鼠を狩ろう
「支払いはどのようになさるので?」 ある程度は予想は付くが、確認は必要だろう。
「金、銀、各種硬貨は無論。ミスリル、魔石、宝石。地下資源と言う物ならばおおよそ出せます」
商人風情に、下手に出すぎではないだろうか? ドラゴン様様ってことなのかね? にしても、魔石やミスリルは嬉しい誤算だ。
そうそう、一応王を含め周りを片っ端から鑑定を掛けてるが今の所1つを除いて不審な所は無い。王はステータスが高くドラゴンの加護があるだけで問題は無い。まさにこの国の王といった感じだ、大臣も変わった所は見当たらない。
だが、この場にもう一人いる茶髪の男は違和感がある。
ステータスの数値はどうでも良い。気になるのは祭司と言うスキルだ。能力自体は多少のステ上昇と大した事はないが詳しく見ると、このスキル所属する所によって効能がちがうのだ。そしてこいつは件の敵国の物だ。隠蔽スキルまで持ってるし、限りなくクロだろう。
名前はバッツ・フォードか、確認を取る必要があるだろう。
「王よ、先に話を進めたいのだが、ドラゴンに認められたのは貴殿のみだ。申し訳ないが、二人には退出願いたい。無論隣の部屋で待機していただいても良い」
当然二人は抗議してきたが、王がそれを制した。やりやすくて助かる。
二人は渋々退出した。少しばかり簡単すぎる気がする、盗聴の可能性があるな。
「王よ、まずこれをお受け取り下さい」俺は念話符を王に渡す。王も何か悟ったのだろう。素直に従ってくれた。
すぐ、念話符は起動された、爺さんと使っていたから当然だが。
(商人殿、そろそろ説明いただけますか?)
(簡単な確認ですよ、大臣は問題ないのですが、もう一人いた御仁がどうにも怪しくて。まずは彼の名前を教えていただけますか?)
(彼はレイ・カインド、15年前にこの国に仕官した有能な文官です)
ビンゴ、偽名だな。
(続けて問います、この国では件の教国の司祭はどういう扱いですか?)
(あの国の司祭なぞ、敵でしかありません。ドラゴンを悪魔と呼び、我々を堕落した民として侵略してきているのですから)
(では更に問いましょう。この国では隠蔽スキルを見破れるだけの、鑑定スキルはありますか?)
王の顔色が見る見る青くなる。
(さて、ここからは推測でしかありませんが、この国が買い付けをする場合高確率で襲われるのでは? それも、まるで予期されてたかのように)
(それではレイが)
(そんな人間はいませんよ、彼はバッツ・フォード、敵国の司祭殿ですね。取り押さえて彼の部屋や周辺を調べれば証拠は出てくるでしょうね)
交渉するなら、まずはくだらないリスクを減らさないとな、他にもいないといいのだが。




