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37 首都メデス

前回までの粗筋

ワイン作りも一段落した後、ヒューパの危機に対処するため、ティアは化学物質の実験に成功して準備は進んでいる中、アルマ商会さんがエウレカ公の親書を携えてやってきた。春の社交界へのお誘いだった。

★帝歴2501年3月14日 エウレカ公国内街道 ティア



 こんにちわ、ティア5歳です。

 現在わたくしは、うちのヒューパの小さな馬車に乗ってガタゴトと、放心状態で揺れられております。

 先日、ワイバーンの牙の競売代金をアルマ商会さんから受け取って、ウハウハと調子に乗っておりましたが、お父さんに殆ど巻き上げられました。


 『そんな大金、子供が持つものじゃない、全部出しなさい』と言われて徹底抗戦の構えでいたら、お母さんに『今度の社交界ではヒューパの未来が決まります、そのためにお金がどうしても必要なの、ね解って、テイア』と言われる。

 お母さんは、私を怒らないで、諭すように言った。


 しょうがないので、全額お父さんに渡す。

 そうしてお父さんにお金を渡した後、あることを二人の前で言う。

「お父さん、そのお金はヒューパのためにお渡しします……が、一つちゃんとしておかないといけない事があります」


 お父さんとお母さんがキョトンとしている。


「この前、ワインを売るための作業をしていた時に分かったのですが、ワイン樽が一本消えていました。…心当たりがありますね? お父さん」


 お父さんの目が泳ぐ。


「実はあの後、台所を覗きに行ったら、なんと消えたワイン樽が置いてあるのが見えました……と言うわけで、この金貨2枚はワイン代です。格安ですよ、お父さん」


 私は、お父さんの目の前に置いた、ワイバーンの牙代の金貨の山から、2枚をさっと奪って、確保しておいた。


 だが、それでも金貨30枚、日本円換算で約300万円が私の手の中から消えた。

そりゃショックで放心もする。


 私達の馬車の横には、騎士装備をつけたお父さんが警備をしている。

 盗賊団でも騎士を相手に襲うなんて命知らずはいない、騎士の持つ戦闘力は圧倒的に高い、そしてお父さんは強い。

 その後ろからはアルマ商会さんが、馬車の数を増やして、私の赤ワインボトル6000本を積んで付いてきています。

 中身の入ったワインボトルは、ヒューパに来る時よりも重くなっていて、荷馬車を増やす必要があった。



 川沿いの街道を、切り立った崖や、周りの森が迫る景色を楽しみながら進む。

 今は整備が追いついていないようだけれども、石畳の道には、4本の溝が掘ってあり、上下線2本づつの馬車用レールになっている。

 これは、過去の旧帝国が作り上げた土木技術の高さがよく分かる光景だ。

 同じ間隔の溝が延々と続いて、いまでもその上を馬車が走っていく。



 途中で、ヒューパとホラの境界近くの村に泊り、朝早くに移動を開始する。



 街道を進み、ホラの街の近くを通過するとき、街から門兵が私達一行の隊列の元にやってきた。

 隊列の中にお父さんが居るのを見つけて、ホラ男爵がやってくる。


「これは、これは、ヒューパ殿ではございませんか、ご家族でどちらへ? っと言っても首都メデスの社交界ですな。わたくしも後から行きますが、あちらでご一緒できるのを楽しみにしておりますぞ」


「ははは、それは楽しみですな」

 お互いに目が全く笑ってない。


「さて、ヒューパ殿、それはそうとして、わが街を通過するには税が必要なのは、先日のエウレカ公との話し合いの席上、お互い合意の上で取り決めをした通りでございますな。

 その後ろの荷物の中身は何でございましょうか? ヒューパ特産の魔石武器ならば、税として半数を収めて貰わねばなりませんが」


「魔石武器は、事故(・・)で生産が止まっておりますから無いですな。

これは全部赤ワインですよ」


「ム、それはお気の毒(・・・・)に、それにしても赤ワイン…ですか…あれは税にしても受け取るのはこちらからお断りですな……それにしてもヒューパ殿は物好きですな、そのような不味くて酢のようなワインをまだ販売する気とは、拙者は二度と口にするのもごめんですが」

 二人共おかしな目つきで睨み合っている。

 私はそれより、自分のワインを馬鹿にされたことが引っかかった。


 なな、なんだとおおおおお、私の努力の結晶のワインをゴミ扱いする気か。

 うーー、言い返したい。私のワインは生まれ変わって美味しくなったんだと言い返したい……だが、言い返しちゃうと、折角通行税無くなりそうなのに取られちゃう。ぐぬぬ。


 私が我慢をしていた時、お父さんは無表情のまま。

「そうですか、ならば、このまま失礼いたす。それではまたメデスでおあいしましょう」


 私達はそのままホラの街を通過して行った。

 二人のやり取りを見ていると、私達のヒューパから首都のメデスまで続く街道の途中に、ホラの街があるので、ホラに強制的に税金を取られるようできているようだね。


 ……邪魔。


 ヒューパから首都の間で自動的に、色々な物品に税がかかり、値段が一気に値上がりするようになっていたんだ。

 以前、ジョフ親方が作っていた魔石武器が、首都で桁が一つ増えて売られていた理由がこれか。


 こんな事をされていたらヒューパはずっと貧乏なままだ。

 ううう。



 私達は先を急いでホラの街には泊まらず、途中のエウレカ公直轄地の街に泊り、翌日、首都メデスへと到着した。



★帝歴2501年3月17日 エウレカ公国首都メデス ティア



 初めて見たメデスの街は、大きくて綺麗な街だった。

 私達は門の中から、アルマ商会さんの倉庫へと続く光景を眺めていると、人種は雑多で、人族の比率が一番多いようだけれど、獣人が次に多く、次いでドワーフや巨人族の亜人がいる。よく見てみると耳の尖った人もいて、ムンドーじいじとは肌の色が白く違うので普通のエルフだろうか。

 ムンドーじいじに聞いてみると、あれは人の血が入ったハーフエルフだそうだ。


 へー初エルフ、っているんだねえ。


 以前行ったホラの街もかなり大きな街だったが、あの時はほとんど人影がなくて寂しげだったのに、ここメデスでは人が大勢行き交っていて活気がある。


 私達は街の中に入ると一度アルマ商会さんの倉庫にワインを預け、私達親子の宿へと急ぐ。

 着替えたらアルマ商会さんも連れて、親書を送ってきたエウレカ公への挨拶に向かわないといけないからだ。


 アルマ商会さんとは、ワインについて今後の販売をどうするかの話し合いはしてある。

 現状では、ワイン瓶一本で銀貨10枚、日本円で1万円のそこそこの高級ワインのお値段になってしまうが、その値段で売らないと、ここまでの手間賃が出ない計算だ。

 できるならこの倍、二万円の値付にしたいが、去年売ったワインの悪評がそのまま残っていて、厳しいことになると予想されている。


 私には一応の目算はあった。ワインの味に関して自信がある。

 一度口にさえしてくれれば、その味を気に入ってもらえるはずだ、なぜなら倉庫から樽をこっそりとお父さんが持って帰るほどの味だから。


 今回の旅の目的の一つとして、このワインを貴族との交流の席で広めようと私は考えていた。



 服を着替え、エウレカ公への挨拶のため、城へとやってきた。

 私達親子と、アルマ商会さんが中に通されると、控えの間のような部屋で待機する。

 私は、ちょこんと背の高い椅子に座り、両足をプランプランさせながら王様に呼ばれるのを待っていた。



 ガタンッ!

 しばらくして、突然部屋の扉が開く、私達を呼びに来たのかなと振り返ると、アレ?



「幼女の身でワイバーンを倒したと言うのは貴様かっ!」


 扉を開けたのは、私より少し背の大きい生意気そうな糞ガキ……じゃない、豪華な服装をしたどっかの偉い貴族のご子息がノックもせずに入ってきて、私を指差していた。


ヒューパが貧乏な理由の一つがまた明かされました。


中世ヨーロッパでは国家が全部を管理しているわけではなかったので、各地の領主が勝手に自領を通る物流に課税をして利益を上げていました。

こんな事を街道のあちこちでやってりゃ、流通の妨げ担っていたようです。

それと交通の要所はお金になるので戦争とか起きやすかったようですね。


今回は時間がなかったので校正できてないまま掲載されてますので、明後日ぐらいにちょっと手直しするかもしれません。


次回

明日午前0時頃掲載予定

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