2、開店初日〜妄想雑貨店〜
この作品はフィクションです。
妄想雑貨店『ノミクジラ』。
それが、私の店の名前。
いい感じの居抜き物件をちょこっと改装しただけだが、結構いい感じのお店になった。
まぁ、目の前にいる後輩くんに言わせると、品物が乱雑に並んでいるだけで店っぽく見えない。とのことだけど。
わかってないなぁ…。後輩くんには妄想力が足りない。もっと修行してもらいたいものだ。雑貨屋、と、名付けているからといって、必ずしも、一般的なイメージに合わせた雑貨屋である必要はないわけで。それ故の、妄想雑貨屋、なのだから。
人間は、妄想することで幸福を得る。妄想することで活力を得る。つまり、妄想することで生きている。それが、私の持論。
だって、そうじゃない?。この世の中、辛いこと、苦しいこと、腹立たしいこと、さらには、漠然とした不安や一寸先は闇の恐怖。マイナスオーラをばっしばし放ってる事象は山のようにある。
現実を見ろ、って、知ったかぶってる人は言うけどさ。現実直視して、それで正常に生きていけるような強い人間が、果たしてどれだけいるやら。
だからこそ、人は妄想する。妄想することで、バランスを取る。
現実から逃げてるだけだと、知ったかぶってる人は言う。けど、私は言いたい。
逃げることの何が悪い!と。
人は苦しむために生きてんじゃないんだから。苦しみたい性癖の人は、まぁ、好きにしてくれればいいけど。
そんなわけで。
先日私は、この雑貨店をオープンした。妄想大好きな同志、もしくは、実は妄想するのが好きなんだけど、なかなか人前では出来なくて…、という、隠れ妄想好き。さらには、妄想って興味あるけど、どうすればいいの?という、妄想初心者まで。彼らの輝かしき妄想ライフの手助けをするために。何より、私自身が、毎日妄想に浸るために。そのためにここは存在する、と言っても過言ではない。
知ったかぶってる人は、私のことをこう言う。35にもなって彼氏もいない、妄想ばかりしてる負け犬だと。
まったく。全然わかってない。
妄想こそが至高にして究極の境地。そこにしっかり浸れることこそ、最高の幸福なのだ、と。
「………ぶれませんねぇ、先輩。」
「まぁね。人生貫いたもん勝ちよ。」
「…でも、商売になるほどいるんですか?先輩みたいな妄想好きが。…というか、妄想に初心者とか玄人とかあるんですか?」
「はぁ〜…。ほんっとに、なんっにもわかってないわね。世の中には妄想が溢れてんの。そして、溢れてるってことは、それだけ妄想してる人々がいる、ってことなの。現実しか見られない世界には、発展も未来もないわ。」
「そんなに規模の大きな話ですか…?」




