EX-94 AF「今回、正式に『戦艦フリューゲル』と命名されました!」
EX-93の続き…ですが、すみません、ここで一旦更新を停止します。いやその、新連載の某母親が脳内で暴走しておりまして(ヒドい言い訳)。
首都圏の湾岸地帯。
その港のひとつに浮かぶ、クルーズ船。いやあ、なつかしいなあ。
「今回、正式に『戦艦フリューゲル』と命名されました!」
「そういえば、反重力技術の『現界』実験で飛ばして以来ね」
「FWOグループのリアルの保養施設としても使われたことがありましたが、高級リゾートVRの方がウケが良くて…」
そうなんだよねえ。いろいろと思い出深い船なので、私の預金残高をちょこっと減らしながら維持し続けてきたんだけれども。
「リーネが最初に『フェルンベル』の歌を歌った場所でもありますね…」
実くんが、しみじみという。ああ、そうだったねえ、『田中さん』。
ちょっと、いまさら『春香くん』とか呼ばないでよ?記憶を取り戻したから知ってるんだからね、元ネタのゲーム!
ひとしきり思い出を語らい合った後、さっさと本題に入る。いやだって、誠くんが寂しそうなんだもん。
「まず、『戦艦』とはついていますが、武器の類はありません!ハッタリ目的のピコピコ光線銃という名の主砲は残してありますが!」
「そういえば、アレの正式名称は『遠き鐘の音のフェルンベル』だったわねえ…」
『フェルンベル』の由来がわかった今となっては、恥ずかしいやら申し訳ないやら…。
「次に、アルファ・ケンタウリ星系群までの転移方法は、転移門方式ではなく、転移装置方式です!」
「つまり?」
「エネルギーを膨大に消費します!なので、渡辺 凛原案の小型核融合炉を積んでます!」
「「「ちょ」」」
うん、不安だろう不安だろう。
「なによー、文句あるの?」
あるに決まってるだろうが!ていうか、なんで渡辺 凛までついてくることになったのか。いみふめ。
「あくまで原案です!私が改良して、月や火星の辺境地帯で使っているものを更に改良しています」
「「「(ほっ)」」」
今回の行程の成否は転移や反重力の技術にかかっているからね。エネルギー問題の解決は必須だ。
「次行くね!生活環境は最低限のものを用意しました!食事は練りチューブ方式です」
「「「えー!?」」」
「いやだって、VRローカルサーバ積むし。高級リゾートVRは既に組み込んであるよ!」
長距離航行手段での定番になりつつあるよねえ。
「せめて、フリーズドライで…」
「水が貴重なのでダメでーす」
「うう…」
ついてきたかったら我慢しましょう。
「ねえ、逆に、火星で使ってたトイレ+栄養注入機能付きじゃダメなの?」
「あれって、外部とのやりとりが割と必要なのよ。入れるモノの自動供給とか、出したモノの自動排出とか」
「そうだよ!あの時は火星にたっぷり備蓄してから始めたからね!」
「渡辺 凛、うるさい」
その自動備蓄・処理装置を『現界』して計画を実行に移したってんだから始末に悪いよ。
「コールドスリープは?」
「今回は転移装置で移動するから、航行にはそれほど時間がかからないのよ。どちらかというと、彼女の母星近くで観察したり待機したり分析したりする方に時間がとられるかも」
「それも、VRローカルサーバの仮想世界内で行うってことか…」
「観測情報は現実時間で入手するけど、一度入手したら短時間で分析できるからね。そのための観測装置や分析プログラムはたくさん積むよ!」
でも、武器はない。
「こんな感じかな。他に質問は?」
「部屋割は?」
「元がクルーズ船でホテル並に部屋があるから、好きに選んで!どうせ、ほとんど仮想空間経由なんだろうし」
「じゃあ健人、あたし達はデッキの近くね!」
「眺めが良さそうだけど、眺めるものはあるのか?」
ないねー。仮想空間経由で見聞きすると思うし。
「あ、リーネ、念のため確認するけど」
「なに?」
「『戦艦フリューゲル』の艦長&操舵手&整備員は、全部リーネってことでいいよね?」
「もともと私ひとりで行くことを考えていたからそうだけど…」
「ああうん、プレスリリース用の記事を書いてるの」
「そんなことまで?」
美樹がずいぶんやる気だな。そういうの苦手だったのに。
「他になければ、明後日出航ね!日用品以外は、パスポートだけあればいいから!」
「僕、パスポート取ったの初めて…」
「日本初出国の行き先が、未知の惑星ですか…」
一応、必要なのよ。自我認証システムが連動しているとはいえ。
さて、私は明日のうちにあれやこれやを準備しないとね!がんばるぞー!
「リーネが何かたくらんでいる顔ですよ」
「なにかしらね。すごい武器でもこっそり『現界』するのかしら」
武器じゃないよ!武器じゃないけど…まあ、必要になった時のお楽しみということで!




