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異世界は夢だったけど予想以上につらい……だってタコだもん  作者: 第四素数と二の八乗
Ep.大陸戦役 Cランク ー カーネイジング・ポリプス
76/119

C-6 後/初戦

前回のあらすじ

・初めての一戦。

 血が流れていく。地面のどこか。広大な場所へと。

 魂が抜けていく。ここじゃないどこか。空白の隙間へと。


 押し倒された建物の陰で、他人の死の歩みを感じている。


 戦闘形態(バトラ)時は視覚の代わりに、空気の動きに過敏になる。


 だから、分隊長の放つ銃声も、ミシェルの弱くなっていく鼓動も。苦しげにあえぐその呼吸も。ゆっくりと流れ出るその命も。

 例えばその寿命さえも。

 全て、自分のこと以上に分かりやすい。


 だから、振り向いた時に、こいつが敵に向かって指をさした意味も。

 自分の事よりも分かる。


 友人の死を前に、俺は。


 ()に銃を向けた。


 ……ミシェル、少しでいいから耐えてくれ。



 敵の銃は30連射が可能。こちらの銃は連射不可能。

 圧倒的な武器の性能差を、ならば肉体の性能差で上回るための魔導軍服(マジックアーマー)


 壁のように迫りくる弾幕。それに対抗するは、マニュアル通りに分隊長の放った手榴弾。片手で放り出される指向性爆発が、周囲の弾丸を吹き飛ばす。


 重要となるのは、そこから。


 立ち込める煙の中を駆け抜ける。

 分隊長の位置は把握している。周囲一帯に俺たち以外の兵がいないことも確認している。


 ならば、煙の中にいるその集団が敵だ。


 敵兵の前に躍り出る。


 視覚ではなく感覚を以て、照準を合わせて発射。

 銃声だけでは足りない数。しかし敵に勝つには充分な数だけ、死体を量産する。


 敵の銃では、(本体)に届かない。

 しかし気を付けなければいけないのが爆発、砲弾。

 だが、ここまでの近接戦ならまず使われない。


 銃剣での刺突。銃床での殴打。銃口からの発射。分隊長からの支援射は、敵兵の体で防いでいく。


 煙が晴れる頃には、敵兵が消えていた。

                        ・

                        ・

                        ・

 戦闘終了。同時に戦闘形態(バトラ)を解除。「人間」と言う頸木に体が捕らわれる。かかる重力に血を踏みしめながら、緩慢にガスマスクを外していく。


 ゆっくりと、のんびりと息を吐く。

 吸い込む空気には鈍く煙が混ざっていた。


 一歩、また一歩と自身の為に歩みを進める。


 佇むは友の傍に。血だまりの中に膝を降り、沈む命へ語り掛ける。


「なぁ、ミシェル。……お前は、どうしたい?」


 口に出せるのはせいぜいがありふれた話題。その程度には現実の容認が出来ていない。


 見ると傷口は脚を複数を貫通。5㎜前後の傷口が、少年の命を奪っていく。

 痛みに麻痺したか、あるいは感覚が狂ったか。苦痛を感じさせない表情で、ミシェルは思案と共に答えた。


「僕は……また、帰りたい。」


 今までは出ていなかった涙が、ミシェルの頬を濡らす。

 感情の自覚をきっかけに、訓練されたはずの感情制御が崩れ去る。


「なぁ、聞いてくれよアキラ。怖いんだよ。このまま終わるのが怖いんだ。……何も出来ないまま、終わってしまうのが怖いんだよ!」


 狂乱したかのようにミシェルが叫ぶ。その叫びは凄惨に。その想いは悲痛に。

 涙を垂らしながら、最後の叫びが木霊する。


「嫌だよ。だって……だってあんまりじゃないか!まだ、何にもやってない!何にも……出来てない!

 なぁ、アキラ。僕は一体……なんで終わるんだ?何の為に?一体!何でこんなところなんだよ!?」


 何故、ミシェルが死ぬか。


 答えは至って簡単だ。

 ならば、答えることは俺の義務だ。


「ごめん、ミシェル。……俺のせいだ。

 俺が、俺がへまをしたからだっ……俺が、俺がちゃんとしてれば、お前は死ななかった。

 俺のせい……俺のせいだ!ミシェル、お前を殺したのは俺だ!頼む、俺を責めてくれ……なぁ頼むよ!!ここで必ず生き延びて!いつまでも待つからさぁ……!」


 気付けば、泣いていた。


「そ……んな…………こと」


 庇うように漏らした一言も、意識が失われて途切れる。


 俺とミシェルの付き合いは、たったの半年だ。

 それでも、その半年の間、共に苦しみ合い、共に研鑽し合い、互いに励まし合ってきた。


 趣味が違う。生まれも違う。ただ、一つだけ言えるのは、俺たちが二人でここまでたどり着いたという事実のみ。


 こいつは、こんなところで死んで良い奴じゃない。

 何か、何か手があるはずだ。何か一つぐらい出来るはずだ。


 ……そうだ。


 ミシェルの傷口に手を当て、言霊を以て在り方を書き換える。


「『タルゲット(対象)』『ミシェル』『べハンダルング(治療し)・ムラシエット(てくれ)』」


 掌から溢れる燐光は、その成功を証明する。


 血は止まった。生命は留まった。

 しかし、傷口が塞がらない。それまでの死を取り戻せない。


「待ってくれ、待ってくれミシェル!今――――」


 言葉は遮られる。肩に置かれた手によって。


「おい新兵、作戦は成功したらしい。退却するぞ。」


 ぶっきら棒に告げるのは分隊長。

 疲労をその顔に滲ませながら、煙草を箱から出している。


「……どうした、退却しないのか?さっさとしないと配給はもらえないぞ。」


「――――了解しました。これより退却を開始します。」


 ……これだから軍は嫌なんだ。

 綺麗ごとではなくして、規律。

 一つの死でなくして、軍の勝利。


 それを散々教えながら、上は大概が私利私欲の塊だ。


 ……いいや。なんかどうでもよくなってきた。

 ミシェルは軍医に診てもらおう。結局の所、俺には無理だ。


 投げ出された肩と足に手を回す。いわゆるお姫様抱っこに近い姿勢。



 …………『鑑定』お願いします。


_____________________________________

  〖種族:カーネイジング・ポリプス〗 年齢:2 Cランク

 Lv:7

 スキルポイント:850


 ステータス


 HP:1875/1875

 SP:1547/428

 MP:2107/1677


 速度:1567

 攻撃:1539

 防御:1399

 魔攻:1658

 魔防:1645


 職業:歩兵


 スキル


 攻撃系:『直剣術Lv10』『狙撃術Lv10』『銃剣術Lv10』『銃撃術Lv10』『打撃術Lv10』『長槍術Lv9』『衝撃強化Lv5』『鉄槌術Lv4』『毒攻撃Lv2』『剛腕術Lv2』『触腕術Lv1』『斬腕術Lv1』『曲嘴術Lv1』『奪腕術Lv1』『威圧Lv1』

 防御系:『対精神異常耐性Lv8』『小盾術Lv8』『鉄鎧術Lv7』『対魔法耐性Lv4』『対恐怖耐性Lv2』『対毒耐性Lv2』『対疲労耐性Lv2』『対衝撃耐性Lv1』『守腕術Lv1』

 魔法系:『マギラーチェ語Lv7』『風魔法Lv5』『水魔法Lv5』『土魔法Lv5』『火魔法Lv5』『強化魔法Lv5』『氷魔法Lv3』『魔力感知Lv2』『水精魔法Lv2』』『魔力調整Lv1』『闇魔法Lv1』『光魔法Lv1』

 技能系:『鑑定』『付与』『スキル作成』『イズべ言語Lv10』『反撃術Lv10』『貪欲Lv7』『激怒Lv7』『記憶保持Lv6』『智識Lv5』『過食Lv5』『生体探知Lv4』『勤労Lv3』『気配感知Lv3』『謙遜Lv2』『怠慢Lv1』『読心術Lv1』『隠蔽Lv1』『看破Lv1』『脅迫Lv1』

 固有系:『遊泳』『墨』『天恵的武才』『強固』『理解』

 特典系:『影が薄い』『繋げる一歩』『魔術』『ラプラス予測権限』『無貌王』『簒奪スル者』『無償機関』『超見眼』『星天力の権力者』

 称号:『オリジナル』『作り手』『過食せしもの』『貪欲なるもの』『智識もつもの』『激怒せしもの』『突然変異』『魔の道』『一兵卒』

_____________________________________


 ……8人でこれか。



 戦友と共に、俺は初戦を終えた。





 その後、ミシェルは一命を取り留めた。

 が、その足は切断され、両脚ともが義足に。車椅子に頼り切る生活となり、故郷へ帰った。


 初陣を生き残った半数は、さらなる地獄へと足を踏み入れていく。




 その戦に、終わりの芽は未だ芽吹かず。

七月七日ですね、良い日です。

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