あの雀と同じ空に
ずっと同じ空をみていた。何ともなく空を見続けていると、雀が数羽チュンチュンと可愛らしい鳴き声をあげて鳴いていた。
何をそんなに鳴いているのだろうと、私は空をみた。するとそこには、血塗られた赤い大地があった。私はその光景にギョッとし、思わず目を伏せた。だが、雀の鳴き声が余りにもうるさかったので私は窓を閉めた。それで収まってくれると思ったのだが、窓の向こう側でどんどん、どんどん景色が赤く残酷に染め上がる。
私は恐怖し、萎縮し、耳を抑え目をギュッと閉じ歯をガタガタと振るわせていた。
雀が迫ってくるような気がする。外では何が起こっているのだろう? 私はふと、そう思い恐る恐る窓を開けたのだ。すると、青く澄んでいた空は紅く光り、私の顔を深紅に染めた。それはまるで、鬼のように紅く、恐れ多い惡の華。
気がつくと、私は外にいた。何ともなく町を歩いている。私以外に人々はいないのだろうか? 静かだった。
いつもの町とは違う、紅く染まった異様な町の光景に私は笑った。何故かは分からないが、気が狂うほどに笑い続けた。そうして、笑い疲れると地面に倒れこんだのだ。
肩で息をしながら、真っ紅な空を見上げた。今度はふいに、涙が溢れてきた。この紅い世界に相応しくない、青い涙を流し私は心が痛んだ。
どうして、私は青いのだろう? どうして涙が溢れるのか全く分からない。私はどうかしてしまったのだろうか? 今はもう……そんな単純なことにも全く……分からない。
だから――泣いた。
そしてまた気がつくと、私は窓を閉めていた。ちょっとの隙間もなく窓を閉め、暗いどんよりとした重い部屋の中で私は怒った。何に対して怒っているのかは分かっていないが、とにかく無性に腹が立った。心臓がバクバクいっていて耳障りだった。顔が真っ紅になって、熱かった。熱でも出ているのではないかと思えるほど、真っ紅になりジュウジュウと煙を噴いているようだ。
叫んだ。口が裂けるほどに私は叫びまくった。こんな狭い世界に私を閉じ込めた、お前たちは汚い! 醜い! 糞喰らえだ! ……! もはやその声はどこにも届くことはなく、虚しく谺しただけだった……。
ずっと同じ空をみていた。何ともなく空を見続けていると、一羽の雀が私をみていることに気づいた。首を傾げてみるその姿に私は思わず笑顔になった。心が穏やかになっていくのを感じていた。
私にはもう、恐れるものは何もない。ただ、生きよう。
あの空の彼方へと、私は飛んでいった。
色んな解釈で読んでみて下さい。
適当な答えはありません。
ただ、夢をみているように何かの情景を思い浮かべながら読んでみて下さい。