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EX-23 AF「君が俺と恋人同士になれば、いつでも監視できるぞ?」

小ネタSSに限りなく近いAFです。

「お願いします!師匠!」

「わかったから、その呼び方はやめて」

「なぜですか!俺が弟子なら、あなたは師匠でしょう!」


 いや、そもそも、その弟子という表現がアレなんですけど。


 ‎以前、(佐藤春香)が危ないところを助けた、国際警察機構の捜査官であるクロイゼルさん。鈴木のお爺様に頼まれて空港システムを【運営No.00】で調査したら誰かが既に不正侵入していて、ヤバいと思って空港に直行したら…というのが経緯の概要だ。

 ‎それ自体は特にどうということにはならなかったんだけど、助けた時に発動(・・)したリーネのロールプレイにいたく感動したらしく、たまにFWO日本サーバに来ては戦闘のアドバイスを求めてくる。私もやぶさかではないので対応しているが、『師匠』はやめてほしい。特に、フランス語では。


「とにかく、依頼は受ける。渡辺 凛やSOE絡みでなくとも、私が必要と思うなら」

「ありがとうございます!」

「とりあえず、その『変装怪盗』の詳細を。ああ、某小説の登場人物は知っているから」


 特に、今もなお続いている日本の二次作品は。『ばかもーん!そいつが』とかね。両親が大好きなのよ…。そういえば、渡辺 凛も好きだって言ってたなあ。血は…いや、よそう。血じゃないし。


「詳細?先程お話したことが全てですが」

「まだ、肝心なことを聞いてないんだけど」

「なんですか?」

「その『変装怪盗』の、本名」


 そう言った直後、クロイゼルさんの表情が変わる。…へえ、結構落ち着いてるな。


「…いつから?」

「最初から」

「質問を変えよう。なぜ、わかった?」

「あなたが、クロイゼルさんのフリ(・・)をしているだけだったから」


 既におわかりのように、目の前にいるのはクロイゼルさんではない。となれば、正体はただひとり。話題の『変装怪盗』とやらだ。


「答えに、なっていないと思うが」

「あなたは、クロイゼルさんの知り合いではない。第三者の視点で知った事柄だけで、『ロールプレイ』ができると思わない方がいい」


 そんなものは、しょせん演技。完璧に変装していたとしても、本人から遠く離れた存在だ。


「…なるほどな。いや、すまん。純粋に、君の『ロールプレイ』に興味があって近づいた」

「それで、本名は?」

「親に付けてもらったという意味では、『レオン』が名前だな。苗字やミドルネームは、まあ、コロコロ変わるような人生だった」


 まあ、そういうこともあるだろう。


「わかった。では、レオンさん、私にこれから何をしてほしい?」

「…俺を、警察に突き出さないのか?」

「それは、いつでもできる。それに、先程の話が本当なら、あなたはいつでも脱獄できる。誰かのフリをして抜け出して」

「君の監視からは逃れられないようだがな…」


 いやいや、私がいつもこの人を監視し続けるわけにはいかないでしょうに。


「君が俺と恋人同士になれば、いつでも監視できるぞ?」

「わかった。これから警察に連れて行く。好きなだけ脱獄するといい」

「即答かよ…」


 いいから、さっさとしてほしいこと言いなさいよ!


「俺にはマネできないとわかったからな、特には…ああ、そうだ。こうして君と話していても、周囲が何も言わないのはなぜか、その理屈を教えてくれないか?」


 そういえば、あの引きこもりプレイヤーにはそこまで詳しくは解説しなかったっけ。


「私が私であると認識するには、いくつかのプロセスが必要。少なくとも今の私は、知名度を前面に出した立ち居振る舞いはなにひとつしていない。する必要がないから」

「ここまで有名になって、する必要がないからしない、と割り切れるものなのかね…ああいや、だからこそ君なのだろうな」


 勝手に疑問に思って勝手に解釈して勝手に解決した、変装怪盗レオン。楽でいいか。


「お待たせしました、師匠!…えっ、俺!?俺がいる!?え!?え!?」


 本物のクロイゼルさんがようやく到着。どこでトラップに引っかかってたのかな?


「レオンさん、今日のところは大人しくクロイゼルさんに連行されてもらえないかな」

「ああ、そうするよ。今日の借りは必ず返す」

「貸した覚えはない。忘れていい」

「つれないな。まあ、だからこそ君なのか」


 もしかして、さっきから私を口説いているのだろうか?いや、ただの冗談だな。同じ顔がふたつ並んで口説くも何もない。


 一応、すったもんだあった後、クロイゼルさんが怪盗レオンを連れて行く。私に解決のための相談をしようとしたら、何段階も飛ばして犯人を逮捕できるんだ、クロイゼルさんにはこれ以上ないお手柄だろう。


「さて、これから…」

「あ、あの、佐藤春香さんですよね!?サイン下さい!」

「あ、俺にも!」

「私にも!」


 しまった、同じ顔したふたりを相手にしてたら、さすがに目立つか。せっかくこれから、本場ホワイトソースを使ったシチューを食べようと思ったのに。


 ‎ここは、パリのとあるカフェ。『転移門』がパリ近郊に設置されたので、自我認証システムの追加組み込みの指導を兼ねて、月面経由でここに来たのだけれども。クロイゼルさんとFWOで落ち合う予定を変更して。

 ‎再転移までのエネルギー充填に何時間もかかるので、用件が済んだら観光でもして過ごそうかと思ったらこれである。まあ、アレだな、おしゃれなカフェとかは『普段の佐藤春香』には合わないということだな。


「あの、すみません、サインはむやみにしないことになっていますので…」


 ふたり分のコーヒー代を支払って去ろうとしたら、既にテーブルに現金で置いてあった。怪盗レオン、いつの間に。カード派の私にはできない芸当だ。いや、そういう話ではないか。


 さて、これから現地のネットカフェにでも行って、FWOフランスサーバで攻略とスローライフでもしてみようか。リーネとケインのアバター情報の転送が面倒だけど。

『最初から』が春香の定番になりそうだな…。

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