50、現実2~夢~
この作品はフィクションです。
「そういや、」
彼女がコンビニに向かって、二人だけになったところで、彼が切り出した。
「大丈夫なのか?最近は。」
「何が?」
「夢。」
「……あ~。前に言ってた、あれ?まだ覚えてたんだ。」
「あのなぁ…、そりゃ心配なんだから覚えてるよ。」
「お~。なんだよなんだよ~。意外と優しいじゃん?」
「主演がいなくなっちまったら、卒業制作がなりたたないだろ?」
「んも~、照れ隠しすんなよ~。」
「してねぇよ。」
「なんなら今度デートしてあげようか?」
「彼氏持ちのやつとデートする趣味はねぇよ。」
「だってさぁ~。最近ぜんっぜん構ってくんないんだもん。会える時間少ないし、いっつも忙しそうだし。」
「向こうも向こうで卒業制作忙しいんだろ?」
「そうかもしんないけどさぁ…。」
ぶーたれる私に呆れ顔の彼。
まぁ、彼の言ってることは間違いじゃない。この時期の三年生は、皆卒業制作やら就職活動やらで忙しいものなのだろう。
それでも、構って欲しいときには構ってほしい女心、というやつなのだ。
「しっかし、この台本も結構ツッコみ所あるよな。実の子供に用心棒やらせる親っているのか?」
「それ以前に、用心棒が少女、ってねぇ。無理ありすぎ?」
「まぁ、これもシナリオライターコースの卒業制作のやつだからな。」
「いろ~んな学科の卒業制作の集合体よね。」
結局、夢の話は、それでうやむやになってしまった。あまり細かく話すつもりもなかったから、これでよかったけど。
最近、変な夢を見る。
それを周囲に漏らしたのが二週間ほど前。
それ以来そのことは喋っていないのだが、彼は律儀にも、それを覚えてくれていたらしい。
……………。
今夜も、また見るのだろうか。
また、同じ夢を。




