53、現実3~BSP~
この作品はフィクションです。
「ブレインサーチプロジェクト」
略して、BSP。
脳科学の研究はずっと以前から行われていたが、このプロジェクトは、それをさらに突き詰め、とある点に特化させたものだ。
それは、妄想。
脳が生み出す妄想は、人間の欲求が集約されていると言ってもいい。
それは、どのようなメカニズムで発生し、人体にどのような影響を与えるのか。それを、細部まで突き詰めて解明する。
それが、BSP。
…表向きは、だが。
BSPが裏で何をしているのかを知っているのは、ごく限られた人間だけだ。なぜなら、それは、明らかに犯罪行為だから。
脳が生み出す妄想を解明する。
そのためには、生きている脳を調査する必要がある。
そのためには、生きている人間が必要になる。当然だが。
さらに、突き詰めて研究するためには、あらゆる状況下での脳の動きを知る必要がある。それが、命を危険にさらすような状況下であったとしても、だ。
そんなことをやってくれる人間がいるだろうか?
例え、どんな好条件をだされても、首を縦に振る人間はいないのではないか。人生を捨てたような人間なら引き受けるかもしれないが、そんな人間の妄想は、偏りすぎていて使い物にならない。
純粋に、あらゆる可能性を秘めた脳でなければ、BSPの真の目的は達成されないのだ。
ならば、連れてくるしかない。そんな脳を持った人間を。強引にでも。
そして、
本人の、望む望まざるに関わらず連れてこられたのが、滅菌室のベッドの上で眠り続けている少女。
もう何週間になるだろうか。体は延々と眠り続けているが、脳は常に動き続けている。
調査方法はわかりやすい。こちらから彼女の脳へ、様々なシチュエーションのデータを送信し、その反応を解析する、というものだ。
無論、実体験ではないが、脳にダイレクトに伝わる情報は、ほぼ、それと同じ感覚を植え付けられる。
情報を送れば送るほど、本当の自分が何者なのか、わからなくなるほどに。




