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58、現実3~後悔~

この作品はフィクションです。


「………、」


予想はしていたが予想外の言葉が飛び出してきた。


てっきり、自分の置かれている状況について真っ先に聞かれるかと思ったのだが…。




「え~………とぉ?それは…、どういう、こと?」


言葉を考えながら、慎重に口に出していく。端から見れば、かなり不自然だっただろうが、気にしない。


「あ、ごめんなさい…。いきなり聞かれても困りますよね…。………。」


黙ってしまった。


「あ、ううん、いいのいいの。…え~と、つまりそれは、記憶喪失、ってこと?」

「………いえ、多分、違います…。けど…、」


そこまで言って、伏し目がちに沈黙する彼女。


「………、まだ、夢なのかな…。」


一言ぽつり。


「う~ん、私は一応起きてるから、夢ではないと思うわ。確かに、あなたはさっきまで寝てたみたいだけど…。」

「…、そう、ですか…。じゃあ、今が、現実、なんですね…。」


そう呟く彼女は、とても複雑そうな表情を浮かべていた。


無理もない。


今の彼女の中には、複数の人間の記憶が混在している。生きた世界も、生活も、年齢も、何もかもが違う人間の記憶。その全てが真実のようで、嘘のようで。そんなところだろう。



…残念ながら、全て嘘だけど。それは、BSPで彼女に流し込んだ嘘の情報を基に、彼女が生み出した妄想。その情報を流し込んだのは、私たち。




…今更ながら、後ろめたい気持ちが込み上げてきた。





「…あの。」


再び彼女が問いかけてくる。


「なに?」


緊張。けど、それを出さないように、言葉を返す。


「その…、知っていたら、教えてほしいんですけど…、」

「うん。」

「私…、ずっと、眠ってたんですか?」

「そうね…。少なくとも、私が見つけた時には眠っていたわ。」

「そうですか…。」

「………。」

「あの、」

「何?」

「質問攻めにしてしまって、申し訳ないのですが…、お聞きしても、いいでしょうか…?」

「いいわよ?」


次は何を聞かれるのか。私の緊張状態は続いている。


「あの…、ここって、どこなんでしょうか。」


来た。状況確認。


「ここ、か…。正直、正確な場所はわからないわ。わかっているのは、古びた研究所的な場所、ってことくらいかしら。」

「そうですか…、」


納得がいかなかったのか。それとも何か考え事か。再び沈黙する少女。


「…なんか、ごめんね。私も、あんまりわかってなくて。」

「あ、いえ………」





次回に続く。


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