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まじょカル  作者: リトナ
まじょカル×魔女×シスター ~第二章 相交わる惨禍~
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第九話 暗躍

 一時間前――――


 ある高層ビルの屋上でスコープ越しに眼鏡を通して浅間の町外れにある林を覗き込む男がいた。


 外見は男性というより男の子といった方がまだしっくりくる。少年から成人にかけてのちょうど中間辺り。トレードマークの眼鏡を耳にかけている。


「ん~、やっぱり木が邪魔でこれじゃよく見えないなぁ……」


 全長130センチを超えるライフル備え付けのレンズから目を離し、近くに置いたままのノートパソコンの画面をチェックする。


 画面には六分割された各地の場所が映っており、精密監視カメラが現在リアルタイムに捉えている映像だ。


「……こっちでも確認できないか」


 悔しそうにしながらも、軽快にキーボードを叩く少年。


 先ほどまでの烏の化物らを彼女たちが倒してくれたのは確認できた。だが一体が孤児院に向かったのを知り得たが、それ以上の情報を手に入れることができずにいた。


「くそ! ……いったい、どうなってるんだよ……!」


 キーを叩く指に力が入る。


 瑞原薙斗――――彼が今、孤児院周辺にいるのは知っている。


 マジョカルである彼と孤児院に向かった化物が接触すれば衝突は免れないはずだ。だが戦闘が起こったような形跡は見当たらない。


 間もなくして林の中で烏の相手をしていた二人組が瑞原薙斗と合流した映像が映し出される。画質は良いのだが音声まで拾えないのが残念だと少年は思った。


 しばらく建物周辺を調査? らしき動きを見せた後、何かを三人で話したかと思ったら、驚いたことに三人が孤児院から離れ始めた。


「何やってるんだよ! 『先輩』たち!!」


(――――そこに魔女がいるんだよ!!)


 心の中でおもいっきし叫んでみたが当然当の本人たちには届くはずもない。


 焦る気持ちを抑えることができず、ついブラインドタッチする指が激しくなってしまう。


「…………珠々香……!!」


 焦るゆえに無意識に(こぼ)れてしまった彼女と同じライトブラウンの髪色をした少年は、自分の口から出た言葉に今も気付かずにいた。




    ***



 普段、皆で食事をする時に使う和室で、畳の上に仰向けに寝そべって考え事をしている俺――瑞原(みずはら)薙斗(なぎと)は現在、月之杜(つきのもり)神社に一人戻って二人の帰りを待っている。


 逢花と水葉のバイトが終わるまでまだまだ時間はあるのだが、俺はそれまでの間、昨日今日あった出来事を思い返していた。


「な~んか腑に落ちないんだよなぁ……」


 スマホの画面……受信済みのメールフォルダを開く。


 気になっているのは今朝のマジョカルからのメール。



『浅間にて……新たな魔女現る…………早急に討つべし』



 まだ本部では俺がマジョカルを抜けたことをレンから伝わっていないのかと最初は思ったが、あれから一週間過ぎている。情報の重要性を散々説いてきたマジョカルの連中にとって一週間もの連絡の遅延など、よくよく考えたらそんなわけあるはずない……。


 今の俺にこのメールが送られてくること自体が異常なことだと言える。


 レンは上に報告していないのか? なぜ?


 これに関しては本人に直接聞かないとわかるわけがないのだが嫌な予感がして考えずにはいられなかった。


 どのみちレンじゃなかったとしてもマジョカルの存在を知る以上、ただの一般人からのメール……というはずもない。レンとは別のマジョカルからなのか、マジョカルを知る第三者……例えば魔女自身が俺たちをおびき寄せるために送ったとか、つい二時間ほど前のように妖魔が絡んでいたのだろうか? いろいろ悪い考えが浮かぶ。


 妖魔…………そう、事件の始まりは烏だ。


 公園で烏に俺が襲われた次の日にこのメールは送られてきた。そして調査開始してすぐに妖魔に出くわし戦闘となってしまった。


 何が一番さっきから気になっているのかと言うと、昨日からの一連の経緯(いきさつ)がタイミング良すぎるのだ。


 有り体に言えば、裏で誰かが糸を引いている――――そんな感じだった。


 いくら考えても答えを見つけることができない俺の元にメールの着信音が響く。内容はまたタイミングよく事態を動かそうとしているのかのような、無視することもできない文面だった。


「くそっ!!」


 勢い良く上半身を起こし立ち上がる。


 送信者はまたしても朝と同じメール主から。正直信用できないが、これが本当ならかなりマズいかもしれない……



『孤児院にて、里親現る』



 どこの孤児院かも書いていないのに、俺はこれを読んですぐにこの島に着てから唯一知っている孤児院を思い浮かべた。


 里親が来るのは明日の午後六時頃のはずだ。一日早まったのか? それにしたってこんな時間にいきなり尋ねるなんて妙だ。


 部屋にある時計の短針は九の数字にほぼ差し掛かっている。逢花と水葉のバイトが終わるまで、あと一時間半。メールを信じるならば、二人を待っている時間はないかもれない……。


 間違いなく俺たちの知らないところで誰かが何かを企てている……そう、俺は確信した。

 

 メールの内容の真偽はともかく、孤児院に行けば何かがわかるかもしれないし、本当に何かあってからでは手遅れだ。そうなると俺のするべきことは決まった。


 ――――珠々香ちゃんのところへ急がないと!!



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