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EX-33 AF「ウチの両親、やっぱりとんでもなかった…」

今明かされる、この作品最大の謎…!(おおげさ)

「世間一般には秘匿。だから、こうしてロールプレイは続ける」

「そっかー。でも、FWO内でもリーネは『リーネ』って呼ぶね!」

「むしろ、自然」


 FWO魚屋本店で刺し身をつつく。しばらく避けていたんだけど、まあ、今回はしょうがない。ミッキー高…美樹との『リーネ・フェルンベル以後』の初打合せみたいなものだから。

 いつも通り、佐藤春香アバターのリーネとケインとしての私、ミリビリ姉弟という集まりだ。実くんの『上司』/釣り師アバターはいない。避けられた?美樹といじめすぎたかな。


「そっか、FWO内ではある意味何も変わらないんだ。そのアバターの姿でも『リーネ・フリューゲル』だし…あれ?『フリューゲル』?」

「ちょっと紛らわしいかもしれないね。まあ、新しく意味付けるとしたら、『神剣フリューゲル』からとってつけた名字相当、ということになるかな」

「なるほどなあ。…っていうか、リアルのリーネ(・・・)先輩ってさ、むしろケインに近くね?」

「ああ、そうか、そうよね!気軽に声をかけてくるし、あれこれと世話焼きだし」


 世話焼き?リーネ・フェルンベルとしての本来の私が、世話焼きってこと?


「あ、リーネはそれがあるかも!というか、『春香ちゃん』としてもそうだったよね。働き者だし!」

「新入社員にも優しいキャリアウーマンってイメージだね!あたし会社勤めしたことないけど!」


 なにこの外堀を埋められていく感じ。私も会社勤めしたことないけどさ。今も昔も。

 ああでも、研究室の後輩とかはよく指導したなあ。あの博物館のような仕事も結構やってたし。

 そういう意味では、いろんな人と関わってきたけど…どれもこれも『公式』だったなあ。


「ん、リーネのその感じ、頭の中であれこれ喋っている時だね!ケインくん、どうぞ!」

「そうきますか。男性アバターを通してこういうことを表現するのはなんだけど…」


 かくかくしかじか。


「確かに、お仕事なら『プライベート』ってことはないしね。今はFWOのおかげで楽しめてるよね!」

「うん。昔は、なかったから」

「だからこそ、リーネとしては作り出そうとしたのかもしれないね、仮想世界技術を」


 あとは、まあその…。


「ほらほら、ちゃっちゃと喋る!リーネとしてもケインくんとしても、どちらでもいいから!」

「今は両親と、毎日のように、過ごせるから」

「それとね…」


 リーネとしても、忙しい両親やおじい様と過ごしたかった。だから、離れ離れの家族が一緒に過ごせるよう、フルダイブ技術の改善も併せて進めたんだと思う。ただ、リーネの家族としては、結局叶わなかった。残念だけど、しかたがない。


「ということだから…って、うわっ」

「「「(ToT)」」」

「転移型通信路の、火星での活用も進んでいる。少しずつ、良くなっている」


 なんでもかんでも、急いで実現する必要はない。みんなで、着実に歩みを進める。それが重要なんだと思うよ?


「そう、そうよね!だからこそ、『コアハート』はみんなで作り上げていきましょう!」

「だな。俺も、『コアハート』をベースにエリア構築を進めてみるか。俺の『現界』能力も、せっかくだから高めていきたいしな」

「ビリー、その意気よ!」


 おお、健人くんがようやくまともにやる気を出したよ!

 そういう意味では、『現界』能力発現も悪くはないな。


 あ、そう言えば。


「そう言えば、他のプレイヤーの『現界』能力の発現状況は調査できてるかい?」

「んー、他は聞かないわねえ。ほら、あたしのリアルでの剣技を見てびっくりしていた大学の友達、その多くもFWOプレイヤーの戦闘職なんだけど、同じようなことをしようとしてできなかったみたい」

「少なくとも『影響の影響』はないみたいだよな。やっぱり、先輩と長らく関わることが必要なんじゃね?リアルにしろ、VRにしろ」


 結局、そうなるか。

 私のオリジナルの能力自体が未だ謎だけど、…いや、『魂に宿る能力』ということで、ひとつだけ心当たりがあるんだけど、『現界』能力の無闇な拡大はとりあえず心配なさそうだ。


「…ねえ、リアルでの関わりも影響があるんならさ、春香の御両親って…」


 あ。


「10年以上同居してるってのもあるし、あと、超加速時間の『学園180分コース』にも参加してたし…」

「学園…!?」

「どうしたの、リーネ?」


 まさか、伊藤先生も…!?



 ということで早速、大学の伊藤先生の部屋に突撃。

 まずは、私が中身アラフォーであることを伝える。リーネとしての自我認証データも持っていったよ!


「…君には、何度驚かされたかな。まあ、私にとっては納得だがね」

「そうなんですか?」

「私と分析処理の話をする時は、『リーネ・フェルンベル』だったんじゃないのかね?」


 ああ、なるほど。


「そうかもしれません。大学での研究活動の雰囲気に、あてられたんでしょうか」

「そうそう、もしかすると、君の『ロールプレイ』、言語体系の観点で分析させてもらうかもしれない。新しい理論に基づく手法を急に思いついてね」


 うわあ、噂をすればなんとやらだー。

 さっさと話しておこう。便利な表現、かくかくしかじかまるまるうまうま。


「そう、なのか?それは…逆に、残念だな。特別な能力で生み出されたのなら」

「残念に思うことはないと思いますよ?能力があるからといって、好きなものをなんでも生み出せるわけではないのですから」

「そういうものなのかい?」

「渡辺 凛を、どう思います?」

「…なるほど」


 ふむ、反面教師にちょうどいいな。彼女が初めて役に立ったよ!



 鈴木のお爺様との情報交換を兼ねて、鈴木邸に。

 ちなみに、お爺様は『学園180分コース』には参加しなかったし、私との会議の累積時間はたかが知れているということで、『現界』発現の様子は見られず残念がっていた。…会議が増えたりして。


「それで、御両親の方は?」

「いろいろ聞いてみたんだけど、何も心当たりがないみたい」


 まだ私のことちゃんと話せないから、詳しく聞き出せないというのもあるんだけど。


「でも、なんかあるはずなんだよなあ。最近、そんな気がしている」

「最近?健人くん、ウチの両親には2度ほどしか会ってないよね?」

「ああ、うん、姉貴やお爺様の話も聞いて、なんか引っかかっていて…」


 あら、健人くんがこんなに考えているなんて珍しい。


「…!そうか、『普通』ってことだ!」

「何言ってんの健人?明日のデート、キャンセルしちゃうわよ?」

「なんでだよ!いやほら、ふたりでずっと不思議に思ってたじゃないか、ここまで有名な先輩の家が、なぜこうも目立たないのかって!」

「ああ!えっと、それFWOの魔法スキルにもあったわよね、確か…『認識阻害』!」


 え、それって、精神操作系魔法でも最上級の広範囲スキルじゃなかったっけ?

 いや、ちょっとまって、両親がFWO始めたのって今年始め頃だったよね?私の肉体調整とでもいうべきものと同様、VRに関係なく何年も前から無意識に『現界』能力が発動してたってこと!?


「だいたいさ、SOEとかが先輩の技術や能力を利用しようとしてるんなら、まず自宅を突き止めるものだろ?お爺様を騙そうとしたあいつ、それすら知らなかったよな?」

「それじゃあ、その『認識阻害』、御近所どころか、意図的に探ろうとするマスコミや諜報組織にすら『普通』に見せるようなものだっていうの…!?」


 ウチの両親、やっぱりとんでもなかった…。

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