ほうよう
二人は神鳥の羽毛に包まれて
柔らかに抱擁を交わした
金粉なるときめき
それは
静かにあたりを舞いながら
死の悲叫までもが
未知の清らかさにたそがれた
産まれるまえから
産声をあげ
背負い込んでいた
たけりくるう追憶の屈辱
幾多もの疎外の旋律
見捨てられた涙の種々
幻影の波と叫ぶ岩礁は
かの楽園の
ワスレナグサのように
アダムに拾われて
新たなる命が
吹き込まれ
よみがりを果たした
その花の花粉は
恋の剣となり
神秘の魔法で鍛えられ
穢れや憤りまでも
その剣に吸い込まれては
愛となり
愛は深まり
やがてその愛は
この世界の神となった
その聖なる剣は
二人と宇宙の千仞へ
ほとばしりは語り
ほとばしりは語り
その中心で涼やかな沐浴を遂げて
手をひろげ
やがて
未だかつて
聴いたことのない
新たな歌や
ハーモニーが
時にはたおやかに
時には溌剌として
歌われた
神秘のうた
神秘のうた
その翼の力よ
未知なるこの心の糸杉
未知なるこの喜びや唇に
いざなわれては
抱きしめる
いざなわれては
抱きしめる
肌が枯れ
声を失い
災いが押し寄せても
あなたを
抱きしめる
私を
抱きしめる
二人は
ふくよかに
抱きしめられる
地球は
いつでも声のなき声をうたい
こだましては飛翔し
分かちがたく包まれては結ばれた
愛のほころびは先祖を養い
愛のしなやかさは子孫を育てる
ミルテは咲いた
ミルテは咲いた
もはや届かないものは
何ひとつない
愛は
全てに勝利を治め
愛は
全てを薫陶感化せしめる
愛は
一切を成就させ
ひとえひとえに
御力を与える
この世界の
終幕には
聖なる玉座に
燦々と熾こされた
とこしえの愛に
陶治される
楽園で二人は
永久にちりゆく花の舞いと
幾層もの鉱脈の符牒
反射する光のパラダイスを
授かっては
愛の
御命をうたい
御命は谷底の暗闇にも
華やかに照らし
もはや影や夜はなく
森の精達のごとく
彩りをもって躍り戯れた
命はますます
生き生きとしていった
命はますます
宝かなる水晶の鉱山となり
その巓にある
花環の愛の泉からは
しとしと
渾々とはじけて
優雅に深潭まで
したたりおち
白く湧きいずる
いさら川
二つの花と
ソラのナミダは
宇宙の星辰も力を惜しみなく貸して
その花の結晶に溶けていき
大いなる
一輪の花として
広がる宇宙よりも
さらに大きく咲いては
方々の増殖よりも
増えては増えていき
絶対なる世界に
その馨りを届けた
二つの命は
いま
一つの
ことばとなった