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EX-21 AF「花も恥じらう15歳の乙女ですわ!」(前編)

瑞乃はTSFのイメージですかね。そういえば、UMRもロールプレイ凄いな…(時事アニメネタ)。

 わたくしの名は、浅羽瑞乃(あさばみずの)。今年中学3年の、花も恥じらう15歳の乙女ですわ!

 ‎そして、お父様は宇宙開発事業で世界的にちょー有名な、アサバ産業の社長!すなわち!わたくしは社長令嬢ですわ!ほーっほっほっほ!


「あの、瑞乃お嬢様…?」


 あら、いけませんわ、ワガママな悪役令嬢のような高飛車な態度は。こういう時は、アサバ産業よりも巨大な企業グループ『ソル・インダストリーズ』の御令嬢である、鈴木美里様を思い出して、と。

 ‎宇宙業界の懇親パーティでたまにお見かけしますが、美里様は本当に気さくな方ですわ。なんでも、VRゲームを通じて知り合った庶民的なお友達が多いとか。弟君の健人様とも仲がよろしくて、うらやましい限りですわ!


「瑞乃お嬢様、そろそろ登校のお支度を…」


 っと、そうでしたわ。今日から新しい学び舎ですのに、わたくしったら。急いで紅茶を飲み干さないと。ああでも、今日のアールグレイも素敵ですわ!本当に、この者を雇って正解でしたわ。お父様、グッジョブ!…グッジョブって言葉、こういう使い方で良かったかしら?いつか、美里様に確認いたしましょう。


「お嬢様、毎日それで疲れませんか…?」

「何を言ってるの、鏑木(かぶらぎ)!朝食時の心静かな想いは一日の心の活力となるのよ!」

「よくわかりませんが、ダダ漏れている言葉は、とても心静かとは…」


 あら、いけない。わたくしったら、口に出していたようですわね。ほほほ。


 ちなみに、先程からわたくしに語りかけていますのは、2週間ほど前に新しく雇われた我が家の執事兼秘書の、鏑木(かぶらぎ)正師(せいし)。普段は家政婦と共に家事をこなしつつ、運転手やお父様のお仕事の補助などもしている。年は30代前半とのこと。

 ‎今日から通う学校も、この(邸宅)から車で数十分という場所にあるため、鏑木の運転する車で登下校することになりますわ。既に一度乗せてもらったことがありますが本当に快適で、やはりお父様、


「はいはい、グッジョブですね。さ、お嬢様、紅茶も飲み終えているようですので、学校に参りましょう」

「鏑木、時々執事らしからぬ物言いとなりますわね…。ところで、お父様とお母様は?」

「旦那様は既に、御自身の運転する車で会社に向かわれています。奥様も同乗されておりました」

「そういえばお母様、旧友に会いに行くと昨夜おっしゃってましたわね…どなたなのかしら」


 お父様はもちろん、お母様も様々な業界で著名な方々と交流したり社会活動をされていると聞いております。どのような内容か伺ってもわたくしには難しくて、あまり理解できていません。もっとお勉強をがんばらないと!


「車は既に玄関に待機させています。本日は転入初日ですので、学園の職員室までお連れいたしますね」

「わかりましたわ!よろしくですの!」



「(ひそひそ)まあ、あの方が、あのアサバ産業の…」

「(ひそひそ)遠くから通われるとはいえ車通学とは、うらやましいですわ…」

「(ひそひそ)何か輝いていますわね。私達と同い年とは思えない気品も感じますわ」


 黒板に氏名を書いただけで大注目ですわ!アサバ産業の社長令嬢として、恥ずかしくないあいさつをしなければ!


「本日より皆様の御学友となります、浅羽瑞乃と申します。どうぞ、よろしくお願いいたしますわ!」


 パチパチパチパチ!


 うん、問題ないようですわ!以前通っていた学校と同じく、著名人の御令嬢が多く通う学び舎。中等部とはいえ、人物評価が厳しい方がおられるとも聞きます。この調子でがんばりましょう!


「それでは、浅羽さんは加藤(かとう)さんの隣の席ね。加藤さんはクラス委員ですから、この学校のことで何かわからないことがあったら相談して下さい。加藤さん、よろしくね」

「は、はい、わかり、ました」


 担任の先生が紹介したその生徒は、随分とおとなしい感じの、小柄な少女です。よし、初めが肝心ですわ!


「あらためまして、浅羽瑞乃と申します。よろしくお願いいたしますわ!」

「加藤、春咲はるさといいます。よろしく、お願いします」


 本当に、大人しい子ですわね。でも、丁寧な物腰ですし、仲良くなれそうですわ!

 ‎…はて、この娘、どなたかに似ているような…どなただったかしら?


「あ、あの、何か?」

「いえ、なんでもありませんわ!それよりも春咲様、お昼休みに学園を案内していただきたいですわ!」

「ふ、ふぇ!?『様』なんて…!それに、突然、下の名前で…」


 あら!?早速、やってしまいましたの!?お父様に、いつも『お前はせっかちすぎる』と怒られていますのに…。


「も、申し訳ありませんわ!前の学校では、これが普通でしたもので…」

「い、いえ、構いません!ただその、びっくりしただけで…」

「そうですの!では、春咲様もわたくしをぜひ『瑞乃』と呼び捨てで!」

「え、ええ!?そ、その、できれば『瑞乃さん』で…」

「よろしいですわよ!」


 やりましたわ!早速、仲の良いお友達ができそうですの!


「と、ところで瑞乃さん、なぜこの時期に、転校を?」

「それが、よくわかりませんの」

「…へ?」

「お父様は『お前の安全のため』と仰るのですが、詳しいことは教えてくれないんですの。鏑木は『えすおーいー』がなんとか、と言っていたような…。春咲様、『えすおーいー』が何か御存知ですか?」

「さ、さあ…」


 賢そうな春咲様も知らないことを、わたくしがわかるわけありませんわね。これから、いろいろと学んでいきましょう!



 転入してから一週間。学園生活は順調ですわ!

 ‎鏑木の職務も更に磨きがかかって、最近は『瑞乃お嬢様は少し歩かれた方がいいですよ』と、学園から少し離れたコンビニから車に乗ることも…何か、騙されているような気がしますけど!


「春咲様、今日はどのメニューにいたしますの?」

「きょ、今日は、クリームシチューに、しようかな」

「まあ、素敵!クリームシチューはわたくしも大好物ですの!」

「そ、そう、なの。じゃあ、一緒に食べよ?」


 あー、春咲様って、ホントにかわいいですわ!小柄で大人しいけど、真面目でしっかりしていて。そういえば、美里様にも同じようなタイプの御友人がいるとか。春咲様と一緒にお会いしてみたいですわ!


「そ、そんなに私に、似ているの?その、鈴木美里さん、って人の、お友達」

「わたくしも、詳しくは伺っておりませんの。何か、言葉を濁してらっしゃるというか…。機会がありましたら、確認してみますわ!」


 春咲様は、美里様の御友人に興味津々の御様子。情報が入り次第、お伝えしますわ!


「そういえば、春咲様も、そのカチューシャを普段から付けてらっしゃるのね。わたくしとお揃いですわ!」

「え、あ、これは、あくまでファッションとして、だけど。瑞乃さんの、それは?」

「これは、お父様からのプレゼントですわ!付けていれば安心、とおっしゃってましたけど」


 お父様は何も言わなかったけど、あれですわね、『じーぴーえす』というものを使ってわたくしを守るためのものに違いありませんわ!


「でも、瑞乃さん、学園に慣れるの、早いね。もう、他のクラスにも、友達ができたんでしょ?」

「学園のエキスパートの春咲さんには、まだまだ遠く及びませんわ!」

「え、えと、まだ私も、転入して数か月程度だから…」

「え!?春咲様も転入生だったんですの?それで、クラス委員を!?」


 これは、びっくり!春咲様も転入生だったなんて!

 ‎なんでも、2学期制のこの学園では半年ごとにクラス委員を決めるらしく、後期から転入してきた春咲様が担当することになったそうなのだ。


「酷いですわ!?転入したばかりの春咲様にクラス委員なんて!」

「あ、ううん、私が、希望したの。クラス委員なら、学園のこと、早く覚えるかなって。担任の先生も、親切だったよ」

「そうなんですの…。ごめんなさいですの、酷いとか言ってしまって」


 あああ、また早とちりしてしまった!お父様に言えないことが増えてしまいましたわー!


「瑞乃さんって、真面目で誠実、だね。喋り方で、わかりにくいけど」

「ふえっ!?そ、そんなこと、ありませんわ!わたくしなんて、わたくしなんて…」

「…真面目で誠実な人が、損をする世の中、よね…」


 あら?春咲様の表情が、何か暗くなりましたわ。どうしたのかしら…。

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