EX-55 AF「信じらんない、あの…が…お兄ちゃんのこと…」
EX-54の続きです。
「出店はもういいかな?まだ何か食べる?それとも、飲み物がいい?」
「出店は帰りにまた寄りましょう!」
「そ、そうですね。模擬店でも喫茶店とかありますし、その後でもいいと、思います」
「そっか。じゃあ、次は出展だね。2-Bに直行しましょうか」
うん、パンフレットの通りなら、玄関から入ってすぐの教室だ。あれ?なんで2-Aの教室に?ああ、2-Aは出店と模擬店やってるのか。
「リーネさん、彼氏のお兄ちゃんに早く会いたいんですね!」
「え、や、そ、そういう、わけじゃ…」
そ、そういうわけ…あるかな?だ、だってほら、フリをしなきゃいけないし、ね?ね?
「はあ…リーネさん、脈ありまくりじゃない…まだ信じらんない、あの…が…お兄ちゃんのこと…」
「あれ、愛ちゃん、今なんて言ったの?」
「え、和美ちゃん、聞こえなかったの?…ああ、これが…なのか…」
愛ちゃん、禁則事項喋ってる?ダメだよー、阻害しまくるよー。
「靴、履き替えなくてもいいんだ…。あ、ここね」
『わが地元、◯◯町』
うん、超定番の展示だ。
こう言ってはなんだが、私が今この場で数秒ほどあれば全てわかる情報ばかりに違いない。
いや、うん、こういうのも文化祭の醍醐味だ。だって、こんな展示、街中にはないでしょ?他のはあるじゃん。やきそばとかさ。
「お邪魔しまーす…」
「あ、こちらは展示の…リーネ!」
「誠くん、来たよ」
「あ、ああ…こ、こっちから、見てってくれないかな」
「ん、ありがと」
ちょうど、誠くんが入口の担当だったみたいだ。
「えー、これ、新聞データを印刷して切り貼りしただけじゃーん」
「こっちは、資料閲覧端末が置いてあるだけ…」
「ま、まあ、ほら、この町の情報について、ここで一望できるじゃない。ね?」
「リーネさん、優しい…」
優しいっていうか、そうとしか表現できないっていうか。
あ、この冊子はよく出来てると思うよ?この町の史跡かな。地図や一覧の書き込みや整理が良くできていて、本当にわかりやすいよ!
「あ、それは…」
「なんだよ、須藤、そーいうことだったのかよ!」
「いきなり『冊子、追加するから!』って、昨日遅くまで作ってたよな」
「ばっ…!いきなりバラすな…!」
「はー、こーんなキレイな彼女が来るんなら、そりゃあいいとこ見せたいよなあ」
キレイな彼女…うふふふ、もっと言っていいのよ?いいのよ!
あーでも、誠くんのあの言葉には負けるよね。あれから言ってくれないなあ、FWOで会っても。って、当たり前だけど。フリだもんね、フリ。フリ…。
「ん、おいおい、彼女が寂しがってるぞ?」
「ちょうど交替の時間だろ?模擬店とか案内してやれよ!」
「最後の片付け交替で手を打とう。な?」
なんか妙に手際がいいな、クラスメートの子達。ちゃっかり仕事を押し付けてるよ!ダメだよ、割り当てられた仕事はちゃんと責任を持って…ああいや、今はその方面を考えるな、私。また、実くんにドヤ顔されそうだ。
「ねえ、誠くん、本当に交替できるなら、案内してくれる?」
「あ、ああ、交替できる!できるから、一緒に、その…」
あれ?なんか、大人しくなった?なんで?
「お兄ちゃん!あたし達はここからふたりで回るから、リーネさんと一緒に回って!」
「え、あ…ああ、そうするよ。い、いいかな、リーネ?」
「いいよ!でも、誠くんはいいの?愛ちゃんを放って」
「いいんだよ、あんなやつ!」
「お兄ちゃん、FWOで花屋のバイト交替ね」
「なんで僕が!?」
え、誠くんも門番アバターで花屋NPCのフリするの?なんか、シュール。
えーと、まあいいや。
「じゃあ、行きましょ、誠くん」
「あ、ああ、うん、行こう」
ということで、ここからは誠くんとふたりだ。
うふふふ、ショッピングモールの続きだね!
「あのー、ところで、あの人なんで、あたし達が入ってきてからずっとorzなんですか?」
「いや、俺達もよくわからなくてな…」
「『やっぱり負けた…俺は別れたのに…』とか意味不明なことばかり言っててな…」
ん?
◇
二階の模擬店に移動。
「お化け屋敷…喫茶店…輪投げ…。どれがいいかな?」
「お化け屋敷は怖くないと思う」
「なんでわかるの?」
「昨日試しに入ってみた。ちっとも怖くなかった」
え、他のクラスの模擬店に試しに入ったの?なんで?
「でも、とりあえず入ってみましょ。昨日から変わってるかもよ?」
「そうかなあ…」
お化け屋敷に入場。
お化け屋敷に出場。
「…ごめんなさい。これから、誠くんの言うことは素直に従うよ」
「いや、その、なんか、ごめん」
怖いっていうか、オブジェ陳列というか。緑色の絵の具が垂れていた井戸が置いてあったりとかね。お化け屋敷というよりは…前衛芸術?中学にしては崇高な模擬店だった。何を模擬したのかわからないけど。
喫茶店。
「いらっしゃいませー!ホットケーキはいかがですか?」
「あ、はい、それを二人前」
「お飲み物はどうされますか?」
「えっと、このレモネードを」
「かしこまりましたー」
…
「お待たせしましたー。ホットケーキとレモネード、二人前です!」
「い、いただきます…」
「いただきます…」
もくもく。ごくごく。
「お会計は併せて千円でーす」
「じゃあ、これで」
「ありがとうございましたー!」
…
「ぜ、全員、メイド男子って、珍しいね」
「珍しいというか…お見苦しいものをお見せして申し訳ありません…」
「誠くんのせいじゃないから…あと、敬語はいいから…」
「うん…」
輪投げ。
「一等、ビーチパラソルです!五千円相当ですよ!おめでとうございます!」
「は、はあ…」
いやこれ、持ち歩けないから。寄贈。
「っていうか、今、秋だよな…」
「在庫処分だったのかしらね…」
二階、終了。




