56、現実3~廃棄ラボ~
この作品はフィクションです。
「…。…、…。」
どれくらい走っただろうか。
そんなベタな表現をしたくなるくらい、私は走りに走った。
完全に息が上がっている。キャリアーのおかげでかなり軽くなっているとはいえ、やはり、誰かを背負って走る、というのは大変だ。
私が勤めていた研究所は地下にあった。郊外の森林公園の外れの方にある、今は使われていない感じのレストハウス。その地下が、研究所だったのだ。
地上へと上がって、愕然とした。
レストハウスが、跡形もなく廃墟になっていたからだ。
そして、地下へと向かうための通路が、無理矢理こじ開けられていた。
何が起こったのか。それはわからない。
でも、
とんてもなく危険な事が起こっているということは、容易に想像できた。
命の危険。
私は、すぐさま駆け出した。
「………ふぅ。」
やっと呼吸が落ち着いたところで、私は天を仰いだ。とはいえ、そこにあるのは薄汚れた天井と、消えかけた照明だけなのだが。
ここは廃棄ラボ。かつては研究所として機能していたのたが、今は見る影もない。非常用の電力が、わずかに通電しているだけだ。
場所は、さっきまでいた研究所から、約1キロ、といったところか。…、いや、あくまで個人的な感覚だけど。
正直、長居はしたくない環境だ。部屋、というよりも、倉庫に隠れている、という感じか。
それでも、
命には変えられない。
「………?」
そういえば、主任は大丈夫なのだろうか…。無事に脱出できたのだろうか。
不安がっても仕方がないけど、どうしたって不安が募る。
そういえば、
彼女は、大丈夫なのだろうか。逃げるのに必死で、状態を気にしている暇もなかった。
ふと、そう思い、私は床に下ろしたキャリアーに目を移した。
と、
次回に続く。




