Eー6 オンソル海戦(追憶)②
前回のあらすじ
・オンソル海戦
『謙虚』。
魔王殺しに付き添い、『英雄』の認める強者の一人。
なお、正確には『七美徳』のひとつであり、ありとあらゆる生物に対して有効な攻撃を行う、スキル『謙虚』の保持者のことを言う。
その『謙虚』の能力は相手を下げること。
『七美徳』の中でも最も効果のヤバイスキルのひとつを持つ化け物。それが『謙虚』だ。
歴代の『謙虚』による戦績は「勝利」のみ。
その相手には、ティシュトリヤさんとソロモスさんという、二人の魔物への転生者も含まれている。
それが『謙虚』。
世界でも有数の強者、『七美徳』の代表。
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{『謙虚』は、いや奴は俺らを視認してもなんとも思ってなかった。俺らと目が合った時の表情は忘れらんねえ。
恐怖が奴の顔にあったよ。}
・・・恐怖?
{正直、勝てるんじゃねえか?って思った。
まあ、そんなわけねえが。}
{え?でも相手は世界でも最強クラスなんじゃ・・・?}
{ああ、そうさ。
でも、本当に奴は自分に自信がなさそうだった。きっとお前も油断する。}
{そう、かも・・・しれませんが。でもなんで『謙虚』はそんな表情を?}
{だって、あいつは心底自分の事を弱いと思っているから。
まあ、いいんだ。そこは。
奴の恐ろしさはそこじゃない。}
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あいつはたった一撃で魔物を殺していく。
一撃だ。
もともと『対人軍』は参加条件にD以上というのがある。
そして、全ての人のランクはDランクだ。
人はDランク相手に多人数で勝てればベテランの戦士。
Dランクを単独討伐することができれば一流。
それが人の常識だ。
それを『謙虚』は壊していく。
それが、『謙虚』。
それがかの有名な戦士、『魔王殺し』の一味。
奴は魔物を殺していく。死んでいくやつらには共通していることがある。
「なぜ?」と考えて死ぬことだ。
ただ、奇跡的に生き残った俺にはわかる。なぜ奴に負けるか。
俺らは奴によって力を封じられる。否、損なわれる。
弱体化させられるんだ。
そしてあのときの俺らもその例外ではない。気付かぬうちに、いつもできた「当たり前」が「当たり前」じゃなくなる。はっきり言って怖かったよ。
あいつは――――ソロモスは困惑してたね。頭の上に?が浮かんでるようだった。
あいつの得意な「岩弾」も使えないようだった。
俺だってそうだ。
攻撃が利かない相手なら何度も出くわした。でも、攻撃が撃てない相手とやるのは初めて。分かるか?その恐怖。手も足も出ないってのはうまいこと言ってるよ。分かりたくなかったよ、あんな恐怖。
『謙虚』にはちゃんと攻撃はしたさ。ほっとんど効いてなかったけどな。全力が出せねえってのは怖えもんだな。
『謙虚』は近づいてくる。顔に恐怖を張り付けながら。全く面白いもんだよ。怯えている奴に殺されんのは。
まあ、『謙虚』は一歩一歩確実に進み、一体一体確実に殺す。奴の前じゃ、ぶっちゃけどんな抵抗も無意味だ。どんなに努力しても、その努力を鼻で笑いながら――――否ともに怯えながら結果を消す。
奴が俺らを攻撃するまでの時間は本当に短かった。まず、俺が狙われた。
そしてソロモスは俺と『謙虚』の間に立った。
俺に向けて放たれた攻撃を庇い・・・死んだ。その攻撃はソロモスを殺しても止まらず、俺に多大な傷を負わせた。
『対人軍』としては勝ったが、俺は負けた。