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EX-54 AF「お金持ちランキングでリーネさんの名前見たもん!」

EX-53の続きです。

「あ、ねえ、じゃあ、お兄ちゃんの学校の文化祭、春…リーネさんに来てもらおうよ!」

「お、おい」

「文化祭?」


 今週末、(まこと)くんの中学で文化祭があるんだそうだ。

 中学の文化祭にしては珍しく (失礼)充実していて、たくさんの来場者があるとのこと。

 保護者まで参加できなくなってしまったので、最近は各生徒に一定数の入場券が割り当てられることになった。


「で、逆にノルマができてしまったと…」

「ウチの両親、その日は御近所の法事が入っちゃったんだって」

「入場券は余分に発行されているけど、さすがに妹だけなのは…とは思っていたんだ」


 なるほど。

 今日出勤した分をその日と交替できれば、だけど…。


「クリームシチュー、作り置きでいいですか?」

「残念がるお客さんもいますが、事前にFWOで告知しておけば、たまにはいいでしょう」


 と、マスターと調整。

 でも、作り置きするんだから残念がることはないんじゃないかな?え、あのメニューは私が給仕するのが最大ポイント?よくわからない。シチューが人気出たんじゃないの?なぜメニューに『リーネ嬢』と付いたか理解していない?ますますわからない…。閑話休題。


「うん、参加できるよ」

「やったー!リーネさん、一緒に行きましょ!」

「それが目的か…。リーネ、悪いけど、またよろしく。俺は出展があるから案内できないけど」


 こうして、誠くんの中学の文化祭に(めぐみ)ちゃんと行くことになった。


「あ、ねえ、入場券はあと何枚残ってるの?」

「あと1枚、かな。両親+αを想定しているから」

「そっかー、美里と健人くんも誘おうと思ったけど、ふたり一緒じゃないと来ないよね…」

「え、もしかして『ミリー&ビリー』の姉弟プレイヤーですか!?あの『ソル・インダストリーズ』の!」

「うん、まあ。でも、今回は見送ることにするよ」


 カランカラン


「誠、愛、お待たせ」

「さ、レストランに行くわよ」

「お父さん、お母さん、お兄ちゃんの学校の文化祭、リーネさんが行ってくれるって!あたしと!」

「え?」

「どういうこと?」


 ああうん、確かにいろいろとすっ飛ばしてるね。でも、レストラン、予約入れてるんだよね?誠くんと愛ちゃんから説明しておいてね。


「えー、じゃあ、『パチン』ってやって、『パチン』って!」

「いやその…御両親には、必要ないんじゃないかなあ」

「「?」」


 別に、それやらなくても『認識阻害』は解除できるけどね。


「むー。でも、『リーネ嬢』がお兄ちゃんの彼女だって言っても信じてくれないだろうし」

「「彼女!?」」

「いえ、その…誠くんには、以前お世話になったことがありまして」


 ショッピングモールのことをざっと話した。いや、ほとんど隠したけど。買い物してたら、たまたまぶつかって、荷物を拾ってもらったり持ってもらったりして…という感じで。あれ、オールでっち上げだこれ。でも、服がどうとかだけ言えば、私が誠くんをナンパしたように見えるしねえ。女子大生が男子中学生をナンパ。おまわりさんを呼ばれそうな字面だ。字面だけだけどな!


「そうですか。それは助かりますが…良いのですか?」

「はい、先ほど日程を調整できましたし」

「すみません、よろしくお願いしますね」


 実はここで『はい、お任せ下さい!』と言いかけたのは秘密だ。どうも素の私は仕事モードに近いようだ。だから実くんに『やれやれ』とかって顔されるんだよ。くそう、すっかりパワーバランスが逆転してしまった。なんとかせねば。


「まあいっか、このままのリーネさんでも。友達に自慢できる!」

「おい、お前、何かたくらんでるな?」

「へっへっへ、あたしの友達も文化祭に行くんだよ!お姉さんが生徒だから!」


 いや、認識阻害かけていくよ?ショッピングモールに行った時と同じレベルの。だから、『佐藤春香』以下略はもちろん、『リーネ嬢』とやらの認識もされないよ?最初から知っている、愛ちゃんや誠くん以外は。


「それでもいいよ!」

「あ、リーネ、僕からも頼めないかな?その、あのクラスメートと会うかもしれないから…」

「そうだね、じゃあ、そのつもりで」


 そっかそっか、また、誠くんの彼女のフリができるのか。…できるのか!うふふふふふふ。


「リーネさんが、ちょっと気持ち悪くなった…」


 ごめんなさい。

 ちっ、あとで『オフィス』でぐだってる渡辺 凛に八つ当たりしよう。色ボケの原因は全てあやつにある。そうだ、そうに違いない。



 文化祭当日。

 愛ちゃんと、誠くんの学校の最寄駅で待ち合わせる。


「リーネさーん、お待たせー!」

「待ってないよー。…あ、その娘が?」

「うん!和美ちゃんだよ!」

「は、初めまして」


 ちょっと大人しいかな?ああでも、愛ちゃんのように…いや、疑ってばかりはまずいか。


「よろしくね。愛ちゃんのお兄さんのお友達で、リーネっていうの。見た目はこんなだけど…」


 まあ、自我認証システムを使うまでもないだろう。一応、愛ちゃんとも既に知り合いなんだし。


「じゃ、行こ!」

「うん。歩いて5分位だよね、この道を行くと」

「え、リーネさん、お兄ちゃんの学校に行ったことが…ああ、そっか」

「?」


 ありゃ、和美ちゃんが不思議な顔しちゃった。


「ああうん、親戚…じゃなかった、事前に地図で確認しておいたから」

「そうなんですか」


 最初に誠くんにでっち上げた『親戚の子が通ってる』は使えない。これからその中学に行くんだから!



 というわけで、さくっと到着。

 へー、校門にアーチ作ったんだ。ウチの中学 (どっちも)では作った記憶がないなあ。立て看板くらい?

 アーチのところで、入場券と引き換えにパンフレットをもらう。


「校門から校舎玄関まで出店、一階が展示、二階と三階が模擬店、か」

「お兄ちゃんの2-Bは一階の展示ですね!」

「お姉ちゃんは出店やってるから…あ、あそこ」


 おお、焼きそばか。定番中の定番ですな。


「いらっしゃい…ああ、和美、来たのね」

「うん、お友達と…お友達のお兄さんのお友達、だっけ?」

「あたしのお兄ちゃんの彼女です!」


 え、ちょ、そんなはっきりと、や、やだなあ。フリ、フリなんだよ?え、えへへ…ああ、ダメダメ、心の中でも普通にしないと。両親を思い出して、普通…普通…あれ、なんのロールプレイだっけ?いや、『佐藤春香』の認識阻害だけした素の私だよね?『リーネ嬢』とやらもそうで…ああああ。


「もー、リーネさん、何照れてるのー?」


 あ、良かった。今度は『気持ち悪い』って思われなかった。

 んーでも、素の私って難しいなあ。何か設定決めておけば良かったかなあ。手遅れか。


「リーネ…?」

「あ、はい。えっと、父がドイツ系のハーフなもので。こんな見た目ですが」

「そう…。彼氏さんの名前は?」

「かっ…えっと、2-Bの、須藤 誠くん、です」

「須藤くん…そんな男子、いたかしら。同じ学年なんだけど」


 あらら。誠くんも普段から認識阻害かけてるのかな。おい、何言ってんだ、私。んなわけないだろが。

 んーまあ、目立たないよね、誠くん。でも、ルックスは悪くないと思う。目立たないけど。


「それじゃあ、やきそば3つ、下さい」

「はい、合計で600円です」

「千円札で、お釣りあるかな?」

「はい、400円のお返しと…やきそば3つです。ありがとうございました」


 うん、今日もちゃんとお金下ろしてきたよ!千円札たくさん!財布パンパンだよ!


「リーネさん、これ、200円」

「あ、あたしも」

「後でまとめて精算しましょ。とりあえずは私が出しておくから」

「あ、ありがとうございます」

「ありがとうございます!」


 精算するのはしれっと忘れることにしよう。愛ちゃんは納得してくれるに違いない。和美ちゃんは…まあ、適当にごまかそう。


「ん、ちょっと焦げ臭い…」

「あたしの、水っぽい…」

「え、そう?私のは当たりかな」


 おいしい、おいしい。


「(ひそひそ)ねえ、愛ちゃん、リーネさんって、お嬢様なの?」

「(ひそひそ)あ、和美ちゃんもわかった?超お嬢様だよ、超お金持ち!」

「(ひそひそ)そ、そうなんだ。どれくらい?」

「(ひそひそ)えっとね、『ソル・インダストリーズ』って会社よりももっとお金持ち!」

「(ひそひそ)ええ…想像つかないよ…」

「(ひそひそ)あたし、こないだTVで世界のお金持ちランキングでリーネさんの名前見たもん!」

「(ひそひそ)え、それ、どういうこと…?」


 ん?『ソル・インダストリーズ』?ランキング?何の話してるのかな?まあ、いっか。

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