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伯爵の動向

 「久しいな火の字の」まさに王宮の謁見の間。そんな部屋で伯爵を前に30代半ばの眼光鋭い男性は訝しげに言い放つ。



「御無沙汰しております。王よ。本日は」



「良い」伯爵の言葉を王は遮る。



「俺とお前の仲だ。謁見の間と言えど信頼できる少数を残して部屋を退出させた。前口上も硬い語りもいらんよ。それより火の字がなんの連絡も無くきた事だ。どうした?」



「そう言って貰えると助かるよ。用件は二つ。どちらも良い報告さ」




「吉報と来たか。期待できそうだな」



「まず。これを伝えたくてね。君の娘の傷を癒せる霊酒とも言える物を入手した。効果は戦場の鬼が証明しております。見る限り、顔や手等の傷の消失。視力の回復が見られました。あの様子だと体の全ての傷が消失したと見ていいでしょう」



「フィオナをすぐ連れて来い。これは王命である」



「御意」 何処からとも無く声がした。



「シェイド殿か。彼なら信頼できるから適任だね」



 王の鋭かった眼光も今では見る影も無く。緩みきっている。無理も無い。娘の治癒は王にとって悲願でもある。



「もう一つを聞こうか」




「ああ、そうだね。僕の目の事は知ってるね?」



「勿論だとも。便利よな、相手の能力とおおよその実力を把握できる目は」




「その目で見切れない男に会いました。名はダイス。この霊酒の出所さ。見えたのは龍と精霊からの祝福と多分僕の目の上位互換の目。そして英雄という称号。そして異界人である商人さ」




「それはまた凄まじいな。御伽噺に出て来て良いのではないかそ奴は、異界人というのはある意味で近い存在なのかもしれぬが、素行はどうなのだ?」



「警戒心が非常に高いと思うよ。異界人の世界は王都より遥かに治安が良いのでしょう?」



「そうだな」知識と力だけ渡して俺に成り代わるはずの男は消滅した。あの男の知識がその者と同じならだがな。



「そんな安全な場所から道端に放り出されて生き残っているんだ。そうなるのは仕方ないな」



「次に力に溺れる類では無いでしょう。逆に驕る事もなさそうだね。思慮もそれなりに深く分別もあるんじゃないかな。そして敵には容赦が無い」




「敵?何故それが分かる」



「王よ手紙は読んだかい?」



「害虫の件か。もしや、その者を巻き込んだのか?」ククッと愉快そうに笑い出す。



「ええ、中々に見物でしたよ。魔術に秀でて他者を無才と蔑む愚か者が、一切の魔術の行使を許されず死んで行く様はね」



「禁呪の間の様な物か? しかしあれは、かなり限定した空間だぞ?」



「それを彼は歌で再現していました。多分歌が聞こえる範囲での魔術の使用は不可能でしょうね。僕自身使えなかった訳だし」





 どこからとも無くまた声がする。



「フィオナ様をお連れしました」



「ご苦労。部屋へ通せ」



 全く困った王様だ。僕からのお土産の酒が余に美味から、お前にも飲ませたくなった等と言い放ち。姫君に酒を飲ませたのだ。僕はちゃんと説明した方が良いと思うんだけどね。



 効果の程はオークション会場でも見た。当然こちらも同じだ。飲んだ彼女を見て僕が頷くと。王は彼女の顔を隠してる布を剥ぎ取り、確認し。涙を浮かべながら姫君を抱き寄せた。



 これ以上此処に居るのは無粋の極み。邪魔者はさっさと退散しないとね。



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