65、現実4~妄想の目指す幸福~
この作品はフィクションです。
「あのね、先輩。」
「なぁに?後輩。」
「お店を開くって、そんなに簡単に出来るものじゃないんですよ?わかってますか?」
「勿論。まず、店舗を持たなきゃいけないし、雑貨もたくさんそろえなきゃいけない。それくらいわかるわよ。」
「実際にはもっとたくさん課題はあるのですが…、まぁ、とりあえず置いときます。それをそろえるためには、何が必要ですか?」
「お金。」
「正解です。では、お店を開くのには、どれくらいのお金が必要でしょう。」
「一億もあれば開けるんじゃない?」
「…。…では、その一億は、どうやって用意すればいいでしょう。」
「もう用意してある。」
「……………は?」
さすがの後輩くんも、この発言には面食らったようだ。
おそらく彼は、現実の厳しさを教えようとしていたのだろうが、その辺はすでにクリアしちゃっているのである。
「…嘘でしょう?」
「嘘じゃないわよ。ほら。」
通帳を見せる。
「………先輩。」
「何?」
「………何したんですか?」
「私は妄想のためならなんでもするわよ。」
「………。」
「大丈夫よ。法に引っかかるようなことはしてないから。」
「…本当でしょうね?」
「網目を潜り抜けてきただけよ。」
「何したんですか。」
「株と投資と宝くじ。」
「………。」
「本当よ?証拠見る?」
「…いえ、結構です。」
追求を断念した後輩くん。
「とりあえず、これで店は開けるでしょ?あとは、開いた後に考えましょ?」
「いや、考えましょ?、って…?」
「当然、あなたも協力してくれるんでしょ?」
「お断りします。」
「なんでよ。」
「面倒なこと全部押し付けるつもりでしょう?」
「勿論。」
「お断りします。」
「なんでよ。」
「理解力ゼロですか。」
溜息8回目の後輩くん。2ケタに乗せるために、後は何を言って溜息をつかせてやろうか。
…まぁ、なんだかんだで、後輩くんには感謝してる。こんな自分にずっと付き合ってくれているんだから。
だから、後輩くんがいてくれれば、きっと大丈夫。なんでもできる。
そしていつか、恩返しをする。妄想から生み出した現実の幸福を。
それが、妄想の目指す一番幸せな形。
その思いを胸に。
私は、妄想雑貨店をオープンさせるのだった。
そして話は、
「ノミクジラはサイズ不明~妄想編~」
へと続く。
まぁ、それはまた別の話だけど。
「ノミクジラはサイズ不明」終わり
……………あれ?
次回に続く。




