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EX-30 AF「終焉と再生のエトランゼ」(3/4)

 火星での不正侵入から一週間。

 さすがに、その程度の期間ではSOEも何かしかけてこないだろう。


 そもそも、あのオリジナルの自我認証プログラムは、起動しようとしても『何か』の認証待ちになるだけである。試作ゆえに、『何』の認証を待っているかは、作った私しかわからない。

 その状態で使う目的といえば、そのまま何かのシステムに直結してロックさせることくらいだろうか。しかし、どうやってロックが解除されるかわからない認証プログラムを、何に使う?

 また、自我認証プログラムのオリジナルから『リーネ・フェルンベル』の自我認証用データを抽出するには、その自我認証プログラムを起動する必要がある。心配することはなかったのである。


 そう、思っていた。


「鈴木会長は、いつ月面に?」

「もう、まもなく。あ、今、『転移門』を抜けた」


 本日は月面で、鈴木のお爺様とフェルンベル総裁の会談。月と火星の、事実上のトップ会談だ。鈴木のお爺様は普段地球なので、転移門が利用されるようになっても、まだ一度も会談らしい会談をしていなかったのだ。転移型通信路の実験では多少話をしていたのだが。

 私と田中さん、高橋さんが先に月面に向かい、会談場所のセッティングを行う。なぜ私達が準備をしたかというと、その方が手っ取り早いからだ。というか、私達3人もオブザーバー参加である。もっとも、本当の理由は、アレ(現界能力)の件を非公式に伝えるためなのであるが。


「どうぞ、こちらへ。フェルンベル総裁は既に会場におられます」

「よろしくな、春香さん。ああ、すまんが、美里と健人も頼む」

「はろー」

「どーも」


 …記者団を会場の方に待機させておいて良かったよ。転移門なら、ひとりでも最大人数でも同じコストだからって、ちゃっかり付いてきたっていう。


「フェルンベル総裁の方は、ひとりかね?」

「はい。約一名、月に来たがっていた者がいましたが」

あの者(渡辺 凛)は、もうしばらく火星に閉じ込めておいた方がいいだろうな…フェルンベル総裁の前では言えんが」


 いえ、総裁(おじい様)も同じことを考えてらっしゃいますです、はい。


 会場の入口に到着すると、フェルンベル総裁が立っていた。周囲は記者が取り囲んでいる。


「こうして直接会うのは何年ぶりかの?」

「一度地球に戻った時に会っているから…6年ぶりだろうか」


 簡単なあいさつの様子を記者団が撮影し、あれこれと質問してくる。…うん、今のところ不審な様子はない。

 既におわかりかもしれないが、フェルンベル総裁もSOEの初期メンバーである。国際宇宙機関で要職を勤めていながら、いや、勤めていたからこそ、過度な国家間競争に異を唱えていたのである。しかし、現SOEは火星も標的としている。地球ではないから。

 そういうわけで、万全のセキュリティで臨む必要がある。私がここにこうしている、もうひとつの理由である。


「佐藤春香さん!あなたからもひと言!」

「お二人とは何を話されるのですか?」

「私は仕事の都合上、既に何度もお会いしています。今回は、あくまでオブザーバーです」


 と、いうことにしておく。間違いでもないしね。



 記者団への回答を一通り終えた私達は、会談場所の会議室に向かう。なにせ2名+3名しかいない。ほとんどVR研の会議室でのノリである。ちなみに、美里と健人くんは月面見物に向かった。記者団にとっ捕まってなければいいが。


「SOEは、本当にどうしたものかの…」

「言葉でどうにかなる相手ではなくなったからな。捜査当局任せだろう」

「当局か…。春香さん、何か進捗は聞いているかね?」

「だいたいは伺っていますが、組織形態の問題で、雲をつかむような状況のようです」


 SOEには、どうやら『本部』がないらしい。各部門が本部を持っているような状況で、信条やターゲットだけは共通、という体制のようだ。とはいえ、部門同士の衝突を避けるため、ある程度の情報交換はしているらしい。その情報の多くが、私の動向に関するもの、と聞いた時には悶絶した。なんでよ。


「火星に侵入したのは『ロールプレイ戦術班』のひとりだったようだが」

「ストレージ装置に不正アクセスしたのだから『別働隊』かと思ったのですが」

「妙に、ちぐはぐだのう…」


 私の動向をやりとりする前に他にやりとりするものがあるんじゃなかろうか。いやまあ、ちぐはぐなままなのはこちらとしても助かるけど。


 といった感じで会談を進めていると、


「会長、総裁、緊急事態です!」


 部屋の外から、そんな声がかかる。なにか、あった!?

 私は、ヘッドセットから月面の公衆ネットワークに接続し、情報をスキャンした。


「…転移門が、占拠された?」

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