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66 ちょっと一安心

前回までの粗筋

お金が無くて大変苦労していたティア達は、特殊なブドウ造りに専念していた。

ティアは、過去の夢をみて、祖父と一緒に密造ワイン造りの記憶と共に大事な人たちの言葉を呼び覚ましたのだった。

★帝歴2501年11月3日 ヒューパ ティア



「ヒッヒッフー、ヒッヒッフー、ヒッヒッフー」

 こんにちは、ティア6歳です、またまたですがラマーズ法ではありません。

 本日もありがたい事に、鬼教官ムンドーじいじ殿のありがたい特訓で走っておりますです、サーイエッサー。

 鬼教官殿は、ホラ占領政策が一時的に落ち着いたのでヒューパに帰って来たのだそうでありますサーイエッサー。


 私の後ろを見ると、ヒューパの街のトラビス以下悪ガキ組12名と、ベック、そしてマイハーレムのチュニカ以下孤児の女の子達も走らせていますが、一番下は3歳児なので一緒には着いてこれません。

 5歳時以下グループを作って並んで歩く訓練からやらせています。


 このメンバーに加えて、ムンドーじいじがホラの街から連れて帰った、男の子達10名がいます。

 この男の子達達もチュニカ達と同じ、異端認定されたため迫害された孤児達です。

 じいじがホラの有力者達の家から救い出した時は、粗末な布を纏っただけの骸骨のように痩せこけていた状態からご飯を食べさせて、ヒューパの街まで連れて帰ってきました。


 わーい、私の子分がまた増えたよー。



 家来と言えば、ゲネス以下悪人面組は相変わらず、ヒューパ領のために領内を飛び回っていましたが、今はお城にいて一緒に訓練に参加しています。

 因みに今私の後ろを一緒に走っていますが、二人一組になって、1人を背中に荷物のように担がせて走らせてます。


 体力のあるゲネスの肩の上には、特別に2人も座わらせて走らせてますよ。大人の癖に、お城の周りのを一周させただけなのに泡吹いて倒れる始末です。軟弱だな。


「ひ、姫様勘弁してくださいよ~」


 私は他人の泣き言は無視するタイプなので、ほっといて、泡吹きながら倒れてる大人達を交代させて交互に走らせています。


「オラオラ、気合入れて走れ、戦場でこいつが倒れたら見捨てるつもりか? 担いで走れ、いつかお前が戦場で助けられるかもしれないんだ、命がけで担いで走れ」


 いやー、海兵隊式ですな。


 皆の体力に合わせたメニューをこなし、魔法特訓も全員でこなしますが、流石に大人組のゲネスの奴は派手な魔法を使いますね。

 初めて見たのですが、土精霊魔法で、素手の周りに土の精霊で金属のような盾を創りだして、相手の攻撃をいなしています。


 確か初めて私と戦った時、剣を投げつけてやったのですが、こんなの見せなかったですね『なんで?』って聞いたら『あの時はマーヤ(MP)魔力が尽きてたからです、それはそうとあの時剣の刃の部分が当たっていたらもしかしたらプラーナ防御壁を一発で抜いて死んでたかも知れなかったですよ、狙って剣の柄を当てたのですか?』と、聞かれたので『そうだ』とだけ答えましたが、ゲネスの奴、全然信じてなかったな。まあ偶然だったしな。



 こんな感じで皆が頑張っている間、私はと言うと、相変わらず魔法が使えません。

 小さな子供の中には、精霊魔法の素質がある子もいて、早くも精霊が周りに近寄ってきて初歩の魔法を使いそうになっていたりするのに、私といえば……


 精霊が以前より大勢集まってくるようにはなりましたが、増えた分多くいたずらをされる身になりました。私いい子なのになぜだ! 私は超カッコいい魔法を使った魔法少女になりたのに、さすらいの魔道士として名を馳せるのを夢見てたのに、ううううう先は長いな。



 格闘特訓になると、小さな子供達は全員、木刀を持たせて素振り100回です。

 数を数えられるようになったベック少年の号令で、全員に数の勉強もかねて一緒に数を数えさせてます。

「1」「1」、「2」「2」……「17」「17」、「18」「18」、「19」「19」……うんうん、ちゃんと数えられてるね……「35」「35」、「38」「38」、「36」「36」…

 ふんふん36ね…ってちょっとまてーい。

「こらー、ベック数間違えてるぞ、さてはお前、30の台を曖昧に覚えたな」

「うわわわわ、ゴメンナサイ姫様」


 皆爆笑してるじゃないか、笑ってるけどお前たちも間違ってたんだぞ、しょうがないけどね。


 ハプニングはあったが、何とかベック自身も必死で覚えようとしているし許そう。



 私は大人組に混ざっての特訓だ。

 この時間になるとムンドーじいじは、席を外してもう居ない。


 体術は得意分野なので、小さな身体を利用して相手の攻撃をくぐり抜け、わき腹を模造刀でガッツリえぐってます。

 まあ、ゲネスの奴は、きちっと剣術を習った経験があるのか、私の攻撃が当るのも五分五分と言ったところでしょうか、非常に気に入りません。

 一度手を抜いて攻撃をしてきたので、土の精霊魔法で防御する暇も与えず、肝臓に綺麗に模造刀を入れて悶絶させてやったところ、仕返しに思いっきり下段の構えから私のわき腹を切り上げてきたので。足の裏でゲネスの模造刀を踏んで、ゲネスのミゾオチから斜め上に心臓へと模造刀を突き込んでやりました。

 

 模造刀だったから良かったけど、真剣なら私の普段使ってるブーツの底だと切られてたかもね。

 チビの私対策で、下段の構えを使われると危ないのが分かったので、これはこれで収穫です。

 大人が使ってくる下段の構え対策が今後の格闘術の課題でしょうか。


 って、あれ? ゲネスが倒れた姿のままポーション飲んでる。心臓止めかけたのかな? メンゴメンゴ。



 途中からは私を除いて、大人組は槍を使った槍術の訓練に入っていた。

 集団で移動しながらのフォーメーションの組み方とか、ゲネスはかなり高度な軍事知識を持っているらしい。

 やっぱりこいつは良い買い物だったな。あの時殺さずにおいて良かった(さっき殺しかけたけど)。



 こうして子供達も含めての合同特訓は朝の2時間程かけて過ぎていく。

 大人の訓練は別メニューで用意してるが、子供達の集中力には2時間が限界だね。



 私たち子供組は、戻って、私直々の勉強教室を開いていた。

 とにかく名前、自分の名前を石版に白亜石(チョーク)で書かせて、書けるようになったら隣の子の名前を書かせるようにした。

 文字の表は部屋の壁に私が大書(豚の毛で大きな習字用筆作ったよ)しておいてあるし、外の壁にも大書しておいた。


 これを繰り返させて、開き始めた時間になると、私特性のそろばん教室が開かれる。

 この子たちは割りとすぐに10進法を覚えたので、ちょっと拍子抜けした。

 あれえ? ベック少年の時はあんなに苦戦したのになあ……



 こんな感じで今は、子供達を養っていますが、アルマ商会さんからの資金提供が大きいですね。

 アルマ商会さんにワイン作りの融資を申し込んで、余分に手に入れた資金を使ってこの子達を養っております。

 業務上横領じゃないよ、従業員の固定費の一部なんだからね。


 おかげで宿泊所には、暖かい暖炉を入れる事にも成功しましたし、相変わらずチュニカを行かせると売ってくれませんが、トラビス達を使って新鮮な野菜を手に入れられるようになったし、秋の終わりには豚を数頭丸々買って、燻製ハムやソーセイジを作り、美味しいお肉を毎日食べられようにもなりました。


 豚はお肉だけを利用したわけじゃなくって、全部を利用させてもらったよ、命をいただくんだからね♥。

 それに高いお金を出して買ったのだから、全部を使いきらないといけない。

 油はラードとして別の用途で使うために取っておくし、豚足や硬い腱、皮のコラーゲンたっぷりのゼラチン質の部位も、しっかり煮込んで、ゼラチンを取って置く。


 豚の解体は、ムンドーじいじのレクチャーの元、ゲネス他大人も含めて全員で、獣の身体の生体を勉強した。

 魔獣相手に戦う時、どこが魔獣の弱点なのか、実際の生き物の豚を解体しながら弱点の内蔵の位置や、骨格等の防御力の高い場所を覚えていきます。


 ブーちゃんは美味しいだけじゃないのよ、全部使いきらなきゃ。



 朝の内の特訓が終わったら、暖炉と繋いだボイラーで炊いたお湯を使ったお風呂に、子供達全員を浸けて石鹸で洗います。

 豚を解体した時に取ったラードと、暖炉で燃やした灰を水に浸けてその水を煮詰めて作った炭酸カリウム(強アルカリ)で、加水分解反応を利用して石鹸を作りました。

 この加水分解反応は、豚から取ったゼラチンと反応させれば膠=接着剤ができる。


 以前アルマ商会さんにインクの事を聞いたら、あれは他の国から輸入していて高い物だと聞いた。

 どうみても墨汁だってので、冬に一度来てもらって買い取ってもらう約束を済ませていた。


 この金で彼らの冬用の可愛い服を買ってやるんだ。

 まだ包帯を外して素顔を出したくないみたいだけど、絶対に可愛いはずだ。私が言うんだから間違いない。


 そのためにも墨作りは成功させたい。墨に使う膠はいわば動物性蛋白質のゼラチンだ、数年で腐る。なので防腐剤が必要になる。

 ムンドーじいじに、物を腐りにくくするハーブは無いかと聞いたら、以前、ジョフ親方と一緒に山奥でワイルドライフをした時に使った、チコリポップの木の皮が良いと言われ、採ってきてもらっていた。これも墨を作る時に使う予定だ。


 墨の黒い成分は煤だ、ちょうど、油ならクレオソート油が売るほどあるので、アルコールランプの要領で火を点け、その上から壺を被せて壺の中に煤を貯める装置を作ってやった。

 こうして集めた煤と膠とチコリポップから抽出したアロマとを、色々な比率で混ぜて、墨の試作品が完成する。


 完成した墨で紙に文字を描いてみると、一番綺麗に書ける墨を採用して、これの材料比で生産を開始した。



 来週来る予定のアルマ商会さんに、全部売れるといいなあ、前のお金でワインボトルを1200本分購入したので、残ったお金で買えたのは、真冬用の大きめのコートを1枚ずつとブーツだけ。女の子達には可愛い服を、男の子達には動きやすくてカッコいい服を買ってあげたかったなあ。

 今度こそ買えたらいいな。


 あ、そうだ、最近いつも手伝いをさせてたトラビスや、悪ガキ組の奴らにも買ってあげなきゃ。

 あいつらの内の半分は、以前ホラからの襲撃で家を追われたり孤児になった子達だ。お給料を少額だけど出してるが、ボーナスをしてあげないとな、いっその事一緒に家で養うかな。


 手持ちにお金があると人間気が大きくなっていけない。




 特にトラビスには今、街の探索を命じてるしなあ。

 あの野菜売ってくれない事件の後、彼に探らせていたら、露天商組合(ギルド)の組合長周りからややこしい情報が聞こえるようになってきてた。

 ややこしそうなので、ムンドーじいじに相談をしたかったけど、この所忙しいのか、特訓が終わったらすぐ姿を消していたし、時々参加せずにどこかでお仕事をしている。




 いずれこの落とし前はつけないといけないし……じいじに相談したら止められるから自分でやーろおっと。



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