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EX-5 AF「日本で現地捜査、ですか?」(前編)

初めて第二弾、前後編シリーズです。

 俺の名はテオドール・クロイゼル。国際警察機構のパリ支局に勤める捜査官だ。まだまだ若造扱いされているが、これでも10年近くのキャリアがあり、かなりの成果を出していると自負している。


「ああ。君も知っているだろう?『ソル・インダストリーズ』のことは」

「当然ですよ。月面に数々の工業地区を有し、地球上にあらゆる製品を供給している企業グループ。今は、別の理由で有名ですが」

「その日本本社に、このパリを拠点にしているマフィアの構成員が潜入しているという情報が入ったのだよ。その構成員を現地で探し出してほしい」


 国際警察と言えば聞こえはいいが、要は、各国警察組織との情報交換や合同捜査がメインである。今回の場合も、日本の警察官に協力する体裁をとることになるだろう。まあ、その方がこちらとしてはやりやすい。特に、俺は日本語とかはさっぱりだ。


「それで、ライナス支局長、いつ向かえばいいんですか?」

「すまんが、すぐに向かってくれ。マフィアの目的は、転移型通信路…ああ、専門的なことはわからんが、要は産業スパイだな。取引先はお察しだ」

「技術を独占したい世界中の関連企業、と。『彼女』がいるのだから無意味なのでは?」

「そうでもないらしい。数週間でも実用化が先行すれば、莫大な利益が出る業界のようでな」


 ということは、その構成員は技術を盗むだけでなく、破壊工作まで実行して少しでも開発を遅らせたいだろう。確かに、急ぐ必要がありそうだ。


「わかりました。これから荷造りして日本に向かいます」

「頼む。資料一式はすぐに君の携帯端末に送る」



「つ、疲れた…。12時間のフライトはさすがにこたえる…」


 日本の国際空港に到着して早々、疲れをにじませる。国際便ではいつものことではあるが、やはり慣れない。

 ‎宇宙船に導入が進んでいるというVRシステム、飛行機にも入れてくれないだろうか?FWOフランスサーバで試したクルーズ船エリア1週間パック、あんなのがあれば…。


「クロイゼルさん、ですか?」

「え、あ、ああ。…もしかして、君が現地の?」

「はい、日本の首都警察の刑事で、レイラ・ミズホガワと申します。よろしくお願いいたします」


 流暢なフランス語だ。これは助かる。年齢は俺と同じくらいか?なかなかに美人だ。


「それでは、こちらに…」


 彼女に案内され、重い荷物を引きずりながら、到着エリアの端に移動していき…


[ダメー!]


 日本語らしき叫びが聞こえたかと思うと、横からいきなり、誰かに突き飛ばされた。床に豪快に投げ出されてしまう。


「いててて…。一体何を…!?」


 見ると、レイラと名乗った刑事の手元にスタンガンが!

 しまった、という顔をしてオロオロしていたが、急に走り去っていった。あいつ、俺をこっそり気絶させようとした!?


[大丈夫?]


 俺を突き飛ばしたと思われる人物が、何かを話しかけている。


 ‎…女の子?10歳くらいか?いや、東洋人は若く見えると聞く。仕草や服装からして、12〜13歳が妥当だろうか。


[…!こっち!]


 何を思ったか、その子は俺の手をつかむと、ぐいっとひっぱり、走り出した。くっ、結構力がある!


「おい、あっちだ!」


 通路の奥の方から、3人ほどの男達がこちらに走ってくる。その後ろには、あのレイラもいる。ここまでくると、とても現地協力者には見えない。


[早く!急いで!]


 荷物を置き去りにしたことと、女の子の引っ張る力が強かったことから、男達からどんどん離れていく。空港を行き交う人々もするりとすり抜けて、俺達はあっという間に出口に近づく。



[はー…。もう大丈夫かな?]

「はあ…はあ…。なんなんだ、あいつら!」


 いや、予想はつく。あいつらもマフィアの構成員か協力者なのだろう。堂々と刑事のフリをして近づいてくるあたり、プロの専門集団かもしれない。


「まだよくわからないが…。君のおかげで助かったよ。[ありがとう]」

[どういたしまして!]


 俺が喋れる日本語は[ありがとう]だけだ。しかし、どうしたものか…。

 ん?女の子が、俺のポケットの膨らみをちょいちょいと指差している。携帯端末か?

 ‎携帯端末を取り出し、画面表示させると、


[<私の名前は『リン』!喋ってること、わかる?>]

「おわ!?」


 女の子が喋ると同時に、携帯端末の画面に文章が表示される。これは…FWOで見た簡易翻訳モジュール?

 ‎いや、待ってくれ!これは現地用の官給品だ。VRサーバ並の性能などないし、そんなソフトウェアを入れた覚えもない!


[<そんなに驚かないでよー。このヘッドセットとの組合せで、これくらいはできるよー?>]


 そ、そうなのか?確かに、この子…リンの頭にはカチューシャ型のヘッドセットが装着されている。新型なのだろうか、VRだけでなく、簡易ARで各種情報を見聞きしているのかもしれない。


 ‎…はて、このリンって子、どこかで見たことがあるような…?


[<それで、これからどうするー?警察に行く?>]

「そうだな…。荷物を取りに戻ると逆に危険だし、このまま街中に連れていってくれないか?」

[<うん、わかった!私、見送りに来ただけだから、これから帰るところだったの。行きたいところに案内するよ!>]

「あ、いや、危険だし、どこか待合せできるところまででいいから」

[<じゃあ、こっちね!>]


 そうして俺は、このリンという子と一緒に、空港から街中に移動することとなった。

後編は1時間後に掲載される予定です。

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