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葉月の片瀬江ノ島
夜の片瀬江ノ島。葉月の波はやや高く、私の足元まで伸びて来る月明かりと、荒々しい、濤聲に、さらわれる。かのストゥルム・ウント・ドラングとは、このようなものかと、想いを走らせる。昔昔というものは、このような月であったかと、青い灯台は語っているよう。それから、ぼんやり月化粧の雲を眺めていると、西方には、1つの流れ星が、まばゆく飾り、車の音は遠くなる。星はまばらであって、雲がこの夜空の庭を泳いでいる。街灯りというものは、波の上で、踊りはするが、今の私には虚しい。しかしながら、この虚しさは、私が、砂漠というものを忘れているからであろう。この街灯りも、聖句のように、また、生き生きとした、自然なのであろう。夜の岸辺に集まる人々は、どれも浮世絵のようであって、そこにある笑いというものは、時代が遅く、やや不気味にも感じたりはするが、やはり、あたたかなものでもあった。それから私は、この一文を、小さな花火のように、唄うことにした。それにしても、湘南の海の心と、語り合うことは、出来たのであろうかと、やや、切り込んでみる。肌からは、汗が滲んでおり、この湘南の精と呼応しているのだろうか。




