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別室で

 面倒な事になった。最悪ここで出来た縁を捨てて逃げる必要まである。記憶が正しくこの世界の爵位が前の世界に近いと仮定するなら、伯爵は上から3つ目くらいの爵位だ。敵にはあまり回したくない。



 そんな事を考えながら部屋に着くと、レイウスが待っていた。



「部屋を準備してくれて感謝するよレイウス」後ろから伯爵の軽薄そうな声が何故か俺を警戒させる。このての男は愚者のふりをする賢者とか爪を隠すタイプだ。とりあえず鑑定で能力だけでも把握を。



「僕を知りたいのかい?」伯爵の声で鑑定の起動をやめた。こいつ・・・。



「僕は君のを見たからね。多分半端にしか見れて無いけどね。英雄君」



 スキルを見たのか?どこまでだ?見られたらまずそうなスキルを数多く持つのが今の俺だ。下手すれば魔王、あるいはその手先と言っても良い字面のスキルも多い。



「英雄?はなはだ身に覚えがありませんが?」



「自分で把握してないのかい?僕も5つしか見えてないけどね。異界人は高確率でその辺を把握していると思ったんだがね」



 やばいな、鑑定を使えば敵対する可能性もあるから使い辛い。イニシアチブを完全に握られた。



「その鑑定ってスキルは使わないのかい?ああ、僕に配慮したのか。君は今まで見た異界人で一番賢いよ。その判断力は僕は好きだよ。君を見た僕のスキルは観察眼、ある程度の相手の力量やスキルを読み取る物さ」



 鑑定の劣化版か?そうとも限らんか。厄介極まりない。



「それで、俺と話したい事とはどのような事でしょうか?」



「切り替えが早いね。良いよ、幾つかあるけどまずはその精霊をどうするのか興味があるんだ。君は商人なんだろう?そんな損得勘定で動く生き物が何故大金を使ってまで精霊を買うのか気になってね」



 まぁそこはくるとは思ったよ。



「これは商人として益があっての事です。申し訳ありませんが伯爵様と言えどそれを明かす事は出来ません」



「それならならいいよ。君は商人だ、それは仕方が無い。じゃあ次はあの霊薬とも言えそうなお酒は君が出所だと睨んでいるのだけどどうかな?可能であれば買いたいんだ」



「それは俺だ。売る事は可能ですよ、ただしあと一壷しかない。再入荷のあても無い」



 やばい、気が動転してるのか言葉使いがおかしい敬語になってない。掌で踊らされてる感覚だ。一度落ち着け俺。



「それは僥倖。では金貨1500枚でどうだろうか?」



 いやいや倍以上じゃないか。逆に怖いっての。


「些か高すぎるのでは?800枚で私は構いませんよ」




「それはないよ。アレだけの効果を見せられたんだ。この金額は正当なものだと僕は思うけどね。その辺はどう思うかな?レイウス君」



「希少価値と効能を考えれば妥当かと。あのレベルの治癒魔術の使い手は存在しません」



「そういう事だよ。ダイス君は謙虚だね?いや、警戒心が強いのかな? 1500枚で構わないね?」



「そう仰るのならば、その額でお譲りします」




「これで最後になるが、仕事を一つ請けて欲しいんだ。内容は僕の領地までの護衛。理由としてはガル君から君が実力者と聞いてね。保険的な意味合いさ」



「私などさしたる力はありませんよ。それでよければ引き受けましょう」



 断りたいが、それを言える状況に無い。



「一応何故雇うかも言っておくよ。今回は釣りをする為にこのオークションに少数しか護衛を連れず、わざわざ売りに出されていた精霊を買ってまでここに来たんだ。流石に儲けが出るとは思わなかったがね」



 釣り・・・



「あの自分と競り合った貴族ですか?」俺は率直に聞いた。




「そうさ、君が一緒にいれば更に釣れる可能性は高い。餌は美味しそうな方がいいだろう?」




 にやりと笑い伯爵は俺を見た。俺は引きつった笑みでそれを返した。



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