45、開店中~説教タイム~
この作品はフィクションです。
妄想と現実。
その両者に関して、理解はしているつもりだ。
決して、相容れないものである、と。
現実は、辛く厳しく閉鎖的で、
妄想は、幸せで自由で無限大。
だから私は、妄想を追い求める。妄想で人生を成り立たせられるように。
「人間、いえ、生物は皆、生まれてきたその時から、現実というものと共に歩むことを義務づけられているんです。そこから目を背けることは出来ません。」
なにやら説教を始めた後輩くん。正直言って、面倒だ。正論なだけに、特に面倒だ。
正論を振りかざす人間というものは、大抵強気なものてある。何故なら、自分が喋っていることは間違いではない、という、自信があるから。
だが、世の中正論だけがまかり通っているわけではないし、正論は必ずしも正解であるというわけではない。
正論を振りかざす人間というものは、その辺の認識が欠如していることが多い。
「聞いてますか?」
「聞いてるわよ。一応。」
「しっかり聞いてください。」
ぴしゃりと言い置いて。
「先輩は、現実から逃げているだけです。どんな言葉で繕ったところで、逃げていることにかわりはありません。」
「逃げることの何が悪いのよ。」
「そういう開き直りがダメなんですよ。どれだけ逃げたって、いつかは現実に向き合わなければならない時がくるんですから。」
「私には来ない。」
「来ます。絶対に。」
……むぅ。
今日の後輩くんは、随分と強気だな。
「現実がどれだけ辛く、残酷だったとしても、現実からは逃げられないんです。多分、わかるときがきます。」
「ねぇ。」
「なんですか?」
「肩こらない?そんな堅苦難しいことばっかり考えて。」
「…お説教が足りないみたいですね。」
結局、
後輩くんの説教は、一時間にも及んだ。……………疲れた。




