これって弟子入りじゃない?
「例えばこんなモノはどうだろう?」
ルイが取り出したのは二種類の札。鬼を使役していたのとは模様が違う気がする。
「これは?」
「これは、転移符と念話符だね、転移符は貼った場所と札の場所を繋いで移転可能な札。当然魔力を消費するが君なら問題ないだろう。念話符は携帯みたいな物という認識でいいよ」
これってとんでもない物だよな? 念話符とやらは、元の世界では大して便利性を感じないが。この世界でなら話は別だ。情報伝達速度にタイムラグがほぼ無いとなると、それだけで計り知れない価値ではないだろうか?
そして、問題は転移符だ。これは元の世界だろうが、洒落にならない価値があるだろう。それこそ、悪用すれば、国家予算を稼げるくらいは容易に、利益を出す事も、難しくはないかもしれない。
密輸し放題、運送費の激減。魔術師が魔術を隠蔽してくれてありがたいと思ってしまった。そんな物をくれると言うのか?
「太っ腹ですね。これの有用性が分からない訳ではないでしょう?」
「当然だ、コスト自体は安いし、大したことは無いよ。そうだ、この本の内容を習得できたら、そのものを教えても良いくらいだ。前の世界でも君は魔術師としての素養があるからね」
そういって辞書のような、本を一冊渡された。魔術の教本のようだ。
「ありがとう、それで?素養とは?」
「技術を秘匿する意思と、警戒心」
前半はこの世界だからとしか言い様が無い。後半は元からだな。
「今回は念話符とその本を礼の品として、進呈するよ。そして、その内容を習得できたら、更にその先の魔術や、転移符の作成なども教えよう。もしそんな日がくれば、私に念話符を使って連絡をくれればいい。相談なんかでもいいぞ、気軽に連絡してくれ。使い方は、どうせ鑑定を引き当てたんだろう? それで見る方が早い。本はあの3人になら見せても良いからね」
勢いに押されて、呆然としていると。 「呪術の落とし前を付けて来る」と言って、転移符で居なくなってしまった。
悪い人じゃなさそうだけど、嵐のようだった。
翌日、メンバーに話すと、残念そうにしていた。
本の事をどう切り出そうか。
 




