イケメンと美人は、化粧や毛を除けば、案外見分けが付かない
「貴様は奴隷狩りの一味か?」
エルフは俺にそう問いかけるが、そんなわけが無い。絶賛無職だ、犯罪系の職業などもっての他だ。
「いいえ、違いますよ。なぜ、俺を奴隷狩りだと、思うのです?」
エルフは少し考えるように沈黙し、口を開いた。
「こちらの間違いのようだ。少し前に襲われて疑心暗鬼になっていたようだ。君のような人間がそんなことしていたら・・・あまりに・・その・・・な?」
どうもエルフの歯切れが悪い。どういう事だろうか?こう言うときは素直に聞くのが一番だ。
「どういう意味でしょう?俺は田舎が嫌で飛び出してきたせいか、自慢じゃないが本当に何も知らない。よかったら教えてくれないか」
エルフは残念そうな物を見るような目で見ながら「ああ、そういう手合いか。悪い事はいわん、村に帰れ。お前のようなのは、いつになろうが出てくるが、その末路は概ね悲惨だぞ。奴隷狩りにあって売られるか、騙されて借金抱えて奴隷になるか。まともな生活ができるのは極一握りだけだろう」
なにそれ?怖い。この世界かなり殺伐としてるようだ。
「村に帰れと言われても、散々迷って場所も分からないし、名前も無い村だったから帰りようがない。」
「お前それでよくこれまで生きてこれたな。その強運に感謝するべきだ。それよりお前はこれからどうするのだ?」
丁度良い集落への道を聞こう。
「この辺りに町か村はないですか?正直迷ってどうしようかと」
大きなため息が聞こえた。
「いいだろう、私も行くつもりだ。そこまで送ってやろう。どちらにしろ、もう移動するには遅い。結界を張ってやるから来い」
凄い親切なエルフだ。いや、もはや同情な気がするが。まぁいい。にしても美人だな整った顔、長い脚、金髪碧眼。絵に描いたようなエルフだ。しいて文句を言うなら胸が・・・・ん?
鑑定先生を使い性別を見るとこいつ・・・男だ。まあエルフなんてそんなもんだろう。
「先にいっておくが、私を襲う素振りを見せれば即、殺す」
俺はノーマルです。そんな趣味はない。
「男に欲情はしないな。まぁアンタは少しばかり紛らわしい容姿ではあるが。性別くらい分かるよ」
エルフは嬉しそうに「わかるよな?当然だ。我が種は中性的な見た目の者が多い。普通に男らしいといわれるのは2割にも満たない。言ってて情けなくはあるが」
どうやら気にしているらしい。それから野営の準備を手伝った。何も知らないこちらに「本当によく生きてこれたな」と苦言を頂戴した。
それから色々聞いた。貨幣の価値。物の大体の相場や決まりごと。こんな質問ばかりしてたので、頭は悪くないのだなと言われた。
それから、今更だが自己紹介された。エルフの名前はリュートというらしい。
当然名前を聞き返される訳で、とっさにダイスと名乗ってしまった。自称神とやらのせいだ。鑑定先生をみても名前にダイスと記載されてしまっている。もう少し名前を考える時間が欲しかった。
こうして俺は眠りについた。