精霊の思惑
「僕も信じられると思うでつが、何故ヘスはあの人間さんを信用したでつか?」
コボルトの彼は勘・・・いや、雰囲気で彼を信じた。それでも保険をかけ、万全を期してだ。だからこそこの自分達の長の精霊の判断には疑問を持った。なにかあるんじゃないかと。
「私も貴方と同じなのだわ。このままでは数が減り続ける、同胞を見るのは嫌だからこそ賭けた。それだけよ」
「ヘスが良いなら、いいでつ。僕はいつでもヘスの味方でつから」
「良い子ね。もう夜も遅いわ、夜は眠りの時間よ」
「おやすみでつ」
「はい、おやすみなさい」
確かに私らしく無い。そう思われても仕方ないわね。でも、最近はこの地を探そうとしている人間がいる。幸いあの人間はたまたま、迷い込んだだけ。
あの子達は私の力の一つを知っているからこそ、信頼を完全に置いてくれている。守るわ。
あの人間の感情、他の人間とは違う。悪意も害意も殺意も欲も無い。そういうのは私には暗い濁った色で見える。あの人間にあるのは、多分私達への心配、同族への失望。それが大きかったと思う。
商人ではあるのでしょうけど、妖精の実の話を聞いても、欲望の色が無かった。賭けるならこれ以上の相手はいないと思って私は賭けた。
少し離れた位置で眠る彼、何故か他の子達に囲まれて寝苦しそうにしているけど・・・好かれている事はこれからの事を考えれば良い事だわ。
「私は、貴方と心中覚悟の賭けに出たのよ。期待しているわ」
私も寝るとしましょうか。この楽園の未来を願いながら。




