C-2 人外と殺人鬼
前回のあらすじ
・公国入国。
数え切れないほどの人。
募兵に応じた公国の若者。
そんな彼らが1㎞四方に囲われた平野で日没を待ち受ける。
それは罪人も同じく。血に飢え、血を求め、咎を受けるべき者。彼らの罪は重犯罪。命を奪った殺人者。
集った少年たちは、その殺人者から一夜、この平原で生き延びねばならない。
武器は選択可能。俺の手にした武器は6世代型の魔導銃――――MGNーVer6。
鉄棒の上に張られた木材は冷たく、手に馴染まぬそれを、抱え込む。
俺の知っている銃とは構造が違う。
この銃はあくまでも、魔道銃。魔力を籠めることにより、弾丸の装填と弾薬の起爆までを行う。
先端に取り付けられているのは、刃渡り200㎜の銃剣。
……正直、まともに扱えるのは銃剣ぐらいだろう。銃の使いかたなんて知らないし。
あぁ、日没が近い。
全く、殺人者から一晩逃げ切れとか、どうかしてる。
隣には、列で話し合った青年。
よく考えれば、半日も苦楽を共にしながら名前も聞いていない。
そうやって思考を逸らそうとするも、恐怖が体から抜けない。
心音は響き続け、掌を伝う汗がそれを現す。
そして、日は傾き。
『入軍試験、始め!』
号令が、恐怖を耳から脳へと伝えた。
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号令と共に、若者は一斉に駆けだす。四方八方へ、己の意志で。
なんでも、号令と共に罪人が別の場所から解き放たれるらしい。だがもちろん、その場所は知らされていない。
……作戦の是非は問わない、なら。
ずっと隠れたままでもいいか。『影が薄い』の本領発揮と行こう。
それにしても凄いな、特典系スキル。『無貌王』、一日保つなんて。
途中で解けたらと思うと、仮初でも胃が痛かった。
それにしても、暗い……のは当然か。街頭も何もない平原。灯りになるのは月明かりぐらい。
探しにくいのは向こうも同じ。さっさと穴でも見つけて隠れようか。
人が一人入れる大きさの穴を探す。
探し始めて推定五分。崖下にちょうどいい穴を見つけることはできた。
あとはあそこに入り込んで、夜明けをじっと待てば終了。自ずと向かう足は速くなる。
支給された軍服を泥で汚しながら、体を捻じりこんでいく。
頭まで穴に入れば、外が見える程度に隙間を残し、自身の痕跡を消していく。
……暇だ。
流石に、こんな場所で寝るほど自分の強さに自信は無い。
だからと言って、ずっと神経を張っていられるほど余裕もない。
この試験、なかなか汚い。受付にあんな時間が掛かったのは一種の計略だろう。
……疲れた。
体の節々に石が押し当てられる。少しばかり息苦しい。耳に足音が響く。
足音は段々大きく。血の匂いを混ぜつつ。徐々に話し声も聞こえてくる。
「オメェ、今年で何年目だ?」
最初にはっきりと聞こえたのは、少し年を食った男の声。田舎の訛りが混じっている。
「あぁ!?8年目だよ、8年目!こっちの方が先輩だ!そこんとこ弁えろ!」
続いて聞こえたのは、粗暴な雰囲気を孕んだ少年の声。
「そだそだ。やっと思い出しただ。で、次はどないして殺すだ?」
「普通に殺すよ!フツーに!斬って裂いて殴って絞めて潰して嬲って!いつも通りの殺しさ!」
「そだな。じゃ、どこかに隠れて次に来るのを待つだ。」
体を、恐怖が覆った。
それは理解可能なものへの恐怖。悪意への本能的な恐怖。
「……なぁ、居ねぇか?」
息が、止まった。
くそ、なんで気付くんだよ!
「あぁ、ほんとに居るですだ。反応しやしたよ。」
……まさか、はったりだったのか?
「そうだなぁ、居るなぁ!最高だぜ!やっぱ居るぜ!殺せるなぁ!」
「ちょっと探してみますだ。……いや、すぐそこでしただよ。隠れるような悪い子は、逃がさないようにしないといけないですだ。」
土が押しつぶすように迫りくる。圧縮。圧縮。圧縮。土が体を押しつぶす。
くそ、耐えられねぇ!
押しつぶされるぐらいなら……!
「あーぁ。折角墓穴にしようと思っただのに。逃げられちまっただ。」
呟く男は、鋤を片手に。
「あ!?テメェ殺そうとしてたのか!ふざけんじゃねぇ!こいつはしっかりと手抜きせずに殺すんだぞ!」
騒ぐ男はナイフを両手に。
「分かりましただ。……ごめんなさいだ。殺させてほしいですだ。」
殺意を俺に、ぶつけてくる。
銃を握りしめる。
しっかりと大地を踏みしめる。
まずは、相手を探る。
『鑑――――
「時間がもらえるとでも思ったか!?あげねぇよ!テメェにゃ何にもあげねぇよ!」
ナイフが肩に食らいついた。
「ぐぁぁッ!」
叫び声を上げて、地面に倒れ伏す。
その姿勢のまま、這う。
「……なんだ、雑魚かよ。俺は、もっと強い人間を殺してぇんだよ!」
「そだそだ。こんな雑魚じゃ嫌だ。」
痛みの奥へ、その言葉が投げかけられる。
強い人間と、か。
霞みがかかった頭で、這いながら考える。
殺したいのが人間ならば。
「こいつ、捕らえますだ。」
男が地面に鋤を突き刺す。
直後、轟音と共に、大地が炎を噴き上げる。
「てメェ!一体何しやがったッ!?」
俺が相手じゃ、強い人間を殺すってのは無理だな。
なぜかモチベが絶賛爆上がり中




