親子の今後
甘いつくづくそう思う。談笑している男二人と小さな女、それを眺めながら自身に毒づく。ああ、分かっているとも今やってる事は遅延に過ぎない。その遅延すら自身の甘さのせいで危うくしているのだ。
アリアという先人はこれ以上ないくらいのモデルケースだ。人の世界を停止に近いほどに遅延させている。しかも、彼が守るべきは一代だ。寿命がどの程度かは知らんが、十分な成果をあげている。
対して俺はどうだ? アリアの世界は鉄器文明にたどり着いておらず、他の異世界人も皆無。こっちは鉄器技術は普及している上に、異界人もいて、ルイと言う桁違いな化物もいる。今現在友好的なのが唯一の救いだが。
このままじゃ間違いなく計画が頓挫する。
「ダイスさん考え込んでどうしたんですか? 三人寄ればなんとやら、よければ聞きますよ」
確かに俺一人じゃ・・・いや、駄目だ。
「気遣ありがとよ。だが、これからそこの子を連れて精霊の保護に向かう、。余計なお世話だと追い返されるかもしれんが、助けを求める可能性も十分ある。どう、接触をはかるべきか考えていた所だ」
我ながらよくもまあこんな嘘がサラサラと。
「そこはいつもの様にでいいじゃないですか。むしろダイスさんの敬語とかはあんまり聞きたくないですよ。 ルイさんに聞きましたよ? ダイスさん、王様ですらそんな感じらしいじゃないですか」
神であろうとその辺は変える気は無い。この世界に来てすぐは迷ったりもしたが今はその辺に迷いはない。
「そうだな、いつも通りで行くとしよう。後はこいつらの処遇だな、3つ案があって、一つはここでアキラの部下としてこの街で与える裁量内で鍛冶をする。二つ、ルイの領地で暮らす。最後は知り合いの王の所で厄介になる、だ。ルイも王といえば王なのだがな」
「ダイスはそんな御偉い方々と知己なのかい? 技術だけでも驚いたのに、人脈も魔術も凄いもんだねぇ。どうだい?アタイを弟子にしないかい?」
宝石の加工技術が欲しいのだろう。職人ゆえか。
「俺のやるべき事が終われば構わない。それまでは時間がないので無理だな」
事が終われば問題ない技術をくれてやるくらいなんと言う事は無い。
「本当かい? 約束だからね」
「分かった、それより精霊の所へ向かうぞ、アキラはザッドを頼む、まずは寝かせてやってくれ。その後腕のリハビリで関節を動かしてやってくれ」
「了解です。お土産期待してますね」
「美女に言われるとそう思わなくもないんだがな。お前にはそこはかとなく気持ち悪さを感じた」
半笑いでいう俺にひでぇと返すアキラ。
「では行くとしよう、頼んだぞ」
転移符を起動して二人で元いたドワーフの島へ。




