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歩き抜ける様に

 白亜色の城壁。それを覆う結界。確かにこいつは難題だろう。ただし、ルイか俺で無い場合に限る。時間を掛ければ他でも十分だ。


「ルイ、何故俺が必要なのだ? アンタならいくらでもやりようがあるだろうに」



「わかるかい? そうだとも、やれない事は無い。結界は強力だけど、分析すれば十分掌握できるし、皆殺しを前提にすれば力推しや策略でも解決できるよ。でもね、手元を巣立った弟子の、成長具合を見たいと思うのは、悪い師であろうか?」



 試験かねぇ。これは手札を見せろって事か。元々ルイから貰った物だしまだ使いこなせないが、派生もある。ここで見せるのも良いかもしれない。



「良いですよ。ルイはどうする?同行するか? 息子の魔術を体感できるぞ?」



「良いのかい? それは秘匿すべき魔術かもしれないよ? 良いのであれば是非お願いしたいけどね」



「ひとつ、協力して貰う事がある。これが出来ないと、ルイはともには来れないからな」



「良いとも、なんでも言ってくれ」






「なんでも言ってくれとは言ったが・・・これはどういう事なんだい?なんというか、見てくれは自覚してるがそれなりの歳なんだ。なんだ、その、非常に恥ずかしいのだが」



 障壁の前で俺はルイを抱え上げている。この魔術の特性からして、起動時はルイを運ぶ必要があるのだ。



「この魔術を使うと。恐らくルイは動けん。障壁を抜けたら解除するから我慢だな」



「何か分からないが、そこは良い。しかし、何故お姫様抱っこなのかな?」



「安全性を重視したからだ。乙女じゃあるまいし、すぐ終わる。我慢してくれ」



 そう言って俺はアノ魔術を起動する。最初こそ歌を必要としたが、今なら小範囲に限り歌を省く事ができる。ルイの体から力が抜ける。ルイ自身、己に何が起こったか理解出来ず驚愕の表情を浮かべている。



 そして俺は散歩でもするかのように。スルリ、と障壁を越える。



 魔術を解除して、ルイを下ろす。



「これはなんとも・・・息子はとんでもない魔術を作ったんだね。まだ理解できないけど、想像が正しければ凄まじい」



「ご想像にお任せしますって奴だ」



 楽しそうにルイは飛び起き「じゃあここからは別行動でいこう。君には聖女をどうにかして欲しい。使いようがあるなら生かしてもいい。ただ害しかなさそうなら即、処分して欲しい」



「宗教家ってのは個人的に嫌いなんだ。問答無用でじゃダメか?」



「ダイス。悪ぶるのも良いけど、出来ない事は口にしないほうが良い。君は人を基本的に信じないが。判断するだけ事は怠らない。これは君の性だろう?」



「知らん。まぁいい、とりあえず聖女様の生殺与奪は俺の手にあるってことだろ?」



「なんか如何わしく聞こえてきたぞ、ダイス」にやにや笑いながら俺にルイは言う。



「意味が分からないな?よし、ルイがこんな事言っていたが、意味が分かるか?ってレイナに聞いてみるとしよう」



 「ダイス。それだけは止めてください。本当にすいませんでした」



 そこにはこの世界での強者としての威厳は欠片も無く。見た目こそショタであれど、その雰囲気は情けないおっさんのそれを連想だせた。



「茶番はここまでだ。さっさと終わらせよう。レイナに言うかは保留にしとくよ」



 次の瞬間。ルイの美しい完璧な土下座姿があった。

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