64、現実4~作家を諦めて雑貨屋になろう~
この作品はフィクションです。
「こんな展開、どう?」
「50点。」
「え~~~。辛口だなぁ、後輩くん。」
「これでも、だいぶ甘く採点したつもりですよ?」
しょげる私に、追い打ちのような言葉をぶつけてくる後輩くん。ったく。少しは先輩を労る気持ちにならんのか。こんなにたくさんストーリーを考えたというのに。
「甘く採点して50点て…。どこがダメなのよ?」
「展開が強引すぎ。雑貨屋パートとそれ以外のパートの配分が極端。登場キャラが生かし切れてない。なんのために出てきたのかわからないキャラさえいる。等々です。」
「………ダメ出しがガチ過ぎる。」
「これくらい言わないと、調子に乗りますからね、先輩は。」
先輩を先輩とも思わぬ発言を、しれっと言ってのける後輩くん。
「だいたい、妄想が過ぎるんですよ先輩は。自分の妄想で物語を創りすぎるから、起承転結がめちゃくちゃになるんです。作家を目指すなら、もっと構成をしっかりしないと。」
「決められたストーリーなんてつまらないわよ。妄想は、もっと広大でもっと自由なんだから。」
「趣味としてやっていただく分にはそれでいいですが、作品として世に出すなら、読者を置いてけぼりにするような展開は控えるべきです。」
「え~。めんどいなぁ。」
「それが、表現を仕事にする、ってことですよ。」
「なによ~。キミが表現の何を知ってるっていうのよ。」
「少なくとも、先輩よりは本を読んでる自信はありますよ。」
「私だって、薄い本ならたくさん読んでるわよ?」
「それは読書に入りませんから。」
ふぅ、と、一つ溜息の後輩くん。
「あきらめた方が良いかもしれませんね、作家。」
「え~~~。こんなに書かせといて、そんなにバッサリ切り捨てるの?」
「このまま世に出て、もっと酷い切り捨てられ方するよりマシでしょう?」
「む~~~~~。」
もやもやもやもや。
なんで、こうも理解されないのだろう。
妄想の世界のすばらしさ。
広大。自由。そして無限。
こんなに自由なのに受け入れられないとは。なんとも理不尽。
「…わかった。じゃあ、作家は諦める。」
「わかっていただけて、なによりです。」
「雑貨屋になる。」
「………はい?」
また何か妙なことを言い出したな、とでも言いたげな様子の後輩くん。
「妄想の世界の素晴らしさを伝えるための文才が私にないと言うならば。ならば、違う人の力を借りようじゃない。違う人の作製したものを使って、妄想の素晴らしさを広めようじゃない。」
「それって…」
「店の名前は、妄想雑貨店ノミクジラ、にするから。」
「自分の妄想の店を現実にするつもりですか?」
「当然。」
「具体的なプランは?」
「なし。」
「………。」
この日7度目の溜息が、後輩くんの口から漏れた。
次回に続く。




