリティは常に万全です。そこにつけこむスキがあるとすれば」

「トロイの木馬、か」


 味方として組織内部に潜入し、罠をしかける。その味方が警察関係者の偽装となれば、効果は大きい。


「我が支局にもマフィアの内通者がいたよ。全く、世も末だな」

「それだけ、得られるものが大きいということでしょう。ですが!」


 俺は、手に持っていたそれを、ライナス支局長の前で高く掲げた。


「そんな奴らの野望は永遠に果たされません!彼女が、佐藤春香が、いる限り!」

「まあ、もともと彼女が『現界』した技術でもあるしな」

「俺、彼女に弟子入りしたんです!彼女のようになれなくとも、常に万全の備えで、捜査官としての役割を果たす(ロールプレイの)ために!」


 日本で買ってきた、HS-01。比較的安価であるにも関わらず、どのVRヘッドセットよりも通信容量が大きい。これなら、国境を越えてFWO日本サーバにアクセスしても、ほとんど遅延が発生しないという。


「まあ、がんばりたまえ。しかし、次の仕事も早速明日からだぞ?教えを請うのは、しばらく後ではないのか?」

「FWOの時間加速は10倍ですから、徹夜で数十時間は鍛えられます!どうせ、移動中の飛行機では寝るだけですし」

「そうか…。いや、今度の航路の飛行機な、VRローカルサーバが試験導入されているそうだ。片道だけでも、数日分の高級リゾートを楽しめるというのに…」

「え」

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