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EX-45 AF「リーネ14歳、ピチピチの中学生です!」(2/4)

「はあ、ようやく電車に乗れる…」


 ロールプレイには関係ないから、時刻表検索やらはヘッドセット経由である。公衆回線がいい感じに使えるのはありがたい。


「カード入れに入れたまま…」


 ピッ


 券面を見せないよう、IC乗車券も兼ねるFWO会員証で改札を抜ける。よし。


『電車が到着します、黄色い線の内側に…』


 電車に乗る。休日だからなのか、割と空いている。あっさり座れたよ。ん?平日の方がこの時間帯は空いてるんだっけ?電車はあまり使わないから、よくわからないなあ。


 ガタンゴトン、ガタンゴトン、…


 車窓もたまに見ると、家とか家とか家とか…この辺は、田園風景はないか。旅の趣はあまりないかな。街中でも、こないだパリのカフェに向かう時に乗ったトラムは…。


「あ、あの…」

「はい?」

「隣、いいですか?」

「ああ、はい、どうぞ」


 途中の駅で乗車したらしい男の子が、私の隣に座った。年は…中学生くらい?つまり、私の見た目と同じくらいだ。繰り返す、私の見た目と同じくらいだ!ビバ、女子中学生風!


 ガタンゴトン、ガタンゴトン、…


「あの、君、隣の市に住んでるの?」

「あ、うん」

「何中?」


 ああ、やっぱり中学生に見えるんだ!私の肉体年齢くらいだと、むしろ怒ったり悲しんだりする質問だけど、私は今大喜びだよ!年上に見られたような、若く見られたような、そんな気持ちがごちゃまぜになってるよ!なにこれ。


「えっと…」


 とりあえず、通っていた自宅最寄の中学校を答えた。リーネ・フェルンベル14歳、ピチピチの中学生です!みたいな。ロールプレイというよりは、素性を誤魔化している感じ?ひゃー、これは初体験かも。


「そうなのか!僕、○○中なんだ!」

「そっか、さっき乗ってきた駅の近くだね」

「知ってるの!?」

「うん、まあ。親戚の子が通ってるんだ」


 うっそでーす、たった今、ヘッドセット経由で検索しただけでーす。この方が、話が弾むよね?


「これから、どこに行くの?」

「ん?あとふたつくらい先の駅の近くにある、ショッピングモール」

「ほ、ほんと!?ほんとに!?」

「う、うん」


 なに、私がひとりでショッピングモールに行くようには見えないの?やっぱりちびっ子扱いなのかなあ。ぐっすん。


「そ、それじゃあ、それじゃあ…!」

「?」

「今日一日、付き合ってくれないか!?」


 …はい?



 目的の駅に到着して、ショッピングモール…に行く前に、駅の待合室に移動して話を聞く。


 須藤(すどう)まことくん、14歳。生徒手帳まで見せて素性をはっきりさせてくれた。

 ‎昨日、学校で、クラスメートの男子と彼女自慢となったそうな。


「ああ、はいはい、つい彼女がいるって言っちゃったのね?」

「なんでわかるの!?」

「同じ学校だとすぐバレそうだから、つい彼女は他の中学に通ってるって言っちゃって」

「なんで…」

「で、ショッピングモールでダブルデートだーってことになったと」

「はい…」


 はっはっは、テンプレテンプレ。

 ‎ちなみに、話している間の『観察』から、この男の子…須藤くんが、おかしな演技をしていないことはわかっている。仕事でよく使う技術だが、これも結局『現界』能力のひとつなのだろう。FWOの魔法で言う『看破』かな?


「うん、わかった。今日一日、彼女のフリをしてあげる」

「ほ、ほんと!?ほんとに!?」


 それはさっきも聞いた。


「普通こんなこと、会ったばかりの見知らぬ人に頼んだりしないよね?だからさ、必死だってわかったんだよ」

「そ、そんなに、必死に見えた?」

「うん、すごく」


 クスクス笑う、私。演技でもロールプレイでもないよ?いやあ、かわいいなあって。

 ‎あーあ、実くんや健人くんも、これくらいかわいければ…ああ、そっか、奴ら、イケメンだよ。イケメンはあれか、それだけで妙な自信が出て可愛げがなくなるのか。ヘタレのくせに。ヘタレのくせにっ。


「…」

「ん?どうしたの?あ、ごめんね、笑っちゃって」

「…!あ、いや、謝ることないよ!その…」

「なに?」

「…えっと、笑顔が素敵だなあって…」


 …

 ‎……

 ‎………


 ひゃああああああ!?


「あ、や、え、えええ!?」

「ご、ごめん!会ったばかりの君に、こんなこと…」

「いやいやいや、あなたこそ、謝ることないよ!その…」


 …うん、正直に言おう。


「その…嬉しかったから。『素敵』なんて、言われたことなかったから」

「嘘!?そんなにキレイなのに!?」

「え、あ、うん…」


 かわいいとかどうとか言われたことはあったけど、『素敵』はなかったよ!あ、真面目とか誠実とかはあったよ?でも、とにかく『素敵』はなかった。ましてや、『笑顔が素敵』だなんて!!

 ‎ああああ、私たぶん今、顔真っ赤だよ!頬に手を当ててもちょっと熱く感じるくらいだし!え、ええと、どうしよどうしよ!?落ち着かないよ!?おかしい、美樹と普段 (ぴー)とか(ぽー)とか下ネタ話している私が、ここまで…!?


「…」

「…」

「えっと、そろそろ…」

「あ、う、うん、よろしくお願いします…」


 ナニコレ。まるで、告白されてOKした直後のような雰囲気ではないですか。経験ないけど。経験ないけど!

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