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赤木ー2 月と獣と刀剣使いの日常を

前回のあらすじ

・考えた。


尚、これから世界の転生者編はおよそ1万字以上になります。

 暗い暗い部屋の窓から朝の光が差し込んでくる。それと同時に鐘が鳴り、一人の少年が布団から起き上がる。


 少年は起き上がると壁際まで歩いていき紙に何やらを書き込む。


「今日で13年目か。」


 少年はそうつぶやいた後扉を開けて、下の階へと階段を降りてゆく。

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                       ・

                       ・

 カレンダーに新たに一本の線を引いて俺は一つの事実に気が付く。


「今日で13年目か。」


 そう、今日でこの世界に転生してから13年目だ。誕生日は親に聞いたから合ってるはず。

 これで精神年齢は25歳。立派な大人、だな。

 この世界ではギリギリ子供として扱われるけど。それもあと二年か。時の流れってのは本当に早い。


 そんなことを考えて朝食の席へと向かうために階段を降りる。


 降りた先には新聞らしきものを呼んでいる巨漢の男がいる。狼のような顔と筋肉質な体の所々に傷を持っており、いかにも歴戦の戦士、というような風貌だ。


 そして俺の父親でもある。


「ああ、ヴィルか、おはよう」

「おはよう」


 なんか会話がぎこちない。でもまあ仕方ないよね。反抗期だし。


 ちなみにうちの親父、この村の戦士長である。なんだかんだこの一帯ではそれなりの権力者らしい。ちなみにさっき親父が俺の事を呼んだ「ヴィル」ってのは俺の愛称だ。

 今の俺の名前は「ヴィルコラク・ハンネギンス」。欧米と同じく苗字が先で名前が後だ。


 机を見たところ・・・まだ料理はできてないみたいだ。


 それよりも親父の読んでいる新聞の方が気になるんだけども。確か、紙って高級品だったはずなんだけどな・・・・

 あ、でもよく見たら紙じゃなくて板だ。こういったところに工夫を感じられる。


「できたわよー」という掛け声とともに料理が運ばれてくる。焼かれてジュウジュウと音を立てている肉。ゆでられた肉にかかった赤いソース。アツアツの肉饅頭。運んでくる女性の美貌とも相まってとてもいい絵面だ。自分の親を美貌っていうとは思わなんだ。でも、贔屓無しでもかなり美人に入ると思うよ。


 なんで朝から熱い肉料理だけなんだか。まあ、仮にも俺の誕生日だしな。大々的に祝うってことは無いんだろうけど。


 何でもこの世界では15歳で成人式を迎え、それを終えるとついに大人の仲間入りとみなされるらしい。

 ちなみに7歳で誕生式を迎え集落中で祝われるんだけど。あれは楽しかった。集落中の狼人およそ300名が祝ってくれるんだからな。珍しく親父が泣いていたりと意外なことが多かった。前々から先輩方の誕生式を見てきたけれどもやっぱ自分が主役だと楽しみは倍増だわ。


 まあ、それは措いておこう。取り敢えず手を合わせてから食べ始める。他の家族も手を合わせてから食べ始める。これはこの集落の習慣の一種らしい。これは偶然だろうか?


 そんなことを考えながら朝食を続ける。カチャカチャと食器にフォークが当たる音がする。


 うちの家族は両親と俺と居候している叔父の四人住まいだ。俺は一つ部屋を貰えてるんだし、かなり優遇されてる方だろう。ほとんどの知り合いは一家全員リビングで寝てる。


「それでは今日も仕事に行ってくるよ」


 そう言い、親父は席を立つ。


「そんじゃ、俺も」


 そんなことを言いながら叔父も食器を片付ける。


 この二人の仕事は狩りというか、戦いだ。親父がこの集落の戦士長で叔父が副戦士長。


「そんじゃ俺も水を汲んでくるよ」


 そういって席を立つ。

 さっき言った通り今の仕事は簡単に言うと雑用だ。それでも、成人式を終えると戦士団に入ることがすでに決定されてる。いわゆるエリートって奴かな。まあ、仮にも戦士長の息子だしね。

 そういえば今日は何を狩る予定なんだろう?


「そういえば、今日は何を狩るの?熊?鹿?」


「いや、今日は森でBランク相当の蛇の魔物の目撃情報があってな」


 蛇、か。良いんじゃないかな。美味しいし。


「今日の晩飯は蛇だな。

 それじゃ行ってくる」

「おい、仕留めれるとも限らないのに変な約束すんなよ・・・」


 今日も叔父さんは親父をからかってるな。いつも通りのいい仕事だ。


「そんじゃ母さん。俺も行ってくるよ」


「ああ、ついでに薪ももらってきてちょうだい。そろそろ冬に備えなくちゃ。もう秋だもの」


 そんな季節、か。


「じゃ、行ってきます」

                        ・

                        ・

                        ・

 冷たい金属でできたドアノブを回し、家から一歩を踏み出す。


 秋特有の灰色の雲と、美しい青。そして、朝日の光が新たな一日を知らせている。


 玄関の目の前にある階段を降りていき、村の広場に出る。石畳の敷かれた道を歩いていき、広場の中心にある井戸の列に並ぶ。


 うちの家は井戸に近いから良い。広場のシンボルみたいなことになってるぐらいだからなうちの家は。


 列に並んでいると、前の狼人が話しかけてくる。


「よお、ヴィル。今日は彼女さんと一緒じゃないのかい?」

「彼女なんていねえよ。デタラメ言うんじゃねえ」


 こいつは去年成人したばかりの新米戦士のお隣さん「ウェルフ・ネンドロス」だ。いっつも俺をからかってくる。

 それより今日の狩りに行かなくてもいいのか?こいつは。


 全く、みんなして俺を勝手に彼女持ちにしやがって。まだ持ってねえつうの。彼女いない歴=年齢+13年だよ。なんか、泣けてきた。


「なんだ、まだくっついてねえのか。お前らさっさとくっついちまえよ。さっさと自分の気持ちを言わねえと、あんないい女二度は現れねえぞ」

「そういうのはまだ早いって・・・せめて成人してからにしてくれ」

「つまり、あと二年待てばいいわけだな。そうすれば連日祭り騒ぎじゃねえか。戦士長の息子と村長の孫娘ならちょうどいいじゃねえか。二年後、頑張れよ」


 こ、こいつ!


「テメエ、ここでのんびりと喋ってていいのか?今日は親父がBランク相当の蛇の魔物を狩りに行くって言ってたぞ。多分今は門の前で集合してるんじゃねえかな?間に合わなかったらどうなることやら。まあ、病気でもないだろうから遅れるなんてことは無いと思うけどなぁ?」

「ちょ、お前、そういうことは早く言えよ!やっべ、さっき一の鐘鳴ったじゃねえか!くそ遅れちまう!」


 そんなことを叫びながらウェルフは走り去っていく。おーい、バケツ忘れてんぞ―

 あ、気付いた。走って戻ってきた。まあ、忘れたら母親に怒鳴られるからな。説教で集合にも遅れるだろうし。ま、頑張れや。


 井戸の順番を待ってしばらくすると、一人のかわいらしい少女が列の後ろに並んだ。要するに俺の後ろに並んだ。

 身長は俺と同じぐらい。彼女の持つこの村じゃ珍しい白髪が日の光を反射してきらめいている。その肌は絹のように滑らかで、傷一つついてない。彼女の持つ薄い赤色の双眸が俺の目を見つめる。


「おはようヴィル。今日も早いね」

「お、おはよう」


 彼女の名は、「エリー・アンデレン」この村の村長の孫娘で、俺の家とは井戸を挟んで向かいにある。


 彼女の来ている服は麻のワンピースなのにうちの母さんと同等の、いや、それ以上に美しい。少なくとも俺はそう思う。ついでに言うとさっきウェルフが「俺の彼女」ってからかってたその「彼女」ってのは彼女だ。ちなみにいうと俺の幼馴染であり、現在絶賛片思い中である。


 ま、俺の個人的な論理によって告白とかいうのは15までする気もする可能性もないですがね。むしろ、15になったらする予定があるということを褒めて欲しい。


 アルビノだからなんだかんだあったらしいけど、魔法の才能も凄いし、同世代の間じゃ結構狙ってるやつは多い、らしい。結構多くの奴らが玉砕してるらしいけどね。ま、君たちには経験というものが足りてないからね。仕方ないよ。


 井戸で水を汲むために並ぶのだが、彼女と話す話題もないので・・・気まずい。こんなことになるなら、ウェルフは追い払わなくてもよかったかもしれない。

 いや、あいつがここにいたら確実にからかうから追い払って正解だったか。


 そんなことを考えながら、井戸の水を汲む。

                        ・

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                        ・

 ふう~。これで朝の雑用は終わりっと。そんじゃ、現状確認と行きますか。


 取り敢えず、『鑑定』から。


 ____________________________________________________________


 〖種族:狼人族〗 年齢:13 Dランク

 Lv34 スキルポイント:6780


 ステータス


 HP:967/967

 MP:856/856

 SP:899/899


 速度:1001

 攻撃:1087

 防御:802

 魔攻:1024

 魔防:789


 職業:剣士


 スキル


 攻撃系:『直剣術Lv10』『曲剣術Lv10』『大剣術Lv10』『細剣術Lv10』『太刀術Lv10』『直刀術Lv10』『曲刀術Lv10』『木剣術Lv10』『双剣術Lv10』『長剣術Lv10』『短剣術Lv10』『投剣術Lv10』『魔剣術Lv10』『聖剣術Lv10』』『剛剣術Lv10』『壊剣術Lv10』『鋸剣術Lv10』『傾刀術Lv10』『波剣術Lv10』『両剣術Lv10』『鎌剣術Lv10』『突剣術Lv10』『剣聖術Lv10』『斬撃強化Lv10』『格闘術Lv10』『獣爪術Lv10』『獣牙術Lv10』『剣神術Lv8』『威圧Lv6』『小斧術Lv6』『殺戮術Lv6』『魔拳術Lv5』『魔爪術Lv5』『魔牙術Lv4』『衝撃強化Lv4』『暗殺術Lv4』『遠吠えLv3』『命刈りLv2』『斬首Lv2』『腹斬りLv2』

 防御系:『対火耐性Lv8』『対熱耐性Lv8』『剛毛Lv8』『対恐怖耐性Lv7』『対疲労耐性Lv7』『対打撃耐性Lv6』『対衝撃耐性Lv5』『対威圧耐性Lv4』『対隠蔽耐性Lv4』『対水耐性Lv4』

 魔法系:『強化魔法Lv7』『火魔法Lv6』『創造魔法Lv5』『黒魔法Lv2』

 技能系:『鑑定』『イズべ言語Lv10』『気配察知Lv10』『隠蔽Lv9』『加工Lv9』『算術Lv9』『HP消費緩和Lv9』『SP消費緩和Lv9』『MP消費緩和Lv9』『勤労Lv8』『栽培Lv8』『労働Lv8』『高慢Lv8』『細工Lv7』『貪欲Lv6』『生体探知Lv6』『HP高速回復Lv5』『SP高速回復Lv4』『純粋Lv3』『接待Lv3』『MP高速回復Lv3』』『駆け引きLv1』

 固有系:『満月の夜』

 特典系:『刀剣使い』

 称号:『魔物ハンター』『戦士の息子』『剣士』『勤労なるもの』『暗殺者』『高慢なるもの』『労働者』『修羅』『貪欲なるもの』


 ____________________________________________________________



 うん、まあまあってところかな。これなら多分、たいていの魔物に負けることは無いと思うし。それでも流石にCランク一体で限界だと思うけどね。Dランクなら大丈夫だろうけど。まあ、武器があるかないかにもよるのかな。


 ちなみに、『鑑定』では名前が表示されないらしい。なんでかは知らない。だってこの村に『鑑定』持ちは俺しかいないんだもん。それなりにレアスキルらしいし。


 それと、固有系スキルの『満月の夜』は狼人族の中でも俺達、フルーン族しか持ってないらしい。何でもこのスキルのおかげで他の獣人族に比べても人間にとても近い見た目らしい。まあ、夜になるとそうでもないんだけどね。名前と違って満月は関係ないそうだ。


 まあ、そんなツッコミが無くなるほどのぶっ壊れ性能だったからね、これは。


 まあ、その詳細は今じゃなくて夜でいいか。それじゃ、次。


 特典系スキル『刀剣使い』。

 これがまたとんでもない性能だった。

 あのふざけた鑑定結果からは想像もできないぐらいの。


 なんかやけに多い攻撃系スキルのほとんどはこれによるものだもん。まあ、細かいことは修練場とかでまた確かめよう。


 ちなみにこの世界にはステータスの成長を補助するスキルはないみたいだ。どういう仕組みでステータスが増えるのかはよくわかっていない。


 さて、暇つぶしにでも修練しに行くか。


 取り敢えず・・・水の為に革袋でも持って行っておこう。

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 この村における「修練場」とは、少しだけならされた土地を木の柵で囲んだ広場である。

 子供はここで修練を行い、様々なスキルを覚えていく。ちなみに俺だけ剣術関連のスキルを覚えるのが異常に早かった。ま、他にも一人頭一つ抜きんでて魔法関連のスキルの取得の早い子――まあ、エリーなんだけど――がいたからまだ楽な反応だったけど。


 さて、今日は何人が修練に来てるのやら。そんなことを考えつつ修練場を覗くと、およそ、20人ほどの子供が修練しているのと、数人の大人が子供に説明している光景が視界に入った。


 うんうん、いい仕事してる。ちなみにエリーは・・・いないか。ま、大方勉強だろう。

 さて、仕事を頑張っている大人の皆様方に挨拶でもしてやるか。


「よお、仕事ははかどってるか、ウェルフ?」


 いや~、仕事が楽しそうで何よりだなぁ。


「て、テメエ!なんでここに居やがる!?」

「なんでも何も、修練するために決まってんだろうが。なあ、練習に付き合ってくれよ、戦士さん?」


 そう言いながら俺はウェルフの肩に手を回す。


 でもこいつこう見えてなかなかやりやがるんだよなあ。下手すると親父にも勝ってるし。昔、二、三回負けたっけな。


「あ~、分かったよ。ここで断ったらどうせ、戦士長に告げ口すんだろ?

 じゃあ、ここで負けた方がましだ」

「お前、負けるの前提で戦うのかよ・・・

 おい、今から模擬戦始めるぞ!場所開けろ!」


 よし、これでこいつもしばらくはさぼるなんてことしないだろう。なんか後ろで「嵌めたな!」とか聞こえるが気にしないさ。さてどの木剣にしようか。

 ____________________________________________________________

 【木剣】

 質が良い。軽くて、丈夫。

 ____________________________________________________________

 一番質がよさそうなものはこれかな。


「ウェルフ、準備できたか?」


 取り敢えず、あいつにも聞いておく。


「ああ、出来たよ、負ける心構えが」

「お前、俺が本気でやったと判断しなかったら親父に言っておくからな。覚悟しとけ」

「てメ・・・覚えとけよ・・・」

「ルールは・・・そうだな、魔力を使って能力を強化するのは、禁止。使っていいスキルは、剣術関連だけでいいか?」


 手で木剣をくるくると回しながらウェルフに問う。

 そんな俺を余所にウェルフは木剣を構える。


「その反応は肯定でいいな。そんじゃ始めるか。誰か合図頼む」


 その中で一人、手を挙げる。確か、あいつは・・・エリーに振られたウェルフの弟のフェルフじゃないか。

 兄に振られたのからかわれてる腹いせだな、絶対。

 お、ウェルフの奴が睨んでやがんの。


「両者、構えよ」


 その言葉を聞くなり俺とウェルフは木剣を構える。

 うん、やっぱりいい構えだ。『剣術Lv8』は伊達じゃねえな。


「では、はじめ!」


 その声と共に両者が木剣で切りかかる。ウェルフは上から真っ直ぐに振り下ろし、俺は、左斜め下の地面から木剣を切り上げる。


 ウェルフの振り下ろす木剣を右に半歩避けて躱す。奴の木剣が肩より下に下がったら木剣を右脇腹めがけて切り払う。当たらなくてもいい。。それよりも土での目つぶしが目的だから。


「が、目が!目がぁ!」


 某大佐みたく悶絶しているウェルフの左肩に両手で持った木剣を容赦なく、振り下ろす。


「痛ぇ!くっそが!」


 ウェルフが鳩尾めがけて突き出してきた木剣は次は左によけながら木剣を逆手に切り替え、顔にめがけて木剣を持ちながら半回転する。

 それをウェルフは木剣を顔の前で建てることにより対応。それを見た俺は横に攻撃するのではなく、上に手を向かわせ、逆手から両手に切り替える。

 ウェルフが振り下ろしてきた木剣を後ろに下がりながら躱し、奴の頭部に木剣をたたきつける。


 が、流石は現役の戦士というべきか木剣で受け流され失敗する。


 なので、左足で腹を蹴ってやる。後ろに飛んでったウェルフの首元めがけて木剣を振って・・・


「止め!試合はそこまで!」


 ウェルフの首元に木剣を添えながら試合終了の合図を聞く。


 まあ、こいつに負けるのはよっぽどのことがなきゃ負けんよ。伊達に転生チートは持ってない。


 それにしてもいつもより時間かかっちまったかな?目をつぶすのはいい案だと思ってたんだが、効果はいまいちかな。まあ、もう用事もなくなったし、帰るか。

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                        ・

 さて、今日の午後は何をしましょうかね?

 あ、待てよ。今日って親父たちが蛇狩ってくるから、夜ご飯は広場で食うのか。じゃ、窯とかの準備しねえといけねえじゃん。

 あ~、手伝うの面倒くせえ。あの窯重いからな・・・まあ、『満月の夜』のおかげでまだマシだけど。あれがなかったら死ぬぞ。


 どうせ後で朝とは別件で薪作って来いとか言われるんだろうし、今のうちに作っておくか。

 はあ、また階段降りるのか。いやまあいいんだけどね。


 一階まで降りた後、村長の家の隣にある共同倉庫に向かい、斧を一本手に取る。今度は家の隣にある、共同の材木置き場から何本かの丸太を取り、家から持ってきておいた縄で纏めて縛り付ける。


 その木を家の庭まで持っていき、何個も何個も薪を作り上げる。

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                         ・

 日が沈む直前に、村に鐘の音が響き渡る。


 親父たち戦士団が帰ってきたみたいだ。


 さて、Bランクの魔物とはどんなものかな?あ、ウェルフは結局行ったんだろうか?


 庭から出て、村の広場を目指す。親父たちがとってきた獲物は今日も異常なほどに多い。


 鹿、熊、猪、鳥などなど


 その中央に鎮座しているのは布をかぶせられた巨大な物体。

 広場におよそ、200人ほどが集まるとその中身が露わにされる。


 巨大な蛇だった。とぐろを巻かれているので長さはよく分からないが、その太さは木よりもはるかに太く鱗は夕日を反射してきらめいている。そしてその鱗の一部は剥がれており、数え切れないほどの傷を持っている。その中でもひときわ大きな傷が頭と体を切り離しており、見る者にとってはショックとなるだろうが、この広場に集まる餓えた狼にとっては関係のない事であり、今から食べることになる食材としか見ていない。


 そして、夜の宴に準備が始まる。誰かが合図したわけでもなく、きっかけは日が沈んだ、ただそれだけ。


 窯が運ばれ、火がくべられ、獲物が捌かれ、飯が作られる。


 黄金と白銀に輝く二つの大きな月と、赤く彩る小さな月の下、『満月の夜』により、剛毛に体を覆われ強靭な顎と鋭利な爪を生やした狼たちが宴を楽しむ。


 それにしてもやっぱり、飯は秋に限るな。冬眠に備えて沢山栄養を蓄えてるから、滅茶苦茶うまい。

 さて、同年代の奴らはどこかな・・・いた。


「よお、ヴィルじゃねえか。一緒に食おうぜ。こっち来いや」

「ああ、すぐ行く」


 声をかけてきたのはエイヌルフ。俺たちの年代でのリーダー的な存在の奴だ。

 模擬戦では同年代相手に――俺と戦ったのを除いて――全勝らしい。


 まあ、こっちだって伊達に特典系スキルは持ってないからな。あれのおかげでほとんどの剣術関連のスキルをマスターできたし。普通ならLv10のスキルは何個も持ってるもんじゃねえよ。


「で、お前は誰狙ってんだ?」


 エイヌルフの奴開口一番こんなことほざきやがった。つーか、この村の奴らこういうことの経験速すぎじゃねえか?いやマジで。


「エイヌルフ、そんなの聞く必要ねえだろ。誰だか一発で分かるじゃん」


 そういったのはルプス。エイヌルフといっつも同じところにいる。そして、エイヌルフと一緒に俺に絡んでくる


「ああ、そっか。お前はエリー一筋だった――ガフッ!」


 バカにされてるとしか思えなかったので、腹パンしとく。


「次からは顔殴るからな」


 こうやってくぎを刺すのも忘れてはならない。


 まあ、たいして意味もないだろうが。そろそろメインディッシュが出るころじゃないだろうか?早く蛇を喰いてえんだが。


「蛇の調理終わったぞ!食いたい奴は並べ!」


 来た来た。ちなみにこの際、食器はセルフサービスである。こういう時に早く食えるかっていうのは食器の用意で決まる。

 ちなみに俺は魔法で木製の器を作る。


「あ、ヴィル!魔法で作るのはズルいぞ!待て!」

「こういうのはできる奴が悪いんじゃなくて、出来ない奴が悪いんだよ!後でな!」


 そう言い捨てながら料理を貰いに行く。

 いや、「言い捨てる」とはニュアンスが違うか。


 今日何度目になるかもわからないようなことを考えながら、大鍋のそばにいる一人の狼人に器を差し出す。


「一番はまたヴィルか。お前、なんでそんなに早いんだよ」

「秘密は食器の用意だよ。これ以上は言えんが」


 そんなやり取りを交わしながら今回の料理を貰う。


 カボチャのスープだった。ただし、中の具は蛇の肉。なんか、カオス。

 いざ、実食と行きたいけども、ちょっと待っておくか。


 折角だし、同年代全員で食おう。飯は皆で食った方が旨い。ま、いつもみんなで食ってるんだけどね。


 お、ひとり来た。流石に二番はエイヌルフか。伊達にガキ大将やってない。


「なあ、エイヌルフ、今日の模擬戦、誰が戦うと思う?」

「ハアハア、んなもん、どうでもいいだろ。それより、ああやって、ハア、魔法使って、器作るの、禁止に、しろよ」

「自分の力を使うのはお前もやってるだろ。じゃあ、いいな。以上、終了」


 そういって、丸太の上に寝転がり、これ以上話を続ける意思がないことを示す。


「ちょっと、魔法の鍛錬するから、全員来たら起こしてくれ」

「あ?ああ、分かった」


 取り敢えず、ナイフ作る練習でもするか。



 イメージとしては、サバイバルナイフ、かな。


 そんじゃ。


「『創造』」


 そう唱えた直後、一本のナイフが空にかざした右手に現れる。文句はない、かな。魔力消費が多い気がするけど。それは問題には入らない。


 取り敢えず、近くにある木に投げて、刺しておく。切れ味は悪くない。


 その作業を二本、三本と続けていく。

 そしてナイフをおよそ40本ほど作っって、今度は鉈を作ろうとしたときに声がかかる。


「おい、ヴィル。もう全員集まったぞ。そろそろやめろ」


 もう集まったのか。見ると確かにいつも一緒に食ってる16人がすでに集まっている。

 正直、全く気付かなかった。まあ、集中してたんだし、許してくれ。


「そんじゃ、食べるか」


 その言葉に反応して、15人全員が手を合わせる。


 それではいざ、実食。


 スープを木のスプーンを使って掬い取る。じつに美味しい。


「おい、ヴィル。模擬戦しようぜ。さっさと食えよ」

「お前、もう喰い終わったのか・・・すぐに食うから急かすな」


 エイヌルフとの戦績はどうだったっけ?まあ、負けは絶対になかったと思うけど。


 おっと、これで終わりか。そんじゃ模擬戦だな。


「覚悟しとけよ、ヴィル。次こそは勝つ!」


 そう言って飛びかかってきたエイヌルフに木剣を振り下ろす。


 結果、圧勝した。

 ゴメン、エイヌルフ。

 悪気は・・・なかったといえない。さっきからかわれた腹いせで力込めすぎたかな。


「大丈夫か?エイヌルフ?」


 大丈夫か、こいつ?痛そうだな、これは。被害者じゃなくて良かった。


 直後、広場の方から歓声が聞こえてくる。

 模擬戦が始まったみたいだ。


 エイヌルフを担いで、広場の方へと向かう。こいつなんだかんだで重たいんだよな。成長期だから。

 まあ、スキル『労働』のおかげで大丈夫なんだけども。


 さて、今日戦ってるのは誰かな・・・


 ああ、親父とウェルフか。これいい試合じゃないか?親父はどちらかというと攻撃重視のパワータイプなのに対し、ウェルフは速度重視のスピードタイプだからな。親父は「戦いにくい」って言ってた。


 ウェルフのヒットアンドアウェイに親父は何とか対応できてるんだよな。速度だけ見たらウェルフは村でも一、二を争う速度なのに。


 ウェルフは木剣を親父の腹に刺そうとするが、躱される。すると、今度は、背中に刺そうとする。しかし躱される。これの繰り返しだな。


 このままじゃ親父か?ウェルフの方が、疲労は大きそうだ。



 そう思っていたところ、ウェルフがとうとう親父に木剣を当て始めた。


 親父は結局・・・負けた。


 そろそろ、世代交代が近付いているのだろう。親父はまだ辞める気がなさそうだけど。多分、俺が入るまでは辞めないよね?


 まあ、なんだかんだで時は過ぎてゆくのだろう。


 過去はどうしようもないからあきらめよう。でも。


 今、こんな幸せが続いてほしいと願っても、叶うかは知らないけど・・・


 今の瞬間を大切に生きよう。


 今日も月がきれいだから、きっと明日もいいことがあるはずだ。

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「――しかし、このままあの獣どもを放置しておいてよいのですか?奴らは近頃、狩りの範囲を広げたため、我々人間の狩人の獲物が()()()()ような事態も発生しております。

 どうか、奴らを滅ぼす許可を。既に帝国と王国の長の許可は取っております。神からの鉄槌を獣に下す許可を、どうか」


 皇座に座る神皇に向かい、獣人を殺す許可を訴える男に神聖皇国の長は言う。


「本来なら、獣ごときの話で我の時を使わせるなど不敬極まりない事ではあるが・・・貴様の働きに免じて許してやろう。

 許可ならやる。5年以内に成果を上げよ。一匹残らず、獣人どもを殺せ。神聖騎士団団長ベステルング・コマンデよ」


「御意に」


 そういって、ベステルングは部屋を出ていく。


「ようやく、許可を得られたか。

 部隊の編成に半年。訓練に一年半といったところか。

 二年後、また戦場に戻れるのか・・・ああ、楽しみだ。待っていろ、獣ども。血の味を舐めさせてくれ。


 ・・・失望、させるなよ?」

 

狼人だし、少しはハロウィン感もでましたかね?


読んでくれなきゃイタズラしちゃうぞ?

評価くれなきゃモチベーションが落ちてしまうぞ?

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