激務
その日十日分の宿代を宿に払うと。俺は部屋に転移符を設置した。中継地点とする為だ。夜中に部屋を抜け出し教国を目指す。目的は中継地点の設置だ。国を一つ越えるのだ。いくら速度が出せると言っても、夜中だけの移動では数日掛かる。
しかも移動するだけと言う訳でもない。この国も十分に攻撃対象である。国営地の地図は頭に入ってるから行き掛けの駄賃に設置だけして行く。隠蔽と隠密両方こなす必要があり、これにも時間が掛かる。
せめての救いは敷地に入らないでも良い事だ。その周囲ごと囲えば良いのだから。
符は地中に設置。中継地点は人気が無い岩陰等に設置。これを繰り返す事5日間。教国の国境についた。当然夜闇に紛れた上から不法入国。これでようやくスタートラインだ。
街に入り込み路地裏に転移符を設置して。一時帰還する。
さぁ始めようか。
そこからの俺の生活は激務と言うに相応しいだろう。中継地点は全部で5箇所。内宿は2箇所。最低限そこで顔を出し。夜中は飛びまわり設置。何度か見つかりそうになるも、何とか誤魔化す。
昼は情報収集として商人の真似事。結局寝るのは明け方から昼前の間だ。宿の主人からすれば気楽な生活に見えただろう。
更には妖精や墓守の為の食料の配達や仕入れも平行してやらなければならない。かなり働いてると言っても過言ではない。では何故終らないか?教国が余りに広いのだ。元々は小国の一つだったが宗教特有のやり口でかなりの数の国を侵略している歴史を持つ国だ。厄介すぎる。
ルイには置換転移の場所を更に確保が必要と言わなければならない状況だ。ルイは「巨壁の国及びその周囲にそういう場所はいくらでもあるから任せて」との事。簡単そうに言い放つから妙に腹が立つ。
既に5ヶ月が経つが未だ半分行ったか怪しいレベルだ。ルイには混乱を起こすには十二分ではないかと言うと。
「確実に解体まで持って行きたいからね。まだ足らないよ」と続投通告を貰った。ルイ自身この大陸に来ていて別の場所で暗躍してるようだ。こっちも手伝えよ。
社畜のような日々はまだまだ続くようだ。




