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EX-28 AF「終焉と再生のエトランゼ」(1/4)

「ダメ」

「どうしてー!」

「一度使うと、24時間使えなくなるから」

「そうだった…」


 美里が『ひさしぶりに大学の友達に春香を自慢…一緒にお話したい』ということだったので、今度は、美里達の方が私の通う大学にやってきた。美里はともかく、お友達は初めてということで。なんか、来るのに時間かかってた。乗り慣れないバス→電車→バスだったらしい。

 でまあ、どこから聞きつけてきたのか、美里が『神剣フリューゲル』を出して剣技して!とのたまった。冒頭の会話はその続きである。


「剣道サークルがある。そこで竹刀を借りて、振る程度なら」

「それでいい!やって!」


 なんでもいいのか…。

 しかし、大学生にもなって、しかも、女子大生がこういうのに興味があるのは…いや、偏見か。FWOプレイヤーに大学生多いし。


「あれ、春香ちゃん、背、伸びた?」


 …おおう。私自身、ごく最近母親に指摘されてようやく気づいたのに。


「あ、ホントだ!あたし、春香とはリアルでも割と会ってるのに、なんで気づかなかったんだろう…」

「よく会ってるからこそじゃない?少しずつ成長しているなら、気づかないものよ?」

「そんなものかな…」


 あらら、美里がなんかショック受けてる。なぜかはよくわからないけど、仕事でもっとリアルで会ってる高橋さんや田中さんも気づいてないっぽいから、たぶん、お友達の言う通りだと思うよ?



 剣道サークルの部室に到着し、竹刀を借り受ける。サークルの部長さんに握手を求められた。まあ、いいんですけど。あ、『手を洗わない』というお約束はなしね。なんでしょんぼりするの。

 格技場まで行くまでもないので、部室の近くの屋外空きスペースで剣技を見せることになる。剣道サークル以外にも、ギャラリーが増える。わらわらわら。これもまあ、いい。


「ねえ、春香ちゃん?ビデオ撮影していい?」

「ごめんなさい、それはダメ」


 まだちょっと版権問題が、ね?


「ふんっ!」

「あ、それ、ブルードラゴン討伐の時の動きだ!」

「はっ!」

「きゃー!『ハルカ』の剣技だ!お姉様ー!」


 ハルカも私ってことをバラしたからね、せっかくだからこちらも。

 でも、お姉様って。あと数年、期待しないで待っててー!


「いやー、FWOではよく見てたけど、リアルでも堪能したわー」

「そういえば、美里は剣士はもうやらないの?ここで聞く話じゃ、ないけど」

「『ハルカ』の剣技で思い出したの?そうね、サブアバター作ってみようかしら」


 そういえば、美里も健人くんもFWOでサブアバター作ってなかったっけ。メインアバターの名前を変えただけだったんだよね。


「ねえ、あたしにも竹刀貸して?」

「いいけど」


 何本か借りてくれば良かったかな?まあ、剣で戦うわけじゃないか。

 美里が、竹刀を片手で持って構える。さっきの私もそうだったけど、竹刀≒剣道のイメージだと不格好だよね。

 この構えは…基本技だな。FWOで言う『【剣技】フラッシュ』だ。


「こんな感じかしら…ねっ!」

「「「「…!?」」」」

「…え!?」


 …驚いた。周囲も、驚いていた。そしてなにより、美里が、驚いていた。


 完璧だったのである。

 前のゲームの、基本技としての竹刀の、そして、美里自身の、動きが。


 これは、まさか…!?



 FWOエンターテインメント(株)の、モーションキャプチャーシステムのある部屋。

 私が初めて元FWO本社を尋ねた時にやったことを、美里にもやってもらうことにした。

 田中さんと高橋さん、健人くんにも連絡をとって、来てもらっている。


「えっと…鞘から抜く、基本技、鞘に収める。鞘から抜く、基本技、鞘に収める。…うん」


 美里が持っているのは、私が自室に設置してある『神剣フリューゲル』と同じ、模擬剣とその鞘。


「はい、ではお願いしまーす!」


「…!!」


 ひゅんっ

 ぱちん!


「できた…ぶっつけ本番、だったのに…」


 前のゲームの基本技だったので、私がやった時と同じ『フラッシュ』とは型が違うが、いずれにしても、ゲームそのものの動きだった。そう、とても普通の女子大生ができるような動きではない。


「…どう?」

「春香さんほどではありませんが、あのゲームの基本技の動きとの重複率が9割程だそうです」

「そう。間違いない、限定的だけど、『現界』能力が発動している」


 私や渡辺 凛ではなく、美里に。


「これが…」


 美里は、なかなかに複雑な顔をしている。まあ、気持ちはわかる。私も、複雑な気持ちだから。


「…そっか、これは、単純に喜べないね。…ちょっと怖いわ」

「うっかり『現界』する、ということはない。そこは、安心して」

「ああうん、それはわかる。相当意識しないと発動しないね」


 理論や理屈に従い、現実での有り様(・・・)を強くイメージして注ぎ込む、それが『現界』能力。

 実のところ、これまで『何に』イメージを注ぎ込むのか、はっきりとわからなかったのだが…。


「高橋さんと田中さん、ふたりも試してみて」

「え!?私、FWOで剣を振ったことないよ!…もしかして、包丁?」

「私は、釣り竿ですか…」


 そういうことデス。

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