第四話 凶鳥の行方
「今日は皆さんに転校生を紹介します。瑞原君、入ってきなさい」
担任となる細身で猫背の還暦近そうな男性教師から呼ばれるまで、俺は教室の外で待っていた。担任教師と予め決めていた手筈では、呼ばれたら教室の中に入り自己紹介をすることになっている。
ドラマや漫画なんかでよく見る光景を自分が体験することになるとはなぁと思いながらも、どう自己紹介をしようかと思案していたのだが、結局良いのが思いつかなかったので、簡単に済ますことにした。
担任のいる横に行こうと教壇に上がる。
教室内が思い思いにざわついたので、担任が注意し再び教室内が静寂に包まれる。
その中に逢花と水葉の姿を見つけ、俺は声に出せない衝撃を受けた。
これはたまたま……なのか?
どうやら二人も同じクラスになることを知らなかったらしく、驚いたような顔をしている。
「瑞原薙斗です。一週間ほど前に引っ越してきてばかりなので、この街のことはまだわからないことが多いと思いますが、よろしくお願いします」
挨拶が終わると疎らだが拍手が起こる。
拍手が鳴り止むと、担任が空いてる席に座るように勧めてきたので俺は素直に従うことにした。
俺の席は窓際の最後尾でどうやら知った顔のすぐ後ろみたいだ。
「どうして、あんたがそこなのよ……」
「今、先生が言ったとおりで、俺が決めたんじゃないんだけど……」
前の席に座る知った顔とは音羽水葉である。
助けを求めて逢花を見ると、なぜかガッツポーズをしていた。
ちなみに逢花の席は水葉の隣。
そのことからして、席の決め方は名前順ではなさそうだ。
俺が来る前までは水葉や逢花の席が一番後ろの席だったらしく、二人の席から横に一列席が並んでいるのだが、俺の横の列には誰もいない。
「おや、瑞原君と音羽さんはすでに顔見知りでしたか。なら、ちょうど良いので瑞原君に学園の案内を音羽さん、お願いします」
「……はい」
すごくイヤそうな顔で水葉は返事をした。
そこまで嫌がられるのは大変不本意だが、下手に言い返すと怒らせてしまいそうなので、俺は穏便な方法を選ぶことにした。
「よ、よろしく……」
後ろを向いて――
「べっ~だ!」
両目を瞑り可愛らしく舌を出して反発の意を俺に示す水葉。
そんな俺たちを見て逢花は笑っている。
この辺りは普段と相変わらずだと俺は思った。
ホームルームが終わり、一時限目は担任の担当科目である古文の授業だった。
この時は意外と授業に付いていけそうだと思ったのだが、その後の数学、英語、物理はボロボロで、この学校のレベルと自分の学力の差を知る羽目となる。
これは少し勉強しないといけないかも……。
勉強時間の合間の休憩時間には、転校生の誰しもが通ると言われる質問攻めを受けた。
前に住んでいた場所やら現在の家の場所、趣味や好きなことや嫌いなことなど様々だ。
俺はマジョカルにいた頃のことは伏せ、言える範囲内で次々と答えていった。今朝のこともあるので月之杜神社に暮らしていることも隠していた方が良いと判断し、それも言わないでおいたのだが、なにより水葉が知られると面倒だからと言っていたことも理由の一つである。
「疲れた~……」
なんだかんだであっという間に時間が過ぎ、今は昼の休憩時間。
机に突っ伏したままの俺の鼻腔に食欲をそそる温かな鶏肉の匂いがし、それは目の前に置かれた。
「はい。今日は鶏の唐揚げがメインですよ♪」
ガバッと顔を上げて見ると、そこには最近では馴染みの味となった逢花手作りの弁当が。
学校へ行く時はいつも自分と水葉の分の弁当を作っている逢花は、二人分も三人分も大して手間は変わらないと言い、ありがたいことに俺の分の弁当も用意してくれていたのだ。
「いつも、ありがと。ありがたく頂くよ」
美味しそうな匂い漂う弁当を持って来てくれた逢花に礼を言う。
「喜んでもらえて何よりです。でも、食べるのはちょっと待ってくださいね」
「ん?」
「せっかく今日は天気が良いので庭の方で一緒にいかがですか? 水葉ちゃんももう行ってると思います」
「あれ? それなら水葉も一緒に行けば良かったのに」
「それでしたら行ってみれば、すぐ分かると思いますよ♪」
笑顔で俺の疑問に答える逢花。表情からして、どうやらここでは教えてくれないらしい。
一週間ほど同じ屋根の下で暮らしてみてわかったことだが、普段は真面目な逢花だが時々こうしてお茶目な悪戯をすることがある。それは決して嫌なことではなく、場の雰囲気を和ませる逢花の優しさからくる特技とさえ俺は思っている。
そう言うのならばと俺は逢花の後ろを付いて庭へと向かうことにした。
校舎の窓から見える位置にある、綺麗によく整えられた庭園にまで足を運んだ俺と逢花はすぐに待ち人である水葉を見つけることができた。
ベンチのある道沿いには居ず、道から外れた芝生の上に座敷シートを広げて俺たちを待ってくれていたようで、まだ弁当にも手を付けていないっぽい。
あれ? 水葉以外の人が見える。
あれは確か――――
「もう! お――」
「遅かったじゃない、『ナギ先輩』」
ナギ先輩? ……先輩……センパイ……先輩なんて呼ばれる日が俺にもくるなんて……
今朝会ってばかりの確か……倉敷と言ったっけ? どうやら俺と違いコミュニケーション能力が高いらしい。
そう言えば水葉が新聞部って言ってたし、彼の所属する部活としては理想的なことに会話に長けているのかもしれない。
一方、水葉の方は俺にいつもの憎まれ口を叩こうとしたところを倉敷に先を越されて出鼻を挫かれた形となったためか、不満げな表情を浮かべている。
「お待たせしました」
「そんなに待ったわけじゃないから平気よ」
逢花が言うと答える水葉。
俺も逢花に倣って「お待たせ」と言うと――
「別にあんたのことなんて待ってないんだから」
――らしい。
今更ながら、この差はなんなんだか……。
「ナギ先輩、まぁ気にしない方が良いよ。音羽先輩は男子相手だと程度の差こそあれ誰にでもこんなものだからさ」
「はは……。ところで倉敷も一緒に昼食?」
「ん~……そっちはついでと言うか…………」
言い難そうにしている彼は水葉に救いを求めるようにそちらに顔を向けた。
「何よ、もう忘れちゃったの? 朝言ったじゃない」
朝……朝……朝…………
思案を巡らすが答えが出てこない俺の耳元に、まるで内緒話でもするように顔を近づけて救いの声を上げてくれる逢花。
水葉たちの目の前でこっそり囁かれてもバレバレなんだけど、それは俺の胸の中に留めて置こう。
「登校中に倉敷君と会った時の……」
あ~……街のことに詳しいとかなんとかってやつか。
「まったく呑気なんだから、もう…………」
呆れた顔で俺に言う水葉をいつものように逢花が宥める。
「え~と……先輩方、そろそろ自己紹介させてもらっていいかな?」
「あ、そうでした。倉敷君、お願いします」
逢花から変わらぬ微笑みを向けられた倉敷は少し照れくさそうにしながらも、頭の後ろで両腕を組みながら口を動かし始めた。
「倉敷雅。一年B組。朝、音羽先輩がもう言ったけど新聞部所属だよ」
後輩の言葉がここで途切れたところで、今度は自分の番だと俺も自己紹介を始めることにする。
「俺は……」
「瑞原薙斗」
「え?」
「一七歳、九月生まれの天秤座。血液型はO。一週間ほど前から月之杜神社に居候中。二週間近く前に島外から来た……だよね?」
始めるつもりが始められてしまった。
会ってまだ四時間足らずでどうやって知ったのか、後輩の言ったことは驚いたことに合っていた。
「この観光地でもない、何もない島になんで来たのかが謎なんだけど……まぁ、これは別に興味ないからいいや。それより学園の人気女子二人と同棲する切っ掛けを良かったら教えてもらえる? これ気になる人多いと思うんだよねぇ」
ふむ。
新聞部の者は社交的な人が多いと思い込んでいたが訂正しよう。
確かによくしゃべるが、なかなかに澄ました態度だ。一言で言えば生意気とも言う。とても社交的と呼べる部類の者ではないだろう。俺だけじゃなく、逢花や水葉に対しても同じような感じからして、誰にでもこのスタイルなのだろうと推測する。
だからと言って、それが嫌ということではない。多分、俺自身がマジョカルにいた時、こんな時期の頃があったからかもしれない。
さすがにマジョカルとして活動してたことまでは知らないみたいだな。当たり前だが、素人相手に簡単に知られるようではマジョカルとして大問題である。
俺はそっと胸を撫で下ろした。
「倉敷君、悪いんだけど、その話は後にしてもらえるかしら。出来れば、すぐにでも例の話を聞かせてもらいたいのだけど」
本人はその気はなかったのだろうけど水葉から助け舟が入って、今度は隠すことなく胸を撫で下ろす俺。きっと言葉通りに早く話を進めたかっただけだろうが、とりあえず助かったことに違いないので良しとしよう。
「はいはい。時間も限られてるし仕方ないか。じゃあ、とりあえず食べながら、ご希望の話でもしようか」
倉敷の言葉に俺たちに異論なく、それぞれ弁当を開け出す。……と思ったが、倉敷は弁当ではなくパンを持参してきたようだ。俺たちの弁当を見て、どこか寂しそうな目をしている。俺が倉敷の立場でもそうしていただろう。
改めて自分の恵まれた環境を知ることとなった俺は弁当を用意してくれた逢花に心の中で感謝した。
時間がもったいないので昼食を取りながら早速話を進める。
「まずはこの街、もしくは島で烏が人を襲うといった事件を聞いたことがあるかしら?」
「烏……ねぇ…………」
水葉から訊ねられた倉敷はしばし考え込んだ後、再び口を開いた。
「本当なら、もう少し情報を集めてから音羽先輩のとこに知らせてあげるつもりだったんだけど、その様子だともう何か知ってるみたいだし、まぁいいか」
「どうして水葉に?」
巫女であることを除けば、ただの普通の女子高生である水葉にどうして知らせる必要があるのだろうと思った俺はそのまま疑問を口にした。
「この島に来てばかりだからナギ先輩は知らないだろうけど、月之杜神社っていうのは昔からこの島で起こった超常現象や怪異を影ながら解決してきた歴史を持つ退魔の家系なんだ。ま、島の外から来た者には信じられないような話だろうけどさ」
そう言えば水葉は退魔巫女だとマジョカルでも情報を掴んでいたが、一般人である倉敷が知っているほどに知名度のある神社とは思っていなかったので俺は少し驚いた。
それに気付いた水葉が後輩に代わり説明を始める。
「元々、この島は古くから神や妖怪の類が発見された土地として、島の住民なら割かし知ってることなのよ。若い子はそうではないかもしれないけどね」
「神や妖怪……」
「そうよ。島の住民は怪異や妖怪から守ってもらうために昔から神様に祈りを捧げる習慣があったの。この島に限らず、本土でも東北や四国の方では同じような話が継がれている所がまだあると思うわ。今は神様や妖怪を見ることが無くなっていったから、昔話みたいな存在になっちゃったけど、今でも信じている人は少なからずいるのよ」
どこの国や地方でもそういった伝承は存在し語り継がれている。
ただし、文明が進むにつれ、その存在は人々の意識から薄れ、この島に限らず今時では神様や怪異といった類を否定する者さえいる。信じている者は圧倒的に少数派と言えるだろう。
水葉の話ではこの島はまだマシな方なのかもしれない。
「確かに今のご時世には合ってない話だよなぁ」
「まぁね。……で、先輩、話戻していいかな?」
「ああ、すまない」
倉敷に話を続けてもらうために俺は先を促すことにした。
「まず烏が関わった、ここ最近の事件だけど……僕が知る限り二件かな。どちらも浅間の方で起きたらしい。本土ではそういった話は聞かないから、この島に限った話だろうね」
「……昨夜のことも踏まえると、神名から橋を渡った先の浅間に絞って良さそうですね」
「なんだ、先輩たちも烏に襲われたの?」
「私と水葉ちゃんはその時はいなかったけど、浅間にいる時にナギトさんがね」
逢花の言葉に続いて、俺は昨夜に烏に襲われた時のことを倉敷に説明することにした。
「なるほどね……。ナギ先輩を襲った烏と、すでに起きた二件の烏絡みの事件、どうやら関わりがある可能性が高いと思った方が良いな」
「その二件って、どういった事件だったんだ?」
「確か…………一週間ほど前だったかな。ナギ先輩と同じように公園で突然烏に襲われた老人がいたんだけど、ナギ先輩と違って、その人は食べれるような物を持っていなかったらしいよ」
「食べ物も無しに人を襲うって……それって、烏に何かして怒らせたからとかですか? もしくは近くに巣があったとか?」
「お、その様子だと勉強はしてきたみたいだね」
実は俺たちは昨夜あれから神社に帰った後、ネットを使って烏の生態を知るために調べた。俺に至っては逢花との早朝訓練の後にも。
その結果、別ったことは――――
烏は雑食性で動物の死骸や生ゴミも食べる。そのため俺たちが都内でもよく見かけることがあるのはそういうことだ。田畑の作物を食べることもあるので害鳥とされる場合も少なくなく、人々からの印象はあまり良くない。
物事を学習するだけの知能を持ち、無闇に烏の方から人に近づくことはないが、一度襲ったことのある人はその認識能力の高さから、その人だけを攻撃することがある。巣を作る繁殖期から養育期、親烏は雛を守ろうと凶暴になる。さらに自分の巣よりも高い所にいる人を敵だと認識する傾向がある。
割かし身体が大きいため天敵はあまりいない。凶暴な動物の少ない日本では尚更である。
これらの情報が俺たち三人がパソコン、あるいはスマホでネットから掻き集めた大まかな成果だ。
「被害にあった老人と直接取材もしたし、現場にも行って調べても見たんだけど……どちらでもないんだよねぇ」
「取材って……」
ただの高校生が何をやってるんだかと思い、つい言葉を零してしまった俺を水葉が一睨み。
どうやら話を先に進めたいらしく『黙りなさい』と目で言ってるような無言の圧力を感じた俺はこれ以上は黙ることにした。
「まず、第一の事件の被害者は今年古希になる男性で、公園内を散歩中に突然烏に襲われたとのこと。今まで烏に怨まれるようなことはした覚えもなく、烏に狙われたのは今回が初めてらしい」
「あの……古希って?」
「逢花はまだ日本の歴史に詳しくないから仕方がないけど、七十歳になった人のことよ」
首を傾げる逢花に俺の時とは全然違う態度で水葉が答える。
実は俺も知らなかったので逢花が聞いてくれて助かったとちょっとホッとする。これが俺だったら、こうもすんなり教えてはくれまい。かなり不本意ではあるが。
「そして第二の事件が……これはナギ先輩が昨日立ち会ったっていうのと少し似てるかな。こちらも公園内を散歩中だった七歳の少女とその保護者の女性が襲われたとのこと。どちらも平日の昼過ぎで烏が好むもの……つまり食べ物や烏が収集したがるような光物の類を持ってはいなかったって聞いてる。もちろん怨まれるようなこともしてないし、公園内にもその付近にも烏の巣は見つからなかった」
「それって結局、理由が何もわかってないってことじゃないの」
不満げな顔を隠す様子もなく見せる水葉をいつもどおり逢花が宥めるという最早見慣れたやり取りを始める二人。
唯一いつもと違うのは苦笑いを浮かべているのが今回は俺ではないということだ。
「まぁ、そう言わないでよ、音羽先輩。なんなら学校帰りにでも公園を調べに行ってみたらどう?」
「ぬぅ~……」
まだ言い足りなさそうな水葉だったが、そろそろ倉敷が可哀想に思った俺は助けの手……もとい助けの口を出すことにした。
「どのみち明るい時間に一度公園を調べるつもりだったし、別に良いじゃないか、水葉」
「わかってるわよ!」
ふん、と最後に言いそうな勢いである。
昨夜、逢花と水葉のバイトが終わり家に帰った後、俺たちは烏の生態や、烏関連の似たような事件が最近起きてないかをネットで調べたが、烏のことに少し詳しくなっただけで思うような結果は得られなかった。
そこで昨夜は暗くて見落としていたところがあるかもしれないので、陽の明るい時間にもう一度公園を調べてみようということで昨日はお開きになったわけで、当然その場にいた逢花と水葉は放課後の予定を空けているはずである。
今朝のメールの件も二人には話しておかないと。
さすがに倉敷の前では魔女絡みの話はできないので、ここでは控えるが。
「そういうことならオススメの場所があるよ、先輩方。ちょっと待ってよ……」
スマホの画面を見ながら何かしらを調べている様子の後輩。可愛らしい熊のキャラクターもののストラップが揺れるので、俺はついそれに目がいってしまった。なんだか、この一つ年下の少年とキャラが合ってないなと思う。そんな思考に浸るのも数秒のことで、すぐに目的のものを見せてくれた。
画面に映っていたのはある有名アプリの衛星写真による地図。
「……これは浅間の……街の辺りかしら?」
「当たり。けど、水葉先輩、本命はそこじゃないよ」
画面上を倉敷の指が縦にスライドした。
指と共に画面が止まった場所は、どこかの林……そして木々に囲まれた屋敷だった。
「街の外れに大きな林があるのは知ってる? そこから烏が出入りするところを何度か見かけたことがあるんだよねぇ」
「……そう遠くはないわね。そこに巣でもあるのかしら?」
「さぁ。それは行ってみないとなんとも言えないけど……」
両手をわざとらしく広げて、わからないことをオーバーアクションで示す倉敷。
「ただね……林に入る手前ら辺で犬や猫の死骸があったらしいよ……何か鋭いもので切り裂かれたような感じ……それに死体の眼球が損失してたりさ…………」
「……烏の嘴や爪は猛禽類にも負けないほどの鋭さを持ってますし、肉や皮を切り裂くぐらいは訳ないと思います……」
先ほどまでの真剣な会話の中でも少し温和な空気を残していた場の雰囲気が逢花の言葉で一気に引き締められた。
「僕が思うに……今回の件って、烏の捕食行動と共通点が似てる気がするんだよね」
今、自分の頭の中で思った『もしかしたら』と思い浮かべてしまったことと倉敷の言葉を重ねた時、俺は急激な寒気を感じた。
「昨日俺が見た烏に、倉敷が話した二件……それらは烏にとって大切なものを守ろうとしたものなんかじゃなくて……もしかしたら最初から人を捕食するためのものだった……ってことか?」
「……あくまで、まだ予想の範囲内だけどね。烏が人間を食料として狙ったなんて話、例がないからね……ちなみにこの屋敷に二件のうちの公園で襲われた方の女性が住んでるみたいだよ」
「倉敷君、ここも取材しに行ったの?」
水葉の言葉に否定の意を示す倉敷。
「僕を誰だと思ってるのさ、先輩方。それぐらい調べたらすぐわかるよ」
「…………林を調べるついでに屋敷にも行って話を聞くのが良いかもしれないな」
「そうですね。ちなみに古希の方の住まわれている所はご存知ないですか、倉敷君?」
逢花に聞かれて言うか否か悩んでいる様子の後輩だったが、観念して口を開いた。
「……僕が取材に行った次の日あたりから行方不明になったらしいよ。警察に捜索願届けも家族から出されたってさ」
一瞬、重くなる空気。
もしかしたら俺たちが思ってたよりも深刻なことになっていたのかもしれない。……まだ何もかもが推測の域だが。
パンッ!!
両手の平を叩きつけた音が静寂を良しとしないかのように辺りに響いた。当の本人以外の一同が水葉を見る。
「とにかく、これで放課後の行動が決まったわね」
俺と逢花は頷いた。
「言い出しといてなんだけど、僕は行かないから、あとはよろしく。せっかく情報提供したんだからどうなったかは明日聞かせてよね」
ちょっと釈然とはしないが、もしものことを考えたら危険があるかもしれないし、その方が良いだろう。
逢花と水葉からも異論はなかったので、この話は一旦お終いにして、俺たちは休憩時間の残りを他愛ない会話に費やすことにした。




