52、現実3~研究所~
この作品はフィクションです。
「………。」
「…落ち着いたか?」
「はい。A、B、D+、E+、安定剤。以上投与完了。脳波安定しました。」
「そうか。…まったく、こうまで気を遣わねばならんとはな。こちらが寝る暇もない。」
「仕方ありませんよ。貴重なサンプルなんですから。丁重に扱わないと。」
「…ふん。金を出すだけ出して後はこちら任せ。いいご身分だな、奴らも。」
「駄目ですよ~、貴重な出資者を、奴ら呼ばわりしちゃあ。」
「ふん。」
「あれは、なんだったんだ?」
「多分、専門学校でしょうね。演技とかを教える。」
「なんのためにだ?」
「役者を目指してるからじゃないですか?」
「ふん…。生産性のないものを教える場所だな。」
「その言い方は、ちょっとひどいかも…。」
「事実を述べたまでだ。芝居を見ても腹は膨れんし、金が入るわけでもない。」
「それはそうですが…、でも、憧れる人、多いんですよ?俳優とか女優って。」
「まったく…。現実を見ずに夢ばかり見る奴らの多きことよ。そんなものはただの妄想。なんの益もない。」
「そうかなぁ…。」
「お前も、この私の助手を務めるなら、現実から逃げるなよ。この世の全ては、現実で成り立っているのだからな。」
「わかっています。ですが、」
「なんだ。」
「このプロジェクトは、その妄想とか想像力が鍵になっているんですよね?」
「あぁ。不本意ながらな。」
「一応、割り切っているんですね。」
「仕事だからな。自分の役目は果たす。それだけだ。」
「それにしても、」
「なんだ。」
「もし、自分が、と思ったら、ぞっとします。」
「仕事に私情を挟むな。」
「ホントのことを知ったら、どうなるんでしょうね、あの子。」
「気にするな。」
「それは、仕事ですから、気にしてちゃ仕方ないってのはわかりますが…、それでも、私も同じ女の子ですし…」
「だからなんだ。」
「絶対に嫌だな、って。自分の頭の中覗かれるなんて…」




