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EX-47 AF「リーネ14歳、ピチピチの中学生です!」(4/4)

 ショッピングモールの中にある、ハンバーガーショップ。お昼時だからね、お腹が空いたのだよ。中学生のデートコースの定番でもあるからね!え、最近は違う?ファミレスの方がいい?うーん、よくわからん。


「ここは、私がおごるよ!」

「いや、さすがにそれは変。リーネって、やっぱり…」


 おや。鈴木姉弟ならひゃっふーって喜ぶのに。FWOでもリアルでも。ていうか、美樹さえもたまにそんな感じだし。まあ、みんな、私の資産状況知ってるしな。でも、渡辺 凛、あんたはダメだ。なんだよ何が一等地だよほんとに。


「うん、おいしい、おいしい」

「お嬢様って、庶民の食べ物を有り難がるっていうよね…」

「本当においしいよ?このチキンバーガー。誠くんのテリヤキもおいしそうだし」


 特に、この丸焼き感。ひさしぶりにFWOでバーベキュー楽しもうかな?一人三役で。


「そういえば、ここドリンクバー方式なんだね。知ってる?絶妙な配分でいろんな飲み物を合わせると、とってもおいしいよ!」

「…やっぱり、お嬢様ってのは勘違いか…」


 そうだよ。決まってんじゃん。


「あれ?そういえば、『ケイン・フリューゲル』が、リアルでのドリンクバー配分をレシピとして公開していたような…」

「あ、誠くんも知ってたんだ!ねえ、FWOでは職業なに?私は剣士やってるよ!」


 リーネ&ケインお得セットでリーネだけ使ってるよ!という体裁である。あれ、ホントにお得よね。ケインのデフォルト装備になぜかレアな執事服も入ってるし。


「え、ぼ、僕?えっと、その…」

「あ、ごめん、言いたくないなら…」

「そ、そうじゃないんだ、ちょっと地味で…門番、なんだ」


 門番?門番って、そんなに多くの人はやってないよね?えーっと…。


「もしかして、FWO稼働日からずっと第一エリアを守っている、あの門番?」

「え、なんですぐわかったの!?」


 ああ、うん、そこはいつもの『観察』の延長でね。やってる人少ないと区別付きやすいのよ、アバターの言動とか雰囲気とかで。


「よく一緒にやってる仲間から聞いたことがあってね。そっか、誠くん、古参プレイヤーなんだ」

「古参って言っても、実績があるわけじゃないし…。一応戦闘職だから、エリアオーナーにもなれないし」

「そんなことないよ!初心者プレイヤーも含めてみんな誠くんのこと知ってるはずだよ!すごいすごい!」


 こういう、地味でもこつこつ活動する人こそ、仮想世界の重要な担い手なのだ。うーん、リアルが中学生でなければ『オフィス』に勧誘してたのに!


「じゃあ、時間加速のタイミングが合ったら、声かけるね!汎用のリーネアバターだけど、その時は…『誠くん』って、ささやくから」

「あ、ああ。その時は、よろしく」


 よし、今夜早速声かけよっと!楽しみだなあ。



 ショッピングモールを出て、駅に向かう。


「今日は楽しかったよ。ありがとう!」

「こちらこそ。なんか、もともとお願いしたことは一瞬で終わっちゃったけど…」


 くふふふ、彼女のフリだったけど、これ、間違いなくデートだよね?デートだったよね?いやっふー、初めてのデート、楽しかったよ!初めての…。


 orz


 今日、このポーズが多いような気が。中身アラフォー、肉体年齢19歳、最近までちんちくりんでおかしな愛でられ方しかされてなかった、この私の、初めての…今になって、ようやく、初めての…


「え、リーネ、突然どうしたの!?何か、まずいこと言っちゃった?」

「う、ううん、そんなことない。本当に、楽しかったなあって…」


 ‎いいじゃないか!いいんだよ、楽しければそれで良し!終わり良ければ…


「ようよう、ぼっちゃん嬢ちゃん、俺達に電車賃恵んでくれないかなあ」

「俺ら、ちょーっと遠くから来たんでさあ、小銭程度じゃダメなんだわー」

「ここは、ウィンウィンってことで頼むわ。俺達、金もらって安心。お前ら、痛い思いせず安心。な?」


 orz


 少し遠回りしてみようかなあえへへって路地裏に引っ張っていかずに、さっさと表通りを歩けば良かったなあ。うん、知ってるよ、人生にIFはないって。


「あ、嬢ちゃんには、お金以外のナニかも恵んでくれると嬉しいなあ。げへへ」

「や、やめろ!リーネに触るな!」

「おうおう、威勢がいいなあ、クソガキが…よっ!」


 ぶんっ

 ‎パシッ

 ‎ドサッ


「…な!?」

「な、なんだ!?おい小娘、今、何やった!?」

「何って…ただの体術で転がしただけだよ、『レッドドラゴン』の時のみなさま?」


 最初は、NPCの店で。次は、元FWO本社の玄関ホールで。あの時はふたりだったけど、目の前の3人のうちふたりが、確かにあの時の『荒くれ者』だ。


「『レッドドラゴン』?お前、あの時いた連中のひとりかよ!?」

「思い出せない?多少成長しているとはいえ…ああ、そうか」


 パチン


 私が指を鳴らすと、何か(認識阻害)がサッと消える。


「何言って…って、あ、あ、あ、あああああああああ!!」

「おい、どうし…う、わ、うわああああああ!?」

「な、な、なんで、こんなところに…!?」


 こんなところにとは失敬な。


「…リーネ?…え、リーネ…リーネ・フリューゲル…?…!佐藤…!?」


 くそう。くそうくそうくそう。


「【ストレージアウト】神剣フリューゲル!」


 ぶおん!


「「あ、ひ、ひいいいいい!」」


 剣を構えた私は、叫ぶ。そりゃあもう、思いっ切り。


「せっかくのデート、台無しにすんじゃないわよーーー!」


 あ、3人とも軽い打撲程度にしたよ?正当防衛がじゅーぶん成り立つ程度に。当然じゃない。



「…ごめんなさい。騙して」

「いやその、僕も楽しかったから…」


 FWO第一エリア。門番としての誠くんと、佐藤春香アバターの私でこそこそと話す。彼、まだ門番として立ってるから。あと、誠くんにはロールプレイも何もないし。誠くんも、門番としての『俺』じゃなくて『僕』と言っている。どちらも、周囲に聞かれると面倒だろう。

 ‎そういえば、この佐藤春香アバター、成長前にスキャンして作ったものだから現実と合わなくなっているのよね。作り直した方がいいかな?でも、これからまだまだ成長するから…!


「でも、あなたの秘密を、聞いちゃったけど…」

「ああうん、それはいいの。いずれ公表するものだったから。むしろ、信じてもらう方が難しいくらいだし」


 あれから電車に乗って、誠くんの降りる駅までに、やはりこそこそとかくかくしかじかした。ちょっと、どころか、かなり気まずくなったこともあり、とりあえずその場は別れ、あらためてFWOで話すことにした。


「それでね、まだ数年は先になると思うけど、いずれは『リーネ総合オフィス』で働いてもらえないかな?誠くん、第一エリアでは知名度高いし、真面目だし、受付とか交渉とか、向いていると思うんだ」


 少なくとも、あの(なにがし)よりは。


「僕なんかで良ければ、ぜひ。リアルでもちゃんと勉強して成果出さないといけないから、その頃本当に働けるかはわからないけど」


 おおお、鈴木姉弟よりも頼もしいよ!


「よろしくね!じゃあ、私はこれで。…あと、本当に、ごめんなさい」

「もう、いいですから。あと…」

「なに?」

「リーネさんは、やっぱり、笑ってた方がいいですよ。…だから、気にしないで下さい」


 ああ、惜しい!『さん付け』になっちゃったよ!あと、もう『素敵』って言ってくれないのかな?かな?


「ごめんなさい、通行人が出てきて…」

「うん、それじゃあ、また」


 またね、誠くん。



 リーネ総合オフィス。

 ‎いい人材見つけたよ、青田刈り!と、ミリビリ姉弟に渡辺 凛、あと見学に来ていた美樹(ミッキー)実くん(釣り師)に、かくかくしかじかと伝えたところ、


「『あの頃』から、おかしいとは思っていましたが…」

「実さんとか、健人くんとか、イケメンが周囲に揃っててなぜ、と思ってたんだけど…」

「そういえば、クラスの男子の何気ないアプローチに見向きもしてなかったわね…」

「先輩、精神的に長く生きてるから、年上好みなのかなと思ったんだけど…」

「春香ちゃん、お父さんやお母さんと仲いいから、枯れ専だと思ってたわー」


 なによ?

 ‎あと、渡辺 凛、それ死語。


「「「「「まさか、ショタコンだったとは」」」」」


 違う!

作者「っていうか、チョロインだったってだけだよね」

春香「ねえ、斬られたい?殴られたい?どっちがいい?」

作者「さーて、次はどんなお相手を出そうかなー」

春香「斬る」

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