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救出

王の後ろに付き従う勇者。他から見ればそういう風に見えるのだろう、誰一人立ちはだかる者は無く、道を空け跪く。行き着いた先は前に王が入り浸っていた場所だ。他はある程度調べていたのでここだろうとは思っていた。



「勇者よ。いや、勇者とは到底思えない者よ、何故魔王へ味方する? わからん、どうせこの国は近々滅ぶ。最後に教えてくれんか?」



 最後の扉に差し掛かり王は俺に聞く。



「魔王に味方する? そんなつもりは毛頭無い。敵対はしてないだけだ。逆にお前達は確実に敵だろう?相手が知らないと思ってあんな物を着けさせようとしているんだ。戦奴隷だよなこれは、最初から理解している相手にやればこうなっても文句は言えないだろう?」



「運が悪かったという事か」



 乾いた笑いを浮かべ脱力しているが勘違いだ。



「さて、どうだろうな。俺を引き当てなくても敵対心は間違いないだろうよ。異界からの召喚は今や神もできまい。過去に異界から来た人間をお前等は引き寄せたに過ぎない」




「運以前の問題だったか」


 扉を開ける王は力なくつぶやいた。




 扉に入ると生臭い臭いが充満している。中には闇の精霊らしき虚ろな表情の美女が薄い布一枚 羽織って部屋の隅に居る。 王が入り浸る理由はこれか。一瞬引き金を引きそうになるが何とか耐える。こいつは魔王への土産だ。



「お前が闇の精霊か? お前を魔王の元へ連れ帰る為に来た」



「ダメ、私が出ようとしたら仕掛けが起動する。貴方だけでも逃げて」



 笑顔を作っているようだが諦めが見て取れる様な悲痛な物だ。



「成程、王様はコレを見越して俺を連れて来たと、成程素直すぎると思ってたんだ。ではこの場所は魔術の使用が出来ない程度の仕掛け、あるいは起動しようとすると防衛機構が起動するそんな所か?」




「ああ、そうだ。お前はここで始末すればどうにかなる。だが、死んだ部下は帰ってはこない。それに勇者はもう召喚できない痛手付だ。お前にはこの先、苦痛だけしか待っていない覚悟するのだな」




 無言で王の太腿を打ち抜いた。当然防衛機構の類は起動しない。当然だ、魔術等は使用してないのだから。


 部屋には色々な物がある。使い道はあまり考えたくない。その中に縄があったので王を縛り、精霊を抱き抱える。触られる事が恐ろしいのだろう。ガタガタと震えているがもう少し我慢して欲しい。



 あちらこちらがヌルヌルするし生臭い。女性に対して言っていい事では無いが、このまま連れて行くわけにも行かない。一度洗う必要があるな。  




 こういう所でこそ使うのがアリアの魔術だろう。起動した瞬間に反応する機構だろうと、こちらが先な時点で無意味だ。




 部屋からは精霊を抱え、王を引き摺りながら脱出した。その光景を信じられないと言わんばかりの表情で王は見ていた。

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