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EX-18 SS「『田中 実です』『鈴木健人です』」

田中「…」

健人「…」

田中「なぜ、私達ふたりだけなんでしょうね」

健人「なんか『ある意味似た者同士だから小粋なトークが期待できるかも』って、作者が」

田中「小粋、ですか…。春香さんとならできそうなのですが」

健人「ていうか、俺達の接点って、その先輩だけですよね。どこが似てるんだろ」

田中「そうですね、よくわかりませんね」

健人「…」

田中「…」



健人「そういえば、田中さんって先輩のこと好きなんですか?」

田中「だから、違うと…。尊敬する、素敵な少女だとは思っていますが」

健人「それって、『好き』とは違うんですか?」

田中「違いますね。少なくとも、恋愛対象へのそれとは。そういう健人くんはどうなんですか?告白したことがあるんでしょう?」

健人「俺?あ、ああ、確かに告白しましたけど、でも、なんていうか…」

田中「あこがれ、ですか?」

健人「…わかりますか」

田中「ええ、まあ。私にも、似たような経験がありますから」

健人「先輩、あんなにちびっ子で大人しそうなのに、存在感がすごくて、何か深淵な雰囲気があって…」

田中「深淵…確かに、春香さんには底知れぬ何かがありますね。まあ、今はそれが何かはわかっていますが」

健人「わかってはいますけど、未だ理解できませんよ…何百年もたったひとりだなんて…」

田中「そうですね…」

健人「…」

田中「…」



田中「健人くんは、美里さんのことをいつから好きだったんですか?お姉さんとして以外に、ですが」

健人「いつからっていうか、物心つく前から好きだったような気がする。これも今となっては、なるほどなあって」

田中「最初から異性として意識していたということですか?」

健人「幼馴染と区別してなかったと思う。だから逆に、気づかなかったというか」

田中「きっかけは、やはり春香さんですか?」

健人「ですね。先輩のそれがあこがれなら、姉貴へのそれはなんなんだろうって」

田中「美里さんからのアピールもあったんでしよう?」

健人「そうなんですけど、最近はなんというか、アピールの矛先が…」

田中「ああ、それも春香さんですか」

健人「…わかりますか」

田中「美樹さんがですね…。美里さんほどあからさまではありませんが」

健人「先輩、とんでもなくモテますよねえ。老若男女関係なく」

田中「ですねえ。なのに、お付き合いするような相手がいないっていう。よくわかるんですが」

健人「俺もです」

田中「…」

健人「…」



健人「田中さんは、あの渡辺 凛って人と幼馴染だったんでしょ?俺、会ったことないけど」

田中「それが…『渡辺 凛』と名乗る彼女が、どうしてもあの『リーネ』と今でも結びつかなくて…」

健人「『リーネ・フェルンベル』でしたっけ。俺たちにとってはゲームの名前なんで違和感ありますが。しかも、ファーストネームは先輩のアバター名だし」

田中「私のせいですね。語感がとても良かったので、彼女に許可をと連絡を取ろうとしたしたら、連絡先が無効となっていて…」

健人「普通、個人番号まで聞き出せませんよねえ。連絡先が通じなくなって名前が代わってしまったら、身内か警察を経由するしかなさそう」

田中「フェルンベル総裁は既に火星でしたから、事務的なメッセージ交換で許可は得ていました。『リーネも問題ない』とあったのですが、名字を捨てていたとは…」

健人「もしかして、それも『結びつかない』理由ですか?」

田中「いえ、私も今の彼女に会ったことがありますが、雰囲気からして面影がまるでないのですよ。ちょっと派手というか…」

健人「昔のその人は『ハルカ』アバターに似てるんでしたっけ?」

田中「ああ、それは巫女装束の方が大きいですね。彼女の実家の神社で着ていたそれとそっくりで…。まあ、高速精密スキャンシステムを使っていたので当然なのですが」

健人「で、その巫女装束と先輩の性格の組合せにはなぜか結びつくと」

田中「ええ、なぜか…」

健人「そうですか…」

田中「…」

健人「…」



健人「高橋さんとは、どうやって知り合ったんですか?」

田中「FWOの運営会社を立ち上げた時の設立パーティでしたね。こじんまりとしたものでしたが、PRに協力してくれる電器店チェーンの関係者のみなさまもお呼びして」

健人「高橋さんって、もともと市内の電器店の店員さんでしたよね。それでそんなパーティに呼ばれるって、普通はないですよね?」

田中「いえ、立ち上げ時は系列企業の、本当に小さな子会社でしたから…その、他に来てくれそうなところがほとんどなくて…」

健人「そういえば、FWOが広く知られるようになったのって、正式稼働から1~2週間ほどしてからでしたね。俺達もその頃から始めたし」

田中「ええ。意気投合した技術スタッフと理想のVRMMOとして作り上げはしたものの、作り込みすぎて敷居が高くなってしまって。なので、ニッチ層を狙った堅実な運営を想定していたのですが…」

健人「でも、今のFWOって『鑑賞』プレイヤーが結構多いですよね?逆に言えば、大活躍するプレイヤーが定着しないと、堅実も何もないんじゃ」

田中「健人くん、FWOに関しては本当に分析・評価能力に優れていますね。ええ、春香さんが稼働初日から活躍してなかったら、FWOは半年ももたなかったと思います…」

健人「もし、先輩がFWOを始めてなかったらどうなってたんでしょうね、この世界は」

田中「もしかすると、あまり変わらないのかもしれません。春香さんなら、別の舞台で同じように活躍していたと思います」

健人「田中さん、やっぱり先輩のこと好きなんじゃ」

田中「あの、美樹さんの話だったのでは…」

健人「ああ、そうでしたね。なぜかいつもオチが先輩になってしまって…」

田中「そうですね、なぜなんでしょうね…」

健人「…」

田中「…」



健人「そろそろ、帰りましょうか。どこからどこに帰るのかわからないけど」

田中「小粋なトークとやらはできませんでしたが、なんとなく状況整理はできたような気がします」

健人「みんな、先輩絡みでしたけどね」

田中「そうですね…」

健人「…」

田中「…」

健人「それじゃ、失礼します」

田中「はい、ではまた」

「『鈴木美里でーす』『高橋美樹です!』」も考えてみたんですが、『春香かわいい!』『春香ちゃんすごい!』しか会話がなかったのでやめました。

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