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お菓子と園児達

 寝苦しい、暑い。目を覚ますとここの住人が俺の寝床に潜り込んでいる。そりゃ暑い訳だ。普段なら絶対に寝床に侵入なんて許さないが、こいつらは敵意や害意が全く無い。それ以上にここなら気を緩めて良いと思っている自分の甘えのせいもある。



 

 地上で警戒を無しに眠るなんて事はどこぞの吟遊詩人にボコボコにされて意識が無い時くらいだろう。



 小さな住人達を起こさないように寝床を出る。行き先は調理場、卵を入手したのでお菓子を作ろうと思う。



 この体になって作るのは初めてなのだが、案外覚えているものだ、鍋の中で生地を火に掛けながら混ぜるとにかく鍋の中でせわしいのがこのレシピの特徴だ。中身も皮も。




 残念なのはバニラビーンズが無い事だろうか。前の世界では高いのでエッセンスかペーストを使っていたが、こちらも当然ありはしない。




 絞り袋をどうするか問題はあったが、こちらは葉を練成で加工する事でなんとか形にはなった。クッキー生地を皮の上に乗せ、焼き上げる。その頃には小さな住人どころかその主、そして最近きた住人までも匂いに釣られてやってきた。





 出来上がれば配ると追い払いながら作業を続ける。卵を使い終えるまでひたすらに、外では待つ住人達が最近流行りだした歌を好き勝手に歌っている。




 微笑ましくも優しい光景だ。





 ようやく作り終えた頃に芸術の神は。



「僕にもそれ頂戴」とお菓子を催促してくる。一つ渡すと嬉しそうに食べ。




「これは餌付けもされる。本当にあっちの世界の料理技術は高いよね」



「芸術の神が気に入りそうな菓子もあるな。そういう大会もあるくらいだし」



「へぇ興味深いね。記憶でもいいから今度見せてよ。おっとみんなが待ってるね、早く配ってくると良い」





 出来たぞの一声に皆は集まる。配り終え食べて喜ぶ様を見てるとやって良かったと心から思えた。




 食料庫に補充しているとどうにも聞き覚えのある歌が・・・色々聞こえてくる。教えた覚えの無い曲ばかりだ。チューリップ、ぞうさん、シャボン玉等々。小さな住人達は完全に園児と化していた。



 芸術の神の仕業だろうが、後で問い詰めるとして、今回の一番の目的を果たさなくては。俺はヘスの所へ向かう。




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