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ひとつなるうた ー詩集ー  作者: アミュースケール
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ヒヤシンス

悲しみを超えて咲く花よ


私にも力を注いでおくれ


今にも枯れて萎れてしまいそうな


私の心にすっかり根を下ろしておくれ


あなたの霊に満たされた香りに誘われて


私の深い闇淵の淵から静かに確かに


発芽することでしょう


ああ 可憐なヒヤシンス


ああ 甘美なヒヤシンスよ


私はあなたの花粉から才気を養い


私の眠り横たわる神性は


豊饒の天なる雲間から


覗き仰ぎみんとします


今こそ至上の雲間から


一粒の種なる光の柱が地に降りて


愛の金字塔を打ち立てようとします


悲しみは憐れみに変わり


絶望は今こそ希望に口づけをするかのよう


張り裂けんばかりの苦しみは


心の裾野を緩やかに広げて


幾多の山肌に影を煌めかせ


雲も一つない頂へと


燦々と飛翔することでしょう


葉先では聖なる旋律が鳴り響き


風の聖霊も今こそ結びつかんとします


雌しべと雄しべの瞬きに戯れ


真実に寄り添う涙の雫達が


今こそ大地の渇きを潤わします


生命の嘆きは生命への歓喜へと変容します


死への憧れは天上へと繋がり


地での枯れ葉が天では


朽ちぬ彩りどりを魅せる花となり


ヒヤシンスの薫りは


幾多の網と梯子が築かれて


余多の友なる生命の同胞を


導くことでしょう


黄泉の霊達はかの花粉に慰められて


新たなる力を宿し甦らんとします


ああ 可憐なヒヤシンス


どうか私達のすっぽりと空いた


底の底に咲いておくれ


その深潭(しんたん)からはやがて


語り継がれようとする命の物語が


星屑よりも多く実り


悲愴にうちひしがれる心のヴェールを


生き生きと豊かに転起させ


ますます輝く玉のような希望を


虹も消えゆく天空の源から


羽根の翼が宙を舞うが如く


披瀝(ひれき)されていくことでしょう


まことしやかな夜が明けてからは


天なる雫が私の内に浸透し


雑多なる狂乱の想いや殻から脱皮し


すっかりその静けさに


溶けていってしまいました


森羅万象に流れる水晶の川が


私の内の中心に静かに広がりをみせ


縦に横たわるかのように一本の川筋が立ち


シンシンと全身に流れてやがて大河となり


平安の地なのでしょうか…


その中にすっぽりと入ってしまいました


この地からの歌は何をしている時でも


絶え間なく私の全霊に住み続け響かせ


瞳に映る世界の一つ一つに


小鳥が木々にとまるように


光をそれらに注がれるかのようです


ああ ヒヤシンスよ


天に添える花束の祈りから


私はあなたの花粉が舞い降りたようです


私の肉体は天にそのまま運ばれて


天空のクリスタルの城の門は開き


天使達や天のいきもの達が私を出迎え


荘厳な淡い城の中に入っていき


まずは回廊でゆっくりと


その聖なる神気を頂きました


とこしえの風が私を包んでからは


遂には中心部へと誘われました


眼や視界が開かないほどの


強烈な白い輝きや水晶を浴び


あなたの清らかな白道が


私の中に敷かれてしまいました


そうして私は改めて


この地に還ってこれたのです


ああヒヤシンスよ


あなたのお陰様です


ああヒヤシンスよ


理を求める者達に咲く花よ


あなたの香りは香り高く


その者達にいつまでも愛されることでしょう


ああ ヒヤシンス


あなたはいつまでも


私達の心に咲き続けるでしょう


ああ ヒヤシンス


涙を添えて

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