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吸血鬼の王との謁見

 1時間ほど待っただろうか、一人の女が俺を迎えに来た。美しい銀髪の女なのだが、美人ってのも度を越えると違う風に見えてしまう。例えるなら美術の世界の代物。これが一番しっくりくる。



「若がお待ちです。私についてきてください」



 道すがら色々聞かれたが無難な内容の返事で返した。察するに魅了に近い何かをしているのであろうが、俺には関係ない。悪意と言うより若が心配なので俺という不審者の情報を手に入れたいのであろう。




 文句は王子殿に言うとしようかね。





 通された部屋は、赤い絨毯に暗めの照明。金の調度品がいやらしくない程度に配置されている。部屋には先に二人いた。一人は王子、一人は王冠を載せたロマンスグレーのおじ様風の人。どう見ても国王だろう。




「父上に貴様を会わせてみたかったのだ。まさか貴様から来てくれるとは僥倖」



 相変わらず尊大な物言いだ。しかし、巨壁のがおかしいだけでこれが普通ではなかろうか?



「一国の王と謁見できるのは商人として誉れではあるが、その前に一つ苦言を呈したい」



「相変わらず不遜な態度だが、許す。ただし、俺にまでだ。王にまでは許されない。ともかく苦言とやらを聞こうか」




 王は静観を決め込んでいるようだ。



「先ほど目も眩むような美人に案内をして貰ったのだが。魅了、あるいはそれに近い物を仕掛けられ、情報を聞き出そうと言う形跡が見られた。これは、貴殿の指図か?」





 王子は思い当たる節があったのだろう。困り顔をした。



「それはこちらの不手際だ、謝罪しよう。アレは心配性が過ぎる。特に人間に対しては色々思う所があるのであろう。残念ながら俺にできるのは、謝罪となにかを差し出す程度だ」




「なら欲しい情報がある。それでなかった事にしよう」




「欲しい情報?良いだろう。可能な限り開示しよう」




「敵国の情報だ。特に多種族の女性を攫って嬲り者にすると噂の国のだ」




 そう口にした瞬間温度が一気に下がり、高密度のマナに包まれた。王の物である。




「お前はそれで何を成す? 答え次第では覚悟せよ」




 怖い怖い。吸血鬼の王ともなれば当然か。



「私は商人。と言っても色々仕事をしてまして。その中に行方知れずの御令嬢の捜索もありましてな。可能性がありそうな場所があるなら捜索するだけです」




「そうか、その者に情報を与えてやれ」




 そう一言だけ言うと魔力を納めた。まぁ親って事だな。





 王子からその後話を聞いたが想像を絶する。いや、想像の通りの国家だった。





 異世界じゃなくて地球でも似た話はあった。戦争で勝った側が負けた側の約半分を殺した、非戦闘員もだ。何故半分か? それは性奴隷とする為に生かした者以外を殺したからだ。記憶に間違いが無ければ史実である。





 国のシステムとしては戦闘員と奴隷と王。個での力の格差があまりにも広すぎるこの世界ならではの構造ではないだろうか? どちらにしろ吐き気がする。




 例の娘は加護で守られているので今は無事らしいが、急いだ方が良い様だ。ふと思ったのだ何故吸血鬼は攻めない?





「何故王子はその国を攻め落とさない? 害悪以外ではないだろうに」



「厄介すぎる結界に阻まれてどうにもならないのが現状だ。業腹だがな」




 本当に悔しそうにそう言った。

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