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魔法少女でやり直し!

「いっけなーい!遅刻遅刻!」

 私、五十嵐なつき。甘いものと食虫植物が大好きな、どこにでもいる普通の高校生。

 今日は朝練の日なのに、初日から遅刻しそうで大変!遅刻したら先輩が容赦しないって言ってたんだよなあ。また鞄の中いっぱいに○ッピーターンの粉を入れられちゃう~。どうしよう!

 そうやって急いで曲がり角を曲がろうとしたそのときでした。


 どんっ!



「いったーい……もう何すんのよ!」


「……あれ?」


 顔を上げたら、いつもの通学路ではありませんでした。

 真っ赤な空、舗装されていないゴツゴツの地面、一方通行と進入禁止の標識が同じ方向を向いて立っている道路、コンビニに突っ込まれて大破したプ○ウス。

 まるでこの世の風景とは思えませんでした。

「あれ?私ってたしか学校に行ってたはずじゃ」

 今までの行動を思い出そうとしたそのときでした。

「お前は死んだ!」

「だ、誰!?」

 いつのまにか、私の後ろに誰か立っていました。何故か、黒光りの暗黒騎士みたいなコスプレをしている……。

「俺の名前は、死神!!!!」

 そういって変なキメポーズを決めた彼(?)の顔はとてもイラッときました。でも……。

「し、死神?っていうことは……、あれ?」

「あ、そうだ」

 そう言いながら死神は、私に黒い箱みたいなものを渡してきました。

「この中に、おまえが死んでからのことが映っている」

「え?」

 この中に?でも一体どうやって……。

「もしかして、ビデオテープ知らない?」

「ビデオテープ?」

「ウソだろ~ギリギリ通じると思っていたのに……」

「い、いやそうじゃなくて」

 死神は、そのビデオテープという箱を私から取り上げました。

「こうやって使うの」

 そういって、死神は近くにあった箱型のテレビに乗っかっている大きなレコーダーに、その箱を突っ込みました。

「そ、そんなことをしたらこ……」

「壊れるとか言うつもり?」

 まるで魔法でした。ビデオテープはガーッといいながらレコーダーに吸い込まれていきました。

「よっと」

 再生ボタンを押したら、映像がモニターに映りました。


   *


「いっけなーい!遅刻遅刻!」

 キキィィィィィィ

ドンッ 

 

 *


「え……」

 曲がり角を曲がった瞬間に、私はワゴン車に撥ねられていたらしい。

 映像は、私が吹っ飛ばされた瞬間で一時停止になっていた。

「続き見る?」

 どうやら死神が、この先を見せないように一時停止ボタンを押していたみたいだった。

「俺は、見ないことをオススメするけど」

 しばらく沈黙が続いた。

「見せないってことは、この先を見たらきっと立ち直れなくなるほど滅茶苦茶になってるってことですよね」

「いや、そうでもないけど」

「違うんかい」

「まあ、見る見ないは別にして、確認したいことがあるんだけど」

「確認したいこと?」

「うん。簡単な質問なんだけど」

 確認したいことってなんだろう?死んだあとの世界でヒーローのコスプレした人になに言われてももう驚かなそうだけど……。

「生き返りたい?」

「あ、当たり前じゃないですか!」

 そうだ。曲がり角曲がった瞬間に人生が終わってしまうなんて虚しいことこのうえない。まだまだやりたいことは沢山あるし、まだ若いし、このまま朝練に遅刻したら鞄の中にハッピー○ーンの粉をぶちまけられるし、それに、遺していったお母さんには何て言えばいいの?(お父さんはどうでもいい)それにそれに……。

「なら話は早いね」

「い、生き返らせてくれるんですか」

「うん。いいよ。条件があるけど」

「条件?」

 そういうと死神は、テレビの裏から一本の腕時計を取り出して、私に手渡しました。

「魔法少女となって世界を救うんだ!」

「……え?」

「魔法少女となって世界を救うんだ!!」

「いや、二回言わなくても分かってますから!っていうか何で魔法少女?私だいいちそんな歳じゃ」

「え~?まだまだいけるっしょ~。第一、女は一生少女なんて言うし」

「それは生き遅れた女の人が言う言いわけだから!」

「え?そうなの?まあいいや」

「っていうか、魔法少女になったところで一体何と戦えばいいの?」

「それはすぐに分かるよ。それじゃ、やり直すから」

 死神はそういって、私の眉間を銃で撃ち抜いた。

「えっちょやり直すってい っ  た   い    な     に        を 

 



  *


キキイィィィィィィ


振り向いたら、ワゴン車がこっちに向かって来ていた。

「きゃああああ!」

 私は咄嗟に両手をワゴン車に向けた。そうしたら……

ガンっ

「おいゴルァ!」

「やべえよやべえよ……」

 私に向かってきたトラックは、私の目の前で方向を変えて、停車していた黒塗りの高級車に追突してしまいました。

「なに、この力?」

 気付いたら、私の左手首には、さっき死神から渡された腕時計が取り付けられていました。

「もしかして、これのせい?」

 私は、左手に巻かれているそれを眺めていると、なんだか不気味な気分になってきました。

「そういや、これ本当に腕時計なんだ……ってもうこんな時間!」

 気付いたらもう時計は8時前になっていた。急いで朝練に行かないと鞄の中を○ッピーターンの粉塗れにされちゃう!

 私は、体育部員が暴力団員に免許を取り上げられているのを横目で見ながら、学校へと急いだ。



    *


「あいやあああああああ!」

 バシィ

「あちょおーー!」

 ドシュッ

「……一人でバトミントンやってる!」

 朝練に来て最初に見た光景はそれでした。やっぱり先輩が提案した練習には誰も来ていなかった。

 先輩はいっつも珍妙な練習ばかりやるんです。ついこの間は「試合前の舞を編み出すぞ!」と舞の練習を2時間続けていました。

 そんな事ばかりやっているせいで、今や部員は私と先輩の二人だけ……。それでも私がこの部活を辞めない理由は……。

「やあ、今日も来てくれたんだね」

 私、先輩のことが好きなんです。

 顔も、声も、つま先の爪すら愛おしくて、持ち帰って保管しておきたいくらい。それくらい、先輩のことが好きで、そんな先輩と一緒に居られるなら、一人バトミントンしたって、鞄の中を粉まみれにされたって……

「なつきちゃん。遅刻したから鞄の中に壊れた○ァービー入れておいたよ」

『ガーッピロピロピロガーッピロピロイヒヒヒヒヒヒ。イヒヒヒヒヒヒ。ヤッテヤッテー』

 それでも、先輩のことが好きなんです。だって、先輩は……

「回想シーンに入ろうとするのはいいけどもうチャイム鳴るよ?」

 ちょっ、先輩! 顔が近い! も~先輩のばかぁ!

「授業に遅れると胆のうを抉り取られるから先に戻るね」

 そういって先輩は柔道着のまま教室へと戻っていきました。わたしも教室にいかなくちゃ。


******



「まだあの部活やってたんだ」

 放課後、同じクラスのミキちゃんは私にそう言ってきました。

「うん。だってスカッシュ楽しいし……」

「まだ先輩のこと好きなの?」

「うん」

 ミキちゃんはちょっと変わった子です。入学してすぐに私に求婚してきて、もし付き合ってくれなければこの場で死んでやると包丁を振り回しながら大騒ぎしたり、今も私の腕に抱きついてきていて、正直気味が悪いです。

「いくら部員がいないからって、あんなクソの役にもたたないゴミムシの相手なんてしなくてもいいんだよ? そんなことより私とイイ事しよ?はい、これ婚姻届」

「も~。これは、私が好きでやってる事だからいいの。早く離れて。キショいから」

「大好き……」

「意味がわからない。消えて?」

 ミキちゃんは、毎日下校中にこうやって絡んできます。なるべく接触を避けるために一旦家とは逆方向に歩いてもです。今日遅刻しそうになったのも、時間をずらして登校しないとこのクレイジーサイコレズに接触してしまうからです。

 今朝、コイツのせいで一旦命を落としてしまったと考えると、殺意が収まりません。

(そうだ)

 そういえば、死神が、私を魔法少女にしたって言ってたな。よーし……。

「ハアァっ!!」

 ミキちゃんに、ありったけの殺意をぶつけるイメージで両手を突きだしました。これでミキちゃんをブッ飛ばすことができる!

「……?」

……とおもっていました。

「なんかよく分からないけど素敵……。結婚して。これ婚姻届」

 何も起こらない。なんで?

「説明しよう!」

「うぎゃああ!?なに!?誰!??」

 突然、私の鞄の中から、なんか皇帝っぽい人が着そうな服を着た人が出てきました。

「俺の名前は、死神っ!!!!!!」

「分かったからその気色悪いドヤ顔やめて! っていうかなんてトコから出てきてんの!?」

「うるさいな~こっちにもいろいろあるんだよ~」

 死神は、「出にくい!」とか言いながらぶっ壊れたファー○ー人形と一緒に鞄から這い出しました。

「あのな、確かに魔法少女にし「ブルスコファーブルスコファー」んな気を「ナデナデシテー」うにしてm「イヒハハハハハ「うるせえ!」

 後頭部にチョップをくらったフ○ービーは「モルスァ」と言い残して吹っ飛んでいきました。

「なんであんなもん入ってんだ。趣味悪いな」

「ほっといてよ。で、なんで魔法が使えなかったの?」

「そうだった。」

 死神は、一呼吸おいてから語りだしました。

「確かにな、魔法少女になる能力は与えた。でも、完全に魔法を使える状態にはしてない」

「へ?でも、生き返った瞬間車を跳ね飛ばして……」

「ああ、あれ俺がやった」

「俺がやったって、どういうこと?」

 死神は、ミキちゃんの包丁を避けながら、答えてくれました。

「あのまま、死ぬ直前まで時間戻したわけだけど、そのまんまにしていたらまた死んじゃうでしょ?だから今回は特別」

「あれ、私の力じゃなかったんだ」

 なんか、がっかりした気分になった。

「でも、考えてみてよ」

 死神は、ミキちゃんを取り押さえながら続けた。

「もし、魔法が使える状態で送り出したら、車の中にいた人たちは追突じゃ済まなかったよ?それくらい、俺が与えた力は強いものなんだ」

 視線の先には、私の左手首の腕時計。

「じゃあ、なんで私にそんな力を与えたの」

「う~ん。いろいろ理由はあるんだけどね~」

 死神は、ミキちゃんの口に婚姻届を押し込んだまま続けた。

「地獄から勝手にシャバの世界、あ、シャバってこの世の事ね。に、蘇った畜生がいるんだけど、そいつを地獄に送り返すのを手伝ってほしいんだ。そのための魔法少女」

「え?」



 え?



「ええええええええええええええええええええええええええ!!??」



「その使いまわされたようなリアクション、待ってたぜぃ」

 死んで、生き返ったと思ったら、死神の手伝い?いくらなんでも急すぎる。

「も、もし断ったら「死ぬ」

「食い気味!?」

 拒否権なんてなかった。タダで生き返るなんてあまりにもうまい話だと思っていたらこういうことか……。

「う、う~ん、生き返らせてもらったんだししゃーない」

「お、マジで手伝ってくれんの?サンキュー」

「だから拒否権なんてないじゃん!?」

「まあ、しゃあないよね」

「で、その畜生ってのはどんな感じの人なの?」

 畜生、その意味くらいは大体分かる。

 地獄に堕ちて人間以下になった人間のこと。

「それが生き返ったら私たちの結婚生活が大変なことになる!」

「もうこいつ地獄行き確定だわ」

 ミキちゃんを眺めながら死神は溜息をつきました。

「まあ、とうていこの世に生きているとは思えないようなクッソ汚い見た目や行動をしてるからすぐに分かるよ。たとえばあんな……」

 死神が指を向けた先には……。

「ちょっと眠ってろお前!」

「なんだコイツ!?」

 先輩にコブラツイストをかけている半裸の変態がいました。

「なにあのオッサン!? 上半身に比べて下半身が貧弱すぎる!」

「ああ。あれが地獄で畜生として生きている死者の姿だ」

「うそ……キモッ」

 ミキちゃんのその言葉を聞いて、お前が言うかと思ったけど、先輩が苦しんでいるなら助けるしかない!

「堕ちろ!」

「う……うぐぅ」

 そうこうしているうちに先輩は変態に首を絞めつけられている。

「ど、どうすれば!?」

「変身だ!」

「だ、だからその変身をどうしろって聞いてるの!」

「自分で考えろ! 変身認証システムはガバガバだから、変身しそうなセリフとポーズで変身できるようになってる」

「なんでそこだけおざなりにしてんの!?」

 でもあーだこーだいっても仕方ない。よし!


「ヘル・デス・ライブ・メタモルフォーゼ!」


 両手をバッと広げた瞬間、左手首が光り出し、全身が闇の粒子に包み込まれて……。


「ちょっと待って、一旦全裸にする」

「え? は!?」

 死神の指パッチンを合図に、一旦粒子がはじけ飛んで私の身体か露わに……

「キャー! このバカァ!」

「あぶねー! このまま変身したらノルマ達成できないじゃん」

「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!」

 はじけ飛んだ粒子は再び私の身体を包み込み、真っ黒で丈の短い袴と、肩の出ている白衣の姿になっていた。

「これが、魔法少女の姿」

「どうだ! これが魔法少女なつきの姿だ!」

「あんたが威張るな!」

 一旦全裸にさせた分を含めて、怒りを込めて死神を殴った。そうしたら……

「わあああああああ!?」

 え?

 

 死神は盛大に吹っ飛んで、道端に不自然に積まれた段ボールに頭から突っ込んでいきました。

「こ、これ私の力?」

「そうだ!その力であいつをぶっ倒せ!」

「あんた無事なの!?」

「イケメンは死なない!」

 段ボールの山から、親指を立てた腕だけが伸びていた。

「めう!」

「ぐえ!」

 そうこうしているうちに、先輩は変態に腹パンを喰らって倒れていた。

「堕ちたな。縛らなきゃ……」

 先輩をこんなにして……許さない!

「そ、そこの変態!」

「お?」

「わ、私がグチャグチャにしてやるから覚悟してなさい!」

「何ぃー何つった今もう一回言ってみろうぇー?」

 あれ?でもどうすれば……。

「念じて!」

「え!?」

「こういうやつって、なんか、魔法出ろ~的な念っぽいあれを出せば成功するかもしれないって死神も言いそう?」

「おいゴミ!ふわっとした指示出すなら黙ってろ!しかも最後疑問形じゃん!」

 あ~もうこれどうすればいいんだ? あれ?でも頭の中に何かが浮かんで……


「煉獄を護りし聖獣よ、主である我の前に姿を現せ!」

 

 頭の中に浮かんだ言葉を唱えた瞬間、両手が光り出し、地面に魔方陣が展開された。


 魔方陣から出てきたのは……


「こ、これは!」


「ブルスコファァァァァァァァ!!!」


 巨大なファ○ビーだった。


「もうファービ○はいいよ!」

「おま、詠唱魔法を唱えたのか!?」

 いつの間に段ボールから這い出したのか、隣に死神がいた。

「これ、どうなるんですか?」

 死神は、真剣な顔で巨大なファー○ーを眺めていた。

「こいつは、地獄にいる聖獣の中でも比較的弱い奴なんだけど……」

「だけどなんです!?」

「……爆発する」

「え?」

「うーん。発火ドゥルドゥー」

 それって、ヤバくない?


 ドカアアアアアアアン


先輩!





「う、う~ん、俺は一体?」

「大丈夫ですか?」

 爆発に巻き込まれる直前、全身が憑りつかれたように早く動いて、先輩と一緒に爆発を逃れることができました。

変態の方はモロに爆発に巻き込まれたから、多分地獄に送られたでしょう。

 死神は「イケメンは死なない」とか言っていたし多分大丈夫です。ミキちゃんは知りません。

「ありがとう、なつきちゃん」

「違います」

「なつきちゃん、だよね?」

「違います」

「でも「違います」

 こりゃバレてる。別に正体が知られたところでどうってわけではないんだろうけど、先輩には、私が魔法少女だということをなんとなく知られたくなかった。

 だって、今、先輩のことお姫様だっこしてる。

 こんなの、私が魔法少女じゃなければ恥ずかしくて……先輩の事地面に叩きつけちゃう。


「私は、魔法少女。魔法少女ヘル・プリンセス」


 出まかせで言ったこの名前、多分ダサいって言われるんだろうなあ。

 先輩を地面に下して、ジャンプしてその場を去った。

 さすが魔法少女というだけのことはあって、まるで忍者のように建物の屋根を簡単に飛び渡ることができた。


 突然死んで、生き返って、魔法少女になって……。

 これから何かあるかは分からないけど、助けてもらったこの命、無駄にするわけにはいかない。

 

 水平線に沈む夕日を眺めながら、私は魔法少女姿のままで家へと急いだ。

 帰ったら、お母さんに「ただいま」って言おう。そして、お母さんと美味しいごはんを食べて、おいしいって言ってあげよう。いつ死ぬか分からないから、いっぱい伝えよう。

何がなんだかまだ頭の整理はついてないけど、今日はこれでいいや。

 


 でも、私はまだ知らなかった。この戦いに隠された理不尽な真実を……。


人気が出たら続き書きます。感想よろしくおねがいします。

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